KYON.J
トラベルフォトグラファー 中国広東省生まれ。映画「LIFE!」に心打たれ、インドア派からアウトドア派に。2015年に北海道の雪原で出会った美しさに魅了され、その感動を伝えたいと風景写真を撮り始める。
愛用カメラ:Sony α7RⅣ、α7RⅢ
愛用レンズ:FE 12-24mm F4 G、FE 24-70mm F2.8 GM II、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
未知の世界に踏み込む
「写真家を目指すきっかけになったのは、2015年の初めての写真旅。北海道で出会った輝く雪の景色に感動し、見た目のカッコ良さに惹かれて当時買ったばかりのSony α 7で、いろいろ撮影。ところが隣にいた写真家たちがチラ見せしてくれた写真を見ると、同じ場所だとは思えないくらい、彼らの作品は美しかった。自分のカメラに申し訳ないという気持ちが、すべてのきっかけだったかもしれない」。
その後は世界各地を旅しながら、絶景を切り取るトラベルフォトグラファーとして活躍。
「アイスランドにて。夕空が焼けて風も止み、予想通りのきれいなリフレクションが現れた。一時間弱待機し、最終的にシャッターを切ったのはこの一枚。たまたま近づいてきた旅人が入ることで、スケール感が一瞬で伝わるシーンに」。
自分にとって写真とは人生の冒険そのもの
「本当に行きたいと思った場所、見てみたいと思った景色、心からワオ〜!と感動した瞬間しか撮らなくなった今の自分が大切にしているのは、未知の世界に踏み込んだ時の気持ち。一枚の作品に込めたその時の想いを、老後まで語れるようになりたい。地球はこんなにも美しい。行きたくても行けない人のために、代わりにその場に行って景色を後世に届けたい。これからも好きな写真を好きなように、マイペースで撮っていくつもり。旅がしたい、今のシーンを切り取りたい、など、“したい”と思った時点こそが、行動するベストタイミング。可能な限り、撮影に関わる“したい”を優先すれば、本当に撮りたいものは必ず見つかる。まだまだ地球上で未攻略の地図が無数にあるので、一歩ずつ踏み込んでいきたいと思っている。自分にとって写真とは、人生の冒険そのもの」。
Rule 01:大量には撮らない
「撮影旅はもちろん作品創りが主要目的だが、結局、いい作品はその一瞬に限るもの。最近は予備のSDカードさえ持って行かなくなった。もちろんいい作品が撮れたらバックアップを忘れないが、一箇所で数十枚、一週間の旅でも200枚くらいがMAXといった感じ。本当にいいと思っている瞬間だけにしか、カメラを出さない勇気。意外とそれが、自分のスタイルに合っているかも」。
Rule 02:同じ場所で複数の作品を生み出す
「インドネシアで、同じ日の同じ場所から撮った三枚の作品。上から順に、太陽がちょうど地平線から昇り始めたタイミング、少し昇って山の稜線から光が注ぎ始めたタイミング、かなり昇り切って村と火山の境界に大きなシャワーを落としたタイミング。目の前の景色を360度で観察すれば、メインの被写体(今回のケースは火山)以外にも、きっと予想外の光景が広がっている」。
「心構えの問題かと思うが、三脚を使わなくなってから、同じ撮影地でもまったく違う構図やアングルから印象が異なる複数の作品を撮れるようになった。ぐるっと現地を一周回って、高台に登ってみたり、しゃがんだり、メインの被写体からいったん目を離したり...。予想外の景色は、実はいつも身近にあった」。
Rule 03:三脚はなるべく使わない
「登山道で、ふと気がついた景色。山全体の視野が欲しかったので、道の端にある大きな石に登り、体のバランスを保ちながら脇をぎゅっと締めて手持ちで撮影。松の先端についている霧氷まではっきりと写っている。中国の黄山」。
「星空やオーロラの写真以外は、基本的に三脚は使っていない。もちろん持って行くのだが、三脚を使うとつい視野が固定され、同じ場所の同じアングルからしか世界を見なくなりがちだから、結局使わない。今のカメラは手振れ補正が進化しているから、自分の腕力を信じれば、ぜんぜんいける!」。
Rule 04:時間が許す限り、最後まで粘る
「中国の新疆ウイグルで。雷がど真ん中に落ちてくるまで、2時間半粘って撮影。正直に言うと、小雨が降っていた状況で金属に触るのは、やや怖かった...」。
「本業はサラリーマンなので有給は有効的に使いたい、と常に念頭においてはいるが、同じ場所での撮影をMAX9日間粘ったこともある。頭に浮かんだ“こういう光景にならないかな?”というものを、どうしても待ちたかったから。あの時もうちょっと粘っていればよかったとか、後悔はしたくないタイプ。旅は一期一会だからこそ、旅の地にいるその時こそ、できることは全部やってみたいと思っている」。
地球はこんなにも美しい。未攻略の地図に一つずつ踏み込んでいきたい
Rule 05:撮影後、一度時間をおいてから現像する
「期待していた景色が現れていい作品が撮れても、その興奮に飲み込まれないように、しばらくして気持ちが落ち着いてから現像する。9日間粘ってやっと見れた景色なら、なおさら。霧がものすごいスピードで風に吹かれつつ上がっていき、棚田が見えたり見えなかったり。棚田と木の露出具合がちょうどいいバランスだと思ったあたりから、連写した。中国、雲南省にて」。
「基本的に1〜2ヶ月おいてから、作品を現像するようにしている(冷静期)。帰ってきた直後は、あれも良かったこれも良かったという盛り上がりムードの中、普通の写真でも綺麗に見えちゃうマジックがかかっている気がするので(笑)。本当に感動した瞬間なら、何ヶ月たってもその時の感動と体験は覚えているはず。逆に1ヶ月たったらこれ何だったっけ?という作品は、そんなに感動しなかったということで、現像もしない」。
GENIC vol.64【写真家人生にルールあり!5Rules】
edit:Satoko Takeda
GENIC vol.64
GENIC10月号のテーマは「写真と人生」。
誰かの人生を知ると、自分の人生のヒントになる。憧れの写真家たちのヒストリーや表現に触れることは、写真との新たな向き合い方を見つけることにもつながります。たくさんの勇気とドラマが詰まった「写真と歩む、それぞれの人生」。すべての人が自分らしく生きられますように。Live your Life.