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moving days 平野愛

日常と非日常の“間”に着目する、フォトグラファーの平野愛。どこへではなく、何から引っ越すのか。引っ越しにまつわる時間と情景を撮影するプロジェクト「moving days」について、伺いました。

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目次

プロフィール

平野愛

フォトグラファー 1978年生まれ、京都府出身。大学在学中の2000年より、ダンス・パフォーミングアーツジャンルの写真家としてキャリアをスタート。2008年、フォトカンパニー「写真とプリント社」(現在、写真と色々)を大阪にて共同設立。写真集『moving days』(誠光社)、『LIGHTS』(ミナトブックス)、写真担当書籍に『恥ずかしい料理』(誠光社)などがある。ドラマや映画でのスチール担当として活躍するほか、「住まい」「暮らし」「人」を軸に撮影から執筆まで幅広く手がけている。
愛用カメラ:PENTAX 645N、PENTAX 645N II、FUJIFILM KLASSE S
愛用レンズ:SMC PENTAX-A645 45mm F2.8、SMC PENTAX-FA645 75mm F2.8

moving days

どこへではなく、何から引っ越すのか。

『moving days』(私家版)より
引っ越しを撮影するきっかけとなった友人の家。
「不要とされ部屋に残っていくものたちの姿が、それまでの時間の残骸のようにも見えて、強烈なインパクトを放っていました」。

『moving days』(私家版)より
最初の撮影で引っ越しを撮ることの面白さ、手応えを感じ、その数カ月後には2回目となる引っ越しの撮影を行った。30歳を機に実家を出て、一人暮らしを始める別の友人の撮影だった。人生の節目に訪れる引っ越しを撮影するmoving daysに、「どこへではなく、何から引っ越すのか。」という言葉を生み出したのは誠光社の堀部篤史さんだった。平野さんの周りにはたくさんの仲間たちがいる。
「応援してもらったり協力してもらったり、共に作り上げる喜びをいつも感じています」。

引っ越しにまつわる時間と情景を撮影する平野愛さんのプロジェクト「moving days」。2016年の初頭、友人が夫婦の暮らしから一人暮らしになると聞いて、頼まれてもいないのに引っ越しを撮影した。ずっと住んできた部屋を手放すということにセンチメンタルな気持ちになり、写真に残してプレゼントしたいと思ったことが始まりだった。

『moving days』(誠光社)より
最初に撮った友人の、引っ越し先の作品。

誰かの役に立つ、価値のあるものであるかどうか。

「moving days in KCUA」会場風景(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA 2024) Photo:Ai Hirano

平野さんはどのプロジェクトにおいても、誰かの役に立つ価値あるものであることが必要であり、世に出すことにはその責任が伴うものだと考えている。moving daysにおける価値とは何か。その答えは、スタートから8年後の2024年、京都市立芸術大学という大規模な引っ越し作品の展示「moving days in KCUA」で明確なものとなった。

「moving days in KCUA」会場風景(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA 2024) Photo:Ai Hirano

「moving days」が広く認知されるようになると、平野さんの元には引っ越し写真の撮影の依頼が多く舞い込むようになった。その中の一つにあったのが、京都市立芸術大学の大規模な引っ越しプロジェクト。「撮影は3カ月にわたるものだったのですが、規模が巨大すぎて何を見たらいいのか、どこを撮ったらいいのか、いっぱいいっぱい。それでも撮り続けていくうちに、住宅と規模は違っても人の営みはみんな一緒だなということに気づき、『終わりのようなはじまりのような』という言葉が出てきました。プロジェクトって、哲学が生まれたときに鮮明さを増す。何かを超えた瞬間でした」。

展示を見た卒業生から「もう一度歩けた気がしました」という言葉をもらった。moving daysでやりたかったことが、“超実現”した瞬間だった。

「展示を訪れてくれた卒業生から、『もう一度歩けた気がしました』という言葉をかけられたときでした。その言葉に、これこそが私がmoving daysでやりたかったことなのだと強く思いました。そのときそう思わなくても、いつか手放した家をもう一度見たいって思うときが来るのではないかと思うんです。最初の友人のときの撮影から、実は変わっていない。写真に残してあるから大丈夫、いつでもそこにあるから安心してねっていう、moving daysはいわば私のおせっかい。そしてそれこそが、コンセプトなのだと思います」。

『moving days』(誠光社)より
プロジェクト開始翌年の2017年には、ウェブマガジン「ours.」で連載がスタート。好評を得たことで引っ越しの情報が平野さんの元に集まるようになり、撮影の機会も増えていった。この一枚は引越し先へ向かう直前の家族。家族は数週間後に再び同じ場所へと戻って来た。
「その展開は衝撃的でした。同時に、戻ってきてもいいよね、という哲学を得ました」。

『moving days』(私家版)より
誠光社の堀部篤史さんの、自宅の“本の引っ越し”風景。
「撮影直前に諸事情からキャンセルになったり、断られたり、引っ越しを撮らせてもらえる人にまったく出会えない時期がありました。そんなとき、堀部さんが『じゃあうちの本の引っ越しでも撮る?』と言ってくださり、撮影しました。自宅は未公開だったため、その自宅を撮影したということが信用にもつながった。以降、次々に撮影の機会をいただけるようになっていきました」。

Photo Book『moving days』

プロジェクト開始から2年後の2018年には、6組の引っ越しをまとめた私家版の写真集『moving days』が完成。発行と同時に写真展の全国ツアーも行った。それ以降も撮影を続け、2022年には誠光社からパブリック版となる写真集『moving days』を刊行。「私にとって、メモのために撮った写真以外はすべて“作品”です。プロジェクトも“売れるかどうか”という視点を持って進めています。売れるかどうかは価値の評価そのものでもあるし、協力してくれた方々に対して私が担うべき責任だと思っています」。

私家版

誠光社

Amazon:平野愛 写真集『moving days』

GENIC vol.76 【moving days】
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.76

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