menu

色に恋して。デジタル写真をフィルム風に 「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」vol.9 茶々

デジタルカメラで撮影した写真を、フィルム写真のようなカラーに。そんな夢のような機能が、富士フイルムのデジタルカメラに搭載されています。その名も「フィルムシミュレーション」。フィルムを交換するような感覚で色再現を楽しめる機能で、その数なんと20種類。フィルム時代から90年以上にわたり、色の表現を研究してきた富士フイルムだからこそ作れる機能です。

「Xシリーズ」「GFXシリーズ」すべての機種で使用できるとあって、この機能に恋して、富士フイルムのデジタルカメラを愛用し続ける写真愛好家やフォトグラファーも多数。

そこで、本連載では「フィルムシミュレーション」の魅力を、全12回にわたってお届け。毎回1名のクリエイターがお気に入りのフィルムシミュレーションで撮影した作品とともにその魅力を語ります。

第9回は、フォトグラファーの茶々さん。富士フイルムの「X-H2S」で撮影した作品とともに、お気に入りのフィルムシミュレーションについて紹介します。

  • 作成日:
目次

プロフィール

茶々

フードフォトグラファー 1994年生まれ、秋田県出身。2018年から趣味で日常の写真を撮り始める。2020年の春、趣味のお菓子作りに熱が入り、テーブルフォトを撮り始める。写真の仕事を引き受けるようになり、2022年の春に独立。フリーランスフォトグラファーとして写真教室やさまざまな商品撮影を行っている。

写真は心を躍らせ、日々を豊かにしてくれる

私にとって写真とは、心を躍らせてくれるもの。仕事でも趣味でも写真を撮っている今は、写真を撮ることが当たり前ではなかった頃よりも充実した日々を過ごせていると感じます。好奇心が強まり、普段過ごすなかでも、この空の色が好きだと感じたり、明日の朝は霧が出るだろうかと考えたり、日々の変化に感動や期待をするようになりました。また、それまで何とも思わなかったものを綺麗だと感じたり、もっと知りたいと思ったり。撮りたい被写体の小さな変化まで見えるようになって、飽きることがない存在として写真があります。

camera:X-H2S lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: ETERNA ブリーチバイパス
「母が作ってくれた栗の渋皮煮と、家に余っていた胡桃を入れたパウンドケーキを休日に焼きました。パウンドケーキは一晩寝かせたほうが美味しいですが、焼きたてもまた違う美味しさがあります。栗と胡桃がゴロゴロ入った断面がとても魅力的で、レースのカーテン越しのやわらかい光が、この時間をより良いものにしてくれました。ETERNA ブリーチバイパスは茶色をやわらかく出してくれます。彩度は低いですがコントラストはしっかりと残してくれるので、フード写真にも十分使えるフィルムシミュレーションだと思います。私がいつも撮る写真とはまた違う雰囲気になるので、使っていて楽しいです」。

富士フイルムのカメラとの出会いは、会社員時代のことでした。SNSで、偶然コハラタケルさんの写真を見つけました。日常の中でこんな素敵な写真が撮れるのかと感動したのを今でも覚えています。そして、私もこんな写真が撮りたいと思い、コハラさんが当時使っていた「X-Pro2」を購入したのが始まりでした。

実際手にすると、ボディのデザインと程よい重さに惹かれました。持っているだけで気分の上がる見た目と、持ったときに感じる重みがとても好ましく感じられたのです。シャッター音も良く、シャッターボタンを押す瞬間はいつも心が躍っていました。

そしてやはり、一番の魅力はフィルムシミュレーションでした。フィルムシミュレーションを使うと、何気ない日常のシーンも特別なものになります。私は、カメラを持ち始めたときにしか写せないものがあると考えているので、そんなときにフィルムシミュレーションに出会うことができて本当に良かったと思っています。

camera:X-H2S lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション:PRO Neg.Std
「朝食のチーズトースト。チーズトーストはそのままでも美味しいですが、はちみつをかけると甘じょっぱく最高に美味しくなります。こんがり焼いたチーズのとろりとした感じと、はちみつの艶がたまりません。トーストのちぎった部分や、はちみつの艶が美味しそうに見えるところがこの写真のポイントです。PRO Neg.Stdがトースト表面の黄色味を抑え、美味しそうな色味を出してくれました。ランチョンマットの青は実際はもう少し濃いのですが、色が抑えられたことでトーストに馴染んだと感じました」。

その後、もっと気軽にスナップ写真を撮りたいと思い「X100V」も購入しました。X100Vを選んだ理由は、フィルムシミュレーションに「クラシックネガ」がプラスされていたからです。とても気になっていて、いざ使ってみると、奥深い写りが素晴らしく、好きなフィルムシミュレーションのひとつになりました。

今回の撮影では、「X-H2S」を使いました。AF性能が優れていて、シャッター半押しでピピッと瞬時にフォーカスを合わせてくれる精度が高いため、撮りたい瞬間にサッと、しかもしっかり撮ることができました。ローアングルやハイアングルなど、アングルを自由自在に楽しめるバリアングルモニターもうれしいポイントで、その便利さを実感しました。

最近は仕事でフードを撮る機会が多いせいもあり、普段のちょっとした朝食などで撮る機会が減ってしまっていました。そんななかで、腰を据えて日常と向き合った今回、改めて何気ないシーンを写すことの楽しさを実感しました。3種類のフィルムシミュレーションを使って撮影しましたが、シャッターを切るだけで完成された写真が撮れてしまうので、撮るたびに感動。あまり自然光が入ってこない曇りの日が続いていたのですが、そんな状況下でも良い感じに撮ることができました。

camera:X-H2S lens:XF60mmF2.4 R Macro
フィルムシミュレーション: ETERNA ブリーチバイパス
「いつもお世話になっている方のカフェで購入した林檎スコーン。あふれんばかりの林檎ジャムと表面がサクサクとしたスコーンの質感が魅力的だと感じました。もっとも魅力的に感じた部分を切り取ることで、写真から林檎の甘い香りが漂ってくるようです。ETERNA ブリーチバイパスによって全体的に彩度が低い、好きな雰囲気になりました。開放で撮ったのでボケ感も綺麗です。天気の悪い朝だったので光があまり入らず、ISOをかなり上げて撮った分、少しノイズが入っていますが、ETERNA ブリーチバイパスの映画のワンシーンのような描写にマッチしていて、よりこの写真の良さを引き立ててくれていると思います」。

My favorite フィルムシミュレーション

何気ないシーンも印象的な写りになるので、写真を撮ること自体が楽しくなるフィルムシミュレーション。普段から使っている「クラシッククローム」に加えて、これまであまり使ってこなかった「PRO Neg.Std」と「ETERNA ブリーチバイパス」をあえて選び、撮影をしていきました。

1:クラシッククローム

クラシッククロームは、フード、風景、人物……どんなシーンでも印象的に写してくれる大好きなフィルムシミュレーションです。散歩をしながら自分の足元を写したり、落ち葉を拾って写したり、空を写したり。深みのある色味がとても気に入っています。

camera:X-H2S lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: クラシッククローム
「お昼のホットサンドをソイラテと一緒に撮影しました。この日は晴天で、やわらかな良い光が部屋に入ってきていました。焼きたてのパンの香りは幸せそのものです。たっぷり入れたチーズが断面からあふれ出しているところと、ホットのソイラテから出る湯気がこの写真のお気に入りポイントです。クラシッククロームは普段からよく使っていますが、やはり色味と深みが好きだなと感じます。また、光も綺麗に捉えてくれています。半逆光で撮影したので湯気も写り、冬の部屋の雰囲気を出すことができました」。

2:PRO Neg.Std

PRO Neg.Stdは、やわらかい描写ですが、立体感を出してくれるためフードにもよく合うと感じました。色味も、強くなり過ぎないよう抑えつつ、しっかりと出してくれます。普段の朝食やティータイムを、より特別なものにしてくれるフィルムシミュレーションだと感じました。

camera:X-H2S lens:XF60mmF2.4 R Macro
フィルムシミュレーション:PRO Neg.Std
「撮影の日の昼食。昼を挟んだ撮影のときはなるべくササッと済ませられるものがいいです。この日は残り物の冷凍ご飯と作り置きの煮卵に、鰹節をかけて食べました。視覚的満足感を得るために白ごまを振りかけています。割った半熟卵のビジュアルはシズル感を演出するのにピッタリ。今回もそんな画作りを狙い、さらに醤油をかける瞬間を撮ることでよりシズル感を強めました。テーブルも被写体もほぼ黄色なのですが、PRO Neg.Stdを使うと黄色の彩度が抑えられ、やわらかな雰囲気になります。見せたい部分だけを見せることができるマクロレンズは、フード撮影に欠かせないなと改めて思った撮影でもありました」。

3:ETERNA ブリーチバイパス

ETERNA ブリーチバイパスは、彩度が低く、映画のワンシーンのような写真が撮れます。撮影した写真を見て、どこか懐かしい、曖昧な記憶のような印象を抱きました。パキッと綺麗に写すというよりは、例えばある日の朝食で目玉焼きの黄身を割るシーンなど、記憶として断片的に浮かぶような瞬間を写したいと思いました。とても奥深さを感じるフィルムシミュレーションで、今後、もっといろいろな場面で使ってみたいと思っています。

camera:X-H2S lens:XF60mmF2.4 R Macro
フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス
「朝食の目玉焼きトースト。バターを塗るだけでも良かったのですが、より美味しく食べるため目玉焼きを乗せました。半熟の目玉焼きは黄身を割る瞬間が至高です。マクロレンズ開放で撮影すると、ピントはあふれる黄身に合いつつ、その他の部分は大きくボケていて、その曖昧な感じがお気に入りです。ETERNA ブリーチバイパスは普段あまり使わないフィルムシミュレーションですが、この写真のように、開放で部分を切り取ったフード写真を撮るとすごく雰囲気のある仕上がりになると感じました」。

3つのフィルムシミュレーションは、カスタムモードでC1、C2、C3にそれぞれ設定しておき、撮影前にダイヤルを変えて撮影しました。実際に被写体にカメラを向け、それぞれのフィルムシミュレーションでの写りを見ながら、「このシーンにはこのフィルムシミュレーションを使おう」といった感じで選んでいきました。ひとつの被写体をそれぞれのフィルムシミュレーションで撮り、あとから見比べることもしたのですが、それもまた楽しかったです。

茶々さんが愛するフィルムシミュレーションの特徴

1:クラシッククロームとは?

20世紀のグラフジャーナル誌に使われた写真のような色再現を目指したフィルムシミュレーション。彩度は低め、暗部の階調は硬めに設計されており、ドキュメンタリータッチでリアリズムを求める写真を撮る際などに最適です。

camera:X-H2S lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: クラシッククローム
「大好きなチョコチップクッキー。お気に入りのカフェで購入した大きなクッキーで、ひとつひとつ手作りなので顔に個性があり、写真を撮りたくなります。とってもかわいいので手に持つだけで映えてしまうクッキー。ザクザクした質感とつぶらな瞳がお気に入りで、背景の壁の色と合っていると感じます。クラシッククロームは被写体の色味を程よく抑えてくれ、写真は落ち着いた雰囲気に。背景のやわらかなクラデーションがしっかり表現されたことで、より被写体が引き立ったと感じました。ISOを上げた分、少し出たノイズもまた、良い味を出してくれています」。

2:PRO Neg.Stdとは?

プロ用ネガフィルム「PRO160NS」がベース。階調と肌色の柔らかさが特徴で、作りこまれたライティングでのポートレート撮影に適しています。また、ニュートラルな階調により、撮影後に画像加工を行う際にも最適なフィルムシミュレーションです。

camera:X-H2S lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション:PRO Neg.Std
「ある日の朝食で食べた、バターロールに目玉焼きという、シンプルなプレートです。飲み物はブラックコーヒー。久しぶりに食べたころんとかわいいバターロール、さらにお気に入りの食器でのワンプレートに、テンションが上がりました。最近刺繍にハマっているので、お気に入りの刺繍本を見ながら食べました。刺繍本はそのまま副題としても取り入れています。バターロールのかわいらしいフォルムと、グリーンのお皿とイエローのコースターの組み合わせがお気に入り。PRO Neg.Stdが朝の光とあいまって、朝食の雰囲気がよく出てくれました」。

3:ETERNA ブリーチバイパスとは?

動画用フィルムシミュレーションETERNAに、多くの映像作家に支持されている“銀残し”のフィルム現像効果を適用。高コントラストでありつつも彩度は低く仕上げられた画は重厚感があり、ドラマチックな映像の撮影に適しています。

camera:X-H2S lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス
「午後3時のコーヒーブレイク。一息つきたいときによくコーヒーを飲みます。コーヒー自体も好きですが、コーヒーを淹れる時間も好きなので、その瞬間を撮りました。カメラは手持ちで、連写で撮影。動きを止める撮影は、撮れた写真を確認するときがとてもワクワクします。湯の雫と湯気、コーヒーサーバーの曇っている感じが美しく描写されていることに感動。そして、ETERNA ブリーチバイパスはコーヒーにもよく合うと感じました。シックで優しい雰囲気になりました」。

茶々さんが使用したカメラ

X-H2S

独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」の最新フラッグシップモデルとして、2022年7月に誕生。決定的な瞬間を逃さない圧倒的なまでのAF/AE追従と、秒速40コマ超高速連写によって、誕生以来、プロアマ問わず絶大な支持を受けているカメラ。裏面照射式に加え、信号読み出し速度を高速化した2616万画素のイメージセンサーを搭載するほか、画像処理エンジン「X-Processor 5」によって現行機比約2倍の高速処理を実現。センサーサイズはAPS-C。タッチパネル機能がついたバリアングル液晶モニターを採用し、フィルムシミュレーションは全19モード搭載している。

FUJIFILM WEB

おすすめ記事

連載:色に恋して。デジタル写真をフィルム風に 「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」

あの“フィルムシミュレーション”がダイヤルになって天面に搭載。「FUJIFILM X-T50」

富士フイルム「Xシリーズ」史上最高の高速連写・AF・動画性能を実現するフラッグシップモデル「FUJIFILM X-H2S」

次の記事