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断片と光 DOWN ON THE STREET USA 中藤毅彦

40年以上にわたり、国内はもちろん世界中の都市や人と真摯に向き合い続けてきた写真家の中藤毅彦が初登場。高校時代よりパンクロックのライブなどを撮影、次第にライブハウスの周辺も撮るようになり、自然とストリートへ。「撮りたいのは、自分なりの美意識が反映された、力強くインパクトのある写真」。命の宿るストリートフォトグラフィーをご覧ください。

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プロフィール

中藤毅彦

写真家 1970年生まれ、東京都出身。早稲田大学第一文学部中退。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。作家活動と共に東京・四谷三丁目にてギャラリー・ニエプスを運営。都市のスナップショットを中心に作品を発表し続けている。国内外にて個展、グループ展多数開催。第29回東川賞特別作家賞受賞。第24回林忠彦賞受賞。
愛用カメラ:OM SYSTEM OM-3、RICOH GR IV、Leica M11
愛用レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO、M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO、Summicron M 35mm F2.0

断片と光 DOWN ON THE STREET USA

撮りたいのは、自分なりの美意識が反映された、力強くインパクトのある写真

「2017年、ニューヨークの地下鉄の車両内で、サングラスが絵になる格好いい女性が乗っていた。出入口の前に立つ自然な姿が良かったので、あえて声をかけずにノーファインダーで撮影した」。

「2024年、シカゴ。この日は、夜のプールバーでたむろする人々を撮影していた。切り上げて店を出ると、時代を超越したすごい存在感のおじさんがタバコを吸っていた。迷わず声をかけ、店の前でフォトセッションとなった」。

「2024年、ダウンタウンの中心街・ループを囲むように走るシカゴ名物の高架鉄道・エルは魅力的な被写体だ。列車とビルの連なりが効果的に重なる光景をさがし、高架沿いを延々と歩いてついに見つけたポイント」。

偶然出会った人々や予期せぬ光景に出会いがしらに反応してシャッターを切る

40年以上もの年月、国内はもちろん、世界の都市で街や人と真摯に向き合い続けてきた写真家の中藤毅彦さん。ハイコントラストのモノクロームと粒状感のある作品はどれもが印象的。中藤さんと写真の歴史は、小学生時代までさかのぼる。父のカメラを借りて、遠足などでよく撮影をしていた。自分のカメラを持ったのは、高校の入学祝いにMINOLTA CLEを買ってもらったときだった。中藤さんのストリートフォトグラフィー撮影へとつながる、ひとつの大きなきっかけでもある。
「高校時代、MINOLTA CLEを手にライブハウスに通い、アンダーグラウンドなパンクロックのライブやそこに集まる観客を撮影していました。次第に街での彼らの姿やライブハウスの周辺などを撮影するようになったことで、ストリートフォトグラフィーの世界へと足を踏み入れていきました。つまり自分にとって、ごく自然な被写体が『都市』であったということ。生まれ育った都市・東京からはじまって、次第に世界の都市に興味が広がり、写真を撮り続けていたら、結果的にそれがストリートフォトグラフィーだったという感覚です。ストリートフォトグラフィーでよく撮る被写体は、建物や街並み、人々、そして街の断片と光です。路上を歩き、偶然出会った人々や予期せぬ光景を、出会いがしらに反応してシャッターを切ることが多いです。シャッターチャンスを得るためには、ひたすら歩くしかありません。光や構図といった要素も響き合った、写真でしか表現できない美が撮れたと感じるとき、大きな喜びを感じます」。

「2025年、サンフランシスコに着いた初日、街に出ると抜群に粋でファッショナブルな若い黒人男性が歩いていた。呼び止めるとき、強面な風貌でにらまれて緊張したが、話すと快くポーズを取ってカメラに対峙してくれた」。

「2024年、シカゴの公園に設置されたオブジェ。巨大なモニターになっていて、映し出される顔が次々と変わるアート作品である。1人の少女が、この顔と向かい合ってにらめっこをしていた。その様子が愛らしく、全体を引きの構図で撮影した」。

「2025年、サンフランシスコ。1960年代のヒッピームーブメントの中心地だったヘイト・アシュベリーを訪れると、ジャニス・ジョプリンを思わせる魅力的な女の子が路上で歌っていた。歌い終えた後、投げ銭して声をかけ、しばしポートレートを撮影させてもらった」。

大切にしているのは、被写体となる人物への礼儀を欠かさないこと

路上撮影にさまざまな制約が出てきたといわれる昨今、長くストリートフォトグラフィーを撮り続けてきた中藤さんに、撮影していて感じることがあるかどうかを聞いてみた。
「実感として、撮りにくくなったということは特にない気がしています。昔から路上で人物を簡単に撮れたわけではないし、今が当時より難しくなったわけでもありません。ただ、昨今の写真界では、撮影する側が肖像権の問題を過剰に意識し過ぎている気がします。ことさらに自粛してしまっては、ストリートフォトグラフィーが衰退するばかりだと思います。写真は自分にとって、自己表現の手段であり生業でもあります。これからもストリートフォトグラフィーを撮り続け、今後は海外での写真展やフォトフェスティバルでの作品発表に力を入れていきたいと考えています」。

GENIC vol.78【断片と光 DOWN ON THE STREET USA】
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.78

2026年4月号のテーマは「Street Photography 名もなき瞬間」
街にある無数の光景の中で、理由もなく心をつかまれる一瞬がある。
カメラを向けると、世界が少しだけ深く息をする気がして、そっとその瞬間をすくいあげる。
誰かの日常、街の呼吸。
そこには、題名のない小さな物語が潜んでいる。
私たちはまた今日も、名もなき瞬間に出会いに、街に出る。
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