季節を告げる甘い香り
「朝の優しい光の中で窓を開けて仕事をしていたら、風に乗って甘い香りが。庭に出たら隣家の金木犀。秋が来たのだと思いました。この瞬間を残したいと急いでカメラにフィルムを詰め、よく観察して光が当たる角度で撮影。秋の光を受ける葉の緑と花の黄色を、また撮影してる間もふわふわと香っていた甘い金木犀を想像していただけたら」。
佐藤啓
フォトグラファー 神奈川県在住。
愛用カメラ:PENTAX 67II
愛用レンズ:SMC PENTAX67 105mmF2.4
特別な湯気
「実家での朝、湯気がとても綺麗に見える瞬間に遭遇しました。湯気が立ち昇って消えていく景色はとても美しくて、ずっとこの光景を眺めていたいという気持ちでシャッターを切りました。いつも今のこの瞬間を切り取りたい!と思って撮っています。母や親しい人が淹れてくれる飲み物は特別な感じがして、ついつい撮ってしまう被写体です」。
祐子
設備設計(建築)東京都在住。
愛用カメラ:ASAHI PENTAX-SP
愛用レンズ:Super-Takumar 55mm F1.8
伝えたい幸せな時間
「土鍋の蓋を開けた瞬間、立ち昇る湯気と炊き立てのご飯の香りに、シャッターを切らずにはいられませんでした。ご飯をほぐす手を止めてほしくなかったので、ピントをあまり意識せず、その場に漂っている空気感が写ればと。目の前の景色から伝わってくることがあると思っています。その時に自分が感じていたことが写っていたら嬉しいです」。
栗田脩
写真家 長野県在住。
愛用カメラ:PENTAX67
愛用レンズ:SMC PENTAX67 90mm f2.8
GENIC vol.61 【五感を刺激する写真たち】
GENIC vol.61
テーマは「伝わる写真」。
私たちは写真を見て、何かを感じたり受け取ったりします。撮り手が伝えたいと思ったことだけでなく、時には、撮り手が意図していないことに感情が揺さぶられることも。それは、撮る側と見る側の感性が交じり合って起きる化学反応。写真を通して行われる、静かなコミュニケーションです。