吉岡栄一
フォトグラファー・デザイナー。1986年生まれ、石川県出身。金沢や能登のお祭りを中心に撮影する他、国内外でストリートスナップを撮影している。27歳で石川県輪島市に移住し、広告デザイン事務所を独立開業。地域に密着した広告づくりを行っている。
愛用カメラ:Sony α7 III/α6500
愛用レンズ:Sony FE 50mm F1.4 ZA/FE 85mm F1.4 GM/FE 24-70mm F2.8 GM
石川・金沢
写真はその人の視点。僕にとっての「特別」を探して伝えたい
石川県加賀市の菅生石部神社で毎年2月に行われている竹割まつりで、若衆が竹を地面に叩きつける瞬間。「竹の大きさと迫力、若衆の勇ましさ。神事の雰囲気を表現したかったので、被写体を中央にして広角レンズで全体がわかるように撮影しました」。
冬の石川県に息づく伝統や文化を知ってもらいたい
石川県内で昨冬に撮影した、雪の日のスナップと冬に開催される神事(祭り)の写真たち。吉岡さんは冬の石川県に息づく、伝統や文化を知って欲しいと話します。
「テーマを絞って継続的に撮影することが好きで、コロナ禍前は能登半島のお祭りをメインで撮影していました。残念ながらコロナの影響で大半のお祭りが中止になってしまったので、昨年からは“金沢の日常”をメインテーマの一つとして撮影しています。金沢をテーマに撮り始めてからは、雪が降った日の“ひがし茶屋街”や“主計町茶屋街(かずえまちちゃやがい)”が好きなスポットになりました」。
「奥能登地域で12月と2月に行われる、五穀豊穣を祈願し田の神様に感謝する、厳かな“あえのこと神事”のワンシーン。背景の白トビをなるべく抑えるためにアンダー気味に撮影し、二分割構図で対比にしました」。
「金沢で雪が降った日、和装した観光客が傘を開く瞬間を切り取りました。シンプルに和傘を中央にし、背景はひがし茶屋街の雰囲気(町屋空間)がわかるようにしました。和傘の赤色が冬の金沢に彩りを与え、とても美しく感じました」。
「金沢の主計町茶屋街沿いを流れる浅野川の堤防の雪上を歩くカモメ。水平に三分割構図を意識しました。新雪の上をカモメが歩いている様子が可愛らしかったので、思わずシャッターを切りました」。
金沢に雪が降ると、写真を撮りながら非日常体験をしているような、そんな感覚になる
「雪降る金沢のひがし茶屋街を、和装した観光客が歩く姿。前景に通行人を入れることで、ライブ感を表現しました。伝える写真には、撮影者の視点や意図がわかることが大事だと思っています」。
「日本海側の寒さは厳しく、たくさん雪が積もることもあります。雪かきをしているときはとても大変な思いをしますが、写真の観点で見ると冬がもっとも四季をハッキリと写し出すことができるので、毎年楽しみなんです。金沢は新しいものと古いものが共存した魅力的な街。茶屋街は昔ながらの雰囲気が残っていて、海外の方も喜ぶような日本らしさを感じられる場所です。雪が降ると、写真を撮りながら非日常体験をしているような感覚になることも。金沢の冬の写真を通して、“金沢の魅力”と“古き良き日本の雪景色の美しさ”を感じていただきたいです」。
「主計町茶屋街で見つけた氷柱。町屋に連なる氷柱が、金沢の冬の厳しさと美しさを際立たせていました。街中で写真を撮るときは、“新しい発見”をいつも探しています」。
「和装姿の女性たちを中央にし、茶屋街の街並みが左右対称となるようにしました。元々ある明暗差を大切にしながら、階調を整えていくようなレタッチを心掛けています」。
GENIC VOL.61 【フォトグラファーが伝える地元の冬景色】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC VOL.61
特集は「伝わる写真」。
私たちは写真を見て、何かを感じたり受け取ったりします。撮り手が伝えたいと思ったことだけでなく、時には、撮り手が意図していないことに感情が揺さぶられることも。それは、撮る側と見る側の感性が交じり合って起きる化学反応。写真を通して行われる、静かなコミュニケーションです。