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遥か街を切る 福森翔一(アイスランド)|連載「写真家が選んだ、最高の旅先」第11回

どんな思考回路で「最高の旅先」を選ぶのか。人それぞれだからこそおもしろい。15名が選んだBest Destinationには、熱き想いとたくさんのストーリーが詰まっています。誰かの旅をなぞりながら、「いつか自分の目で」とウィッシュリストに書き加える。そんな楽しみ方をしてみてください。全15回の連載、第11回はアイスランド旅の記録をライフワークとするフォトグラファー、福森翔一さんです。

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目次

プロフィール

福森翔一

フォトグラファー 鹿児島出身、東京都在住。師匠に2年間師事し、独立。東京を拠点とし、商業的な写真を生業としながら、ライフワークとしてアイスランド旅をフィルムにて撮り下ろした写真集を制作。2024年11月、写真集『遥か街を切る』を出版。全国10か所を写真展にて巡回中。
愛用カメラ:PENTAX 645NII、PENTAX 67II、Hasselblad 500C/M

遥か街を切る

マシュマロのような羊、小さな街の小さな日常、自然と暮らし、境界のない風景・・・旅人を旅人で居させてくれる場所

「掲載に選んだ写真たちは、1枚ずつでは本当にアイスランドの風景なのかわからないものが多いかもしれませんが、それらが淡々と並ぶことで不思議とアイスランドらしさが見えてくる気がしています。この写真はアイスランド東部、エイイルススタジルからネスコイプスタズルを繋ぐ国道92号線。広大な草原で羊の親子を見つけました」。

「レイキャビクの空港から車で20分、お気に入りの宿Lighthouse Innの窓から見た風景。部屋の中には僅かに灯りがあり、人の生活や温度も感じられる1枚となりました。レイキャネス半島にあるLighthouse Innは今回の旅で唯一、事前に決めていた1日目の宿で、窓からの眺めは心が救われるような風景でした。1年前の旅でもこの宿に泊まり、薄暗いオレンジの灯りと白と黒の2頭のアイスランドホース、ゆっくり暗くなる水平線を見ました。それから1年後、アイスランドに到着した日に、同じ窓を開けて2頭のアイスランドホースを見つけたとき、胸がぎゅっとなったことをよく覚えています」。

「アイスランド南部Hella(ヘトラ)の川沿いでの1枚。前日にスーパーマーケットで買っておいたプラムやビスケットを朝食にしました」。

壮大な自然はもちろん、旅人という立場で牧歌的な日常にふれることもかけがえのない経験に

「数年かけてアイスランド関連の本などをたくさん集めましたが、あらゆる情報が手に入るこの時代においても、いわゆる観光地の情報が角度違いで得られるのみ。フォトグラファーとして憧れの地に足を踏み入れる以上、誰も知らないアイスランドの日常を残したいという使命感に近いものを感じていました。実際に訪れてみると、何年も頭の中で旅してきた場所でありながら、想像通り、そうでない、と考えることすらないほど穏やかな旅に。頭の中だけでは追いつかないほどの壮大な風景と優しい日常を見つけることができました。特に惹かれたのは羊と教会だったかもしれません。この旅では主要道路を逸れたルートを車で走っていたので、何時間も対向車すらいないという時間を過ごしていたのですが、そんな場所にもマシュマロのような羊たちが当たり前のように暮らしています。その可愛らしい姿にゆっくりと何度もカメラを向けました。また、アイスランド中のほとんどの街に滞在しましたが、人口100人程度の場所にも必ずといっていいほど教会が佇んでいて、その様子はとても目新しく映りました。オーロラ、滝や氷河も素敵ですが、現地の日常に旅人という立場でふれることも何より貴重な経験になると思います。また滞在期間の長短によるものの、できる限り多くの村や街に滞在して写真を撮ることは良い時間になるはずです。まだ2度しか訪れていませんが、作品として撮りたいと思えるのは僕にとってはアイスランドだけです。僕自身なぜここまで惹かれているのかははっきりとわかっていませんが、この先もアイスランドを旅したいと思っています。次の夢は、3度目のアイスランド旅を写真集にまとめて、全国20か所を巡回することです」。

これほどまでに隅から隅まで撮ってみたいと思える土地はアイスランドだけ

「首都レイキャビク滞在1日目に宿から見た湾の風景。白夜の季節の夜10時ごろの夕焼けが部屋のレースのカーテンをオレンジに染めていました」。

「アイスランド北西部Hvammstangiは昨年も訪れた村。なだらかな丘に立つ教会まで歩き、中を覗き込みました」。

「アイスランド南部にあるHofskirkja Church。通り沿いに見えた教会のそばに並んだお墓は可愛らしさすら感じる場所」。

「レイキャビクの中心地で、さっきまで僕自身も座っていた場所にふと目をやると、妖精のような女の子がいました。何十という小さな街を転々とした旅のなかで、1日中歩いていても4、5人の子どもに会えるかどうかという毎日だったので、そこで出会った子どもたちには自然とカメラを向けていた気がします」。

小さな街にただの日常と僕が居るだけ、という特別感は簡単には味わうことのできない時間

「アイスランドに惹かれたのは深夜のラジオがきっかけです。ふと漏れてきたアイスランドの話に耳を傾けていました。風、羊、白夜、吐息、そんな優しい単語たちがパーソナリティーの声色も相まって僕の身体中に染み渡り、ラジオが終わる朝方にはアイスランドに今すぐ向かいたいと思い込みにも近い感覚に。なんとなく、そして漠然と氷の大地が広がる場所というイメージがあるだけだったその国に、羊の呼吸、わずかな人の温度があるということを知り、どうしても撮ってみたいという思いを積み重ねるように溜め込んできました。あれから15年、今回のアイスランド旅は、写真集を制作するためだけの時間でした。旅の期間は2024年5~6月の50日間です。空港の近くでレンタカーをピックアップして、アイスランド沿岸部を西回りでぐるっと一周しました。長く滞在する理由は、どんな旅でも短い滞在が苦手という点が大きな理由になるのかもしれません。止まりたい場所で車をとめて、座りたいときに座って、眠りたいときにゆっくり眠る。撮る行為以外の全てには余白が必要で、そこにストレスを持たないことでより撮ることを大切にできる気がするからです。撮影の機材については、カメラ3台とフィルム250本を準備しましたが、極力肩肘張らず、シンプルに撮りたかったのでそれだけで十分でした。訪れた時期はちょうど白夜になり始めた頃。首都や観光地を除けば、誰にも会うことのない旅を続けられます。人の生活がある小さな街にただの日常と僕が居るだけ、その特別感は簡単に味わうことのできない時間だったと思っています。これほどまでに隅から隅まで撮ってみたいと思える土地はここだけです。写真集制作のためだけにこの土地に足を踏み入れ、風の吹くままに50日間の日々を進めることができたからこそ、とても良い旅となりました」。

写真集『遥か街を切る』情報

アイスランド旅、50日間の全記録

「誰も知らないアイスランドではないけれど、誰も切り取ることのなかった遥か街の日常」。すべてフィルムで撮り下ろした作品、180点を収めた初の写真集。写真展会場やオンラインストア、一部のギャラリー、書店などで販売中。

GENIC vol.77【Best Destination 写真家が選んだ、最高の旅先】

GENIC vol.77

2026年1月号のテーマは「写真家が選んだ、最高の旅先」

どんな旅をしたらいい?
その答えは、As you like. お好きなように、自分らしく。ルートを持たない余白たっぷりの旅でも。行先を詰め込んだ時間割びっしりな旅でも。
だって、旅は表現だから。
さて、旅人でもある写真家たちが選んだ「最高の旅先」はどこでしょうか?何かがあなたの心を撫でたなら、そこは次の目的地かもしれません。
永久保存版、GENICらしい、新しい旅のガイドブックの登場です。

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