コハラさんにとっての日常とは?
コハラさんにとって日常とは、“大切なのに、その大切さに気づくのが難しいもの”。「人は身近な物事ほど後回しにしてしまうもの。今回のコロナに限らず、たとえば自然災害が起こるたびに、“今までの日常って、ありがたいものだったんだ”と気づいてるはずなのに、その気持ちはいつの間にか弱くなっていってしまいます」というコハラさんが日常を撮るのは、“日常を写真という視覚的に見えるモノとして残しておき、大切さを再確認させるため”。「写真はすべて演出だと思っているので、生活のなかのふとした瞬間にシャッターを切るというよりは、日頃ふと思いついたアイデアのなかでシャッターを切るという感覚です。見慣れた光景のなかでも、その日にしかないものは絵になる。そこにある紙屑だって、1時間後には回収されているかもしれないし、風に飛ばされているかもしれないと思うと、今しかないもの。そういう光景はもっとも絵になると考えています」。そんなコハラさんに、その日にしかない大切な光景をPEN E-P7で撮り下ろしていただきました。
フォトグラファー・コハラタケルがOLYMPUS PEN E-P7で切り取った日常
曇り空を活かして、“白”多めの背景の濃淡を表現
「なるべく情報を整理したミニマルな写真にしようと最初は考え、背景は自宅共用部の外装の白と階段・廊下部分のグレーだけにしていましたが、どうも被写体と余白、構図そのもののバランスが悪く、試行錯誤しているうちに左下の植栽に気づきました。これは使えると思い、植栽と対象になる位置にモデルのJURIさんを配置。ただ止まっているだけでは味気ないので、手摺に手をかけて、下を覗こうとする前の動作でシャッターを切っています」。レンズはコハラさんが得意とする焦点距離に近い、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/ 34mm相当(35mm判換算34mm相当)を使用。「曇りの日のやわらかい光はすべての色をしっかり出すことができ、晴れの日だと白飛びしやすい色の濃淡や質感まで見せることができます。この日も曇りで、画面全体にやわらかい光が届いていたので、白が多く入る場所で撮ろうと考えました。僕はシャドウにすごくこだわっていて、シャドウ部分の階調表現が良くないと、そのカメラを好きになれないのですが、この階段部分やモデルのワンピースのシャドウ部分、ぜひ見てください!色の濃淡がきれいに出ていますよね」。
背景にある色と被写体の服をカラーリンク
「もともとモデルが着ている服の色と背景にある色をリンクさせて撮るのが好きで、この写真もその手法を使っています。街中ではあまり見かけることのないマスタード色の服は、被写体へ視線誘導しやすい色。モデルのJURIさんに着用してもらい、それを利用しよう撮影に出かけたところ、通り道で黄色と水色の箱に出会いました。そばに自転車が3台並んでいて、1台分だけ空いているスペースがあったため、そこにモデルを配置。曇りの日は画面に入っている各色をきれいに出すことができるので、緑・黄緑・黄色・水色・茶色など、この写真に入っている色がすべて均等に出せたと思います」。 実は今回の撮影はすべてシャッターボタンを押していないというコハラさん。「液晶画面のピントを合わせたいところにタッチするだけで、ピント合わせと同時にシャッターが切れるタッチAFシャッターを使えば、この写真のように左下の中途半端な位置に被写体がいたとしても、すぐにシャッターを切ることができるので便利。F値は5.6で、開放にはしていないものの、人物撮影の場合はやはり人物にピントを持っていく場合が多いです」。
水たまりの中の小石を利用して幻想的な雰囲気に
「雨上がりで、至るところに水たまりがあったので、なるべく大きな水たまりを探しました。理想としては水たまりの中のアスファルトや小石に色がついているところ。なぜかというと、この写真のようにモデルにピントを合わせた場合、小石などが玉ボケになり、色がついているとその色も写真に反映されて、より幻想的な雰囲気に仕上げることができるからです。残念ながら、今回撮影した水たまりにはそこまで色はついていないのですが、それでも印象的な1枚になったと思います」。こだわったのは構図とアングル。「モデルの顔まわりのシルエットを見せたかったので、背景のマンションに被せるのではなく、空の部分にモデルの顔を配置したのがポイント。ちょっとでも引いて撮ってしまうと、水たまり以外の部分が写ってしまい、幻想的な雰囲気が崩れてしまうため、水たまりスレスレまで近寄って撮影しています」。
定番の”シャボン玉+ストロボ”で印象に残る1枚に
夜、自宅屋上で撮った写真です。「パッと写真を見た瞬間、印象に残るような1枚を撮りたくて、定番ですが”シャボン玉+ストロボ”で撮影。シャボン玉の動きに関してはコントロールできないため、とにかくシャッターをたくさん切って、自分好みの1枚を選んでいます。PCを使ってのRAWデータの現像に関しても、この写真だけ大きく変えており、わざとカラーノイズや粒子を多めに」。空を広く見せるため、レンズはM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8を使用。「なるべくローアングルで足元が見えないようにしたかったのですが、低くしすぎると奥のマンションの窓灯りが見えなくなってしまうため、ウエストレベルよりもちょっと下ぐらいにカメラを構えて撮影しました」。
背景をアンダーにして枯れ始めたあじさいをダークに表現
自宅近所に咲いていたあじさいを撮影。「実はこの写真、トリミングしています。トリミングをした上で、解像度がどれくらいなのかを見てみたくて撮影したものです。枯れ始めたあじさいの質感やディテールが細かく描写されており、大胆に半分ほどのサイズにトリミングしたとしても、全然、問題ないと思いました」。背景をアンダーにして撮るのが、昔から好きだというコハラさん。「この写真も同じ撮り方をしています。現像でもシャドウを落としていますが、そもそも被写体周辺の状況も整っていることが大事。あじさいの背景が肉眼で見てもシャドウが濃かったので、今回のように仕上げることができました」。カラープロファイルプリセットの「COLOR4:クラシックフィルム ソフトトーン」を使用。「1〜4まですべて試しましたが、落ち着いた色合いが好きなのでCOLOR4に。スムーズに自分の理想の色まで持っていけました」。
森の奥のような深いグリーンの色合いにこだわって
植物を背景にして撮ることがよくあるというコハラさん。「植物側が明るいのがあまり好きではなく、いつも奥の情報が見えないぐらい暗くなっている場所を選ぶようにしています。この写真はまさにそれで、ここなら撮れる!と直感しました。色の中で緑色に一番こだわりを持っているのですが、自分が好きな深いエメラルドグリーン寄りの色合いが出せたと思います。あじさいの写真同様、背景をアンダーにして撮りましたが幸い、この日は曇り。被写体側にはやわらかい光が届いていたため、露出の調整も簡単に行うことができました。モデルのJURIちゃんは何度も撮影している子なのですが、この表情はあまり見たことがなかったので、この写真をセレクトしています」。こちらの写真もカラープロファイルコントロールの「COLOR4:クラシックフィルム ソフトトーン」で撮影。
ライティングして白バックの人物写真にトライ
コンパクトなカメラは、ストロボを使いライティングして撮影するイメージがなかったというコハラさん。PEN E-P7を使って、ライティングした写真を見てみたい!という、フォトグラファーらしい欲求にかられて実験的に撮影してみた写真がこちら。
「ストロボ2灯(アンブレラ)と紗幕を使って撮影しているのですが、自分が想像していたよりもきれいに撮れました。髪の毛のディテールもしっかり出ていますし、肌の色と背景の白のバランスがいいですね。それは現像でどうとでもなるでしょ?と思う人もいるかもしれませんが、実は難しくて。肌の色を調整すると、背景の色が微妙。背景の色を調整すると、肌の色が微妙ということがよくあり、僕は苦戦することが多いんです。現像に時間をかければ思い通りになるのかもしれませんが、今回はそんなに時間をかけていないのに、いいバランスで仕上がったので驚いています」。
ライティングして撮影した花の写真は、美しい“茎”が主役
人物と同様、白バックで静物をストロボを使ってライティングして撮影してみた場合、どのように写るかを試してみた1枚。「本当はカラープロファイルコントロール機能を使用して、花の紫色の部分だけ、個別に色の調整をしたほうがよかったのかもしれませんが、この写真の主役は“茎”。花の紫色はきれいに出しつつも、茎の印象が弱くならないように、色のトーンや茎の見え方を調整しています。茎の長さをハサミでカットし、微調整の繰り返し。花瓶の形状上、そのままの状態で見せることができない茎の見え方を、試行錯誤しながら撮影しました。花である以上、どうしても花の部分の印象は強くなってしまいますが、個人的には茎も負けないぐらい美しい見せ方ができたと思っています」。レンズはM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8を使用。「なんと言ってもディテールと描写力が抜群!白バックでもこれだけきれいに撮れます。こんなにコンパクトかつ軽量ボディーにもかかわらず、驚くほどきれいに撮れるレンズです」。
コハラタケルさんが「OLYMPUS PEN E-P7」を使ってみて感じたこと
「これまでのPENシリーズは、女性がお出かけやお散歩するときに持っていくカメラという印象でしたが、今回初めて使ってみて、まず驚いたのは画質、特にディテールの再現の細やかさ。大胆に半分ほどにトリミングしても、全然、見劣りしませんでした。次に、肌色と白色のバランスですね。白バックで試したときも、ロケも、背景色と肌色のバランスがとてもよかったです。そして、シャドウの深さ。そこは現像で細かく調整することもできますが、カメラ自体の階調表現が豊かなのは、現像の時間短縮にもつながり、フォトグラファーとしてはとても助かります」とコハラさん。「軽さはもちろん、クラシカルなデザインもいいですね。僕はグリップが浅いほうが好きなので、そこもお気に入りです。ボディー内の手ぶれ補正もうれしい機能ですし、ピント合わせが速いのも、スナップ感覚で撮ることが多い僕としてはありがたかったです」。
そんなコハラさんがもっとも気に入った機能はタッチAFシャッター。「僕が普段使っているカメラはスティックでピント位置を調整して、シャッターボタンでシャッターを切りますが、PEN E-P7だと、右下にピントを合わせたい!というときでも一瞬でピントを合わせシャッターを切れるのが便利。僕は日の丸構図だけでなく、被写体を画面の端のほうに配置して撮ることも少なくないので、ピント位置をどんどん変えながら撮影できることは、自分と相性が良い点だと思いました」。
コハラタケル
フォトグラファー 1984年生まれ、長崎県出身。カメラ歴5年。大学卒業後、建築業の職人を経てフリーのライターに。ライター時代に写真の勉強を始め、その後フォトグラファーに転身。企業案件の撮影ほか、セミナー講師や月額制noteサークル(http://note.com/takerukohara/circle)を運営。ハッシュタグ#なんでもないただの道が好き の発案者。
次はフォトグラファー・オリンさんの登場です。
コハラタケルさんがPEN E-P7をバトンタッチするのは、フォトグラファーのオリンさん。コハラさんに印象をお聞きすると…「フォトグラファー8名で行った香川の旅で初めてご一緒しました。明るく元気でフレンドリー、その場の雰囲気を温かくしてくれる子です。香川の旅のあと、一度だけ一緒に撮影しに行ったことがあるのですが、そのときもオリンちゃんはずっとオリンちゃんのまま。この子は普段からこのままの姿なんだろうなと他人に思わせることができるのは、もはや才能だと思っています。僕は結構、顔に出るタイプなので(笑)、尊敬しています!」とのこと。次回、そのオリンさんがPEN E-P7で切り取った日常写真をお届けします!
オリン
フリーランスカメラマン 看護学生時代に息抜きとしていたカメラが生活の一部になり、趣味以上の経験をしてみたく転身。思い出撮影、企業のPR撮影、アーティストの撮影をしながら"出張フリーランスカメラマン”として活動中。
リレーに使用したカメラ「OLYMPUS PEN E-P7」商品情報
「OLYMPUS PEN E-P7 ボディー」
オープン価格
カラー:シルバー/ホワイト
「OLYMPUS PEN E-P7 14-42mm EZ レンズキット」
オープン価格
キット内容:
ボディー(シルバー/ホワイト)
M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ
※装着されるレンズはボディー色ホワイトの場合はシルバー、ボディー色シルバーの場合はブラックとなります。