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プロフィール
半田菜摘
1986年生まれ、北海道出身。カメラ歴は10年。写真集『ピリカ』(A&F)、写真集『カムイ』(日経ナショナルジオグラフィック社)が発売中。
愛用カメラ:Nikon Z9
愛用レンズ:NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S、NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S
What’s Your Job?
<Job1>動物写真家
北海道で野生動物の写真を撮るのがメイン
友人が撮る夕日や動物の写真に感銘を受け、27歳のとき趣味でカメラをスタート。写真展やSNSで作品を発表していくうちに徐々に企業からお仕事をいただく機会が増え、カメラメーカーからのプロサポートをいただけるようになったことで写真家になる覚悟を決めました。
<Job2>看護師
病棟看護師として患者さんと向き合う
最も尊敬している母に看護師の道を勧められ、母に親孝行がしたかったのもあり看護師の道へ。現在は北海道旭川市内にある病院で病棟看護師として働いています。抗がん剤治療から食事介助、排せつケアまで看護師の仕事は多岐にわたります。
命との対峙
「風のない静かな朝、灰白色の木々が海に映り込む。美しい風景と動物を絡めて撮影したいと思い数時間待つと、エゾシカの親子が現れ理想的な場所で毛繕いを始めました」。
「ガレ場に現れたエゾオコジョ。その俊敏さはまさに肉食の名ハンター。エゾヤチネズミの命がエゾオコジョに繋がる瞬間」。
どちらも本気で取り組む。当たり前だけど大切なこと
「雪のトンネルから顔を出したエゾクロテン。愛らしいつぶらな瞳に心奪われる。その見た目から想像しづらいが、鋭い牙と爪を持つ逞しい森の肉食ハンターである。チョコレートブランドRAMSさんのパッケージにも使用されました」。
「写真と看護、かけ離れているように思えますが、私は自然の中で動物たちの写真を撮っていることもあり、どちらも生命と向き合うという共通点があります。動物たちの可愛らしい見た目や内に宿る生命力は、患者さまにとってポジティブな効果を発揮することも多いです。病院という場所は無機質で何かと緊張するシーンの連続なので、動物の写真を見てふと気持ちが落ち着いてもらえたらいいな……そんな想いから病院のロビーに作品を飾っていただけることになりました。想像していたよりも反響がよく、患者さまが自由に投稿できる病院のアンケートボックスには『手術前の緊張が和らぎました』『新作見るために抗がん剤治療の通院頑張ります』などの感想をいただき、写真の持つ力は素晴らしいのだと再認識しました。二足の草鞋による相乗効果を実感できるからこそ双方にやりがいを感じるし、自分にとっての生き方そのものになっています」。
私の写真や生き方が誰かの希望となるように
「大きな瞳でフクロウやエゾクロテンなどの天敵がいないか安全確認をしているエゾモモンガ。3匹が縦一列になり外を伺う様子はまるで“だんご”のよう。写真集『カムイ』の表紙にも採用した写真」。
「流氷が押し寄せる時期、オホーツク海に飛来するオオワシ。白と黒のコントラストが美しい体で、黄色い嘴と脚が青い背景に映えます。2015年にイタリアの写真機器メーカーであるマンフロット社にイベント展示のため作品を買っていただいた写真で、初めて収入を得た作品でもあります」。
「大切にしていることは『どちらも本気で取り組むこと』。当たり前ですが、そうじゃないとどちらにも失礼になると思っています。もちろん休みが足りなかったり睡眠時間がなかったりと体を酷使している感は否めませんが、それでもいいと思えるほど日々が忙しく充実してます。こんな私の生き方を見て『ダブルワークをやる勇気をもらった』などという声を頂戴することもあり、活動のモチベーションにもなっています」。
GENIC vol.70【パラレルワーカーという生き方】
Edit:Megumi Toyosawa
GENIC vol.70
2024年4月号の特集は「撮るという仕事」。
写真を愛するすべての人に知ってほしい、撮るという仕事の真実。写真で生きることを選んだプロフェッショナルたちは、どんな道を歩き今に辿りついたのか?どんな喜びやプレッシャーがあるのか?写真の見方が必ず変わる特集です。