Ken Tanahashi
フォトグラファー、スナップ中心の撮影活動のほか、写真系キュレーションアカウントの立ち上げや、写真系コミュニティComodoの運営など幅広く活躍。
愛用カメラ:FUJIFILM X-T3、OLYMPUS OM-D E-M1
愛用レンズ:FUJIFILM XF23mmF2 R WR、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
https://note.com/kentanahashi
日常の断片
日常の中の非日常的な瞬間を切り取ることは、新しい視点につながる
「空に掛かる虹はよく見かけますが、日常の中に溶け込むような小さな虹は初めて見ました。天候、時間帯、場所の条件が揃わないとこういった写真は撮れないので気に入っています」。
「日常空間、特に住宅街をブラブラ歩きながら撮影することが多いです。路上に停められた珍しい車、家の前の植木、カバーが掛けられた自転車...路上そのものの全体像を風景として撮るというよりは、路上でユニークに感じられる何かを撮ります。街や人は日々変化していて、偶然出会う一瞬一瞬が魅力的。それらは人々の生活の断片であるし、普段は見過ごされがちな景色を見つけることで、新しい視点を提示してくれます。日常の中の非日常的な瞬間を切り取ると、見慣れた景色が新たなシーンとして浮かび上がるんです」。
「街中にあった鏡のオブジェに空が映り、物体と空の境界線が曖昧になる不思議な一枚になりました」。
「圧縮効果を使い遠近感を感じさせない工夫をして、生垣の上に家が乗っているような構図で撮影」。
ストリートフォトグラフィーとは、日常風景の中に人の存在や痕跡が感じられる写真
「たまたま通りかかった自転車の人。背負っていたリュックから猫がこちらを見ていたので、すかさずシャッターを切った一枚」。
ご自身らしいストリートフォトグラフィーとは、どんなものでしょうか?
「非日常的でクスッと笑えるものや、逆に日常的で人の生活を感じられるような写真が、自分らしい路上写真だと思っています。シャッターチャンスを求めてあえて有名なフォトスポットなどに行くことはほとんどありませんが、出かける際は常にカメラを持ち歩いています。カメラを持っている以上はいつも撮ることを意識し、周りをよく観察して、偶然の中で遭遇する瞬間を捉えることを大切にしています」。
「電話ボックスに光が差し込んでいる様子。周辺の人などが映り込むことが、不思議な世界観の演出になっています」。
切り取り方や構図よりも“何を撮るか”、“何に気づけるか”が大切
「田舎道に捨てられていた、お風呂の鏡。周辺の住宅街が映り込んでいて、一見鏡とは思えないような状況を撮影。住宅街はそれぞれの人の生活が垣間見えるのが面白くて、好きな撮影シーンのひとつ」。
「斜めに落ちている影と、光が当たっている壁の繰り返しによって遠近感が曖昧になり、一見どうなっているのかわからない光景」。
自分にとって写真は、記憶を記録として残してくれるもの
「撮影で喜びを感じるのは、目で見た現実よりも、写真におさめた際に自分のイメージを超えた一枚が撮れたとき。もちろん切り取り方や構図も大事ですが、それよりも“何を撮るか”“何に気づけるか”を意識しています。日常風景の中で人の存在や痕跡が感じられる写真が、ストリートフォトグラフィーだと思っています。そして自分にとって写真とは、生活に欠かせないものであり、記憶を記録として残してくれるものです」。
「駅前のエスカレーターを上る人物が、シルエットになった一瞬。照らされた奥の建物と、手前の影との対比も面白いと思いました」。
「ぼこぼこになっているカーブミラーを撮影。ミラーに映っている歪んだ光景が別の世界かのように感じられ、非現実性を表現した一枚」。
GENIC vol.63 【すばらしきドラマな路上】
Edit:Satoko Takeda
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。