menu

【写真家たちが捉えた瞬間:3】井崎竜太朗

心が動いた瞬間や心惹かれる人をありのままに写すことは、誰にとっても身近な撮影手法ながら、撮り手の感情や判断が強く反映されるもの。作品が高い評価を受ける写真家5名がそれぞれに抱く「スナップ写真」への想いを、シャッターを切らずにいられなかった瞬間の作品とともに紹介します。
3人目は、インプットを瞬発的に呼び起こす写真家、井崎竜太朗さんです。

  • 作成日:

ADVERTISING

自分が何かをやってきたという、証。

自分が気持ちいいと感じる構図や配置がはまった瞬間に、シャッターを切れるかどうか

「旅行で訪れた金沢市にて。日暮れ間近、建物の屋上から見えた雲から差す光が神々しく、撮影しました」。

「記念碑的なものを空バックで。磨かれた断面と背景の白のコントラストが相まって、程よく非現実味のある写真に」。

極論的には全部自分のため。死ぬ間際に見返したい

自分の写真は、視覚的なインプットの量に比例して作りあげられていった

「街のオブジェを滑り台のようにして遊んでいる子どもを100-300mmのズームレンズで撮影しました。2020年のもので、特に構図が気に入っている作品です」。

「島に旅行した時に見つけました。なぜこのフレーミングにしたかは覚えていませんが、線と余白のバランスから、今見てもおそらくこのように撮るだろうなと思う一枚」。

「スナップ撮影は“つかまえる”というイメージが感覚的にあって、撮影者に電波的なものが生じた瞬間に、捉えにいくような行動だと考えています。それによってできる像が、スナップ写真。僕に電波的なものが発するのは、頭の中にインストールされている、気持ちいい構図とか好きな配置が目の前に現れた瞬間です。心が動いた瞬間にシャッターを切れるかどうかが全てですが、前提として各々が自分の中の美学として好きなものやバランスがあるはずで、僕の場合は構図や配置がそれにあてはまります。それは、センスみたいなものではなくて、インプットの量に比例して作りあげられていったもの。写真が好きなので、写真家が語る言葉のようなものも好きだけど、付随して映画や漫画、いわゆるカルチャージャンキー的に、視覚的に吸収してきたものが大きい。また、写真集にすることが自分にとっては大切なプロセスとして存在していて。撮っている時はあえて何も考えないようにしているけれど、それを再構築する写真集の制作は、撮影していた期間に自分自身が見てきたものは何だったのかを振り返ることができる時間です。写真を撮るのは、極論的には全部自分のため。死ぬ間際に、自分が何かをやってきた証として見たいだけのものだったりします」。

写真は平面として見せる美術であり、スナップはその技法の一つ

偶発的に行かざるを得ない状況の中で、ひたすらに歩く

「隅田川を散歩しながら撮影。感覚的に撮ったので、実際の記憶は曖昧なのですが、現像して写っていたこの写真に感動したことはしっかりと覚えています」。

「日光がカーブミラーに反射して横断歩道と重なっていました。形や記号的なものが、太陽の光や影、風、水などの自然と組み合わさっている状況は好きで、すぐに反応してしまいます」。

「カメラを意識的に使い始めたのは、19〜20歳くらいの頃。その頃の自分は、ライブハウスなど、幅広い世代や職業の人たちが集まるような場所によく出入りしていました。顔なじみも増え人との交流を楽しんでいたけれど、心のどこかで『今だけだろうな』とも感じていて、その瞬間を備忘録として、忘れないために撮り始めたのがきっかけでした。撮っていたのは、まさにスナップ的なスナップ写真。そうしているうちに、写真が生活全般に深く根付いていき、同時並行的に、自身は本来の性質へと戻っていった。大学生になって行動範囲が広がると、すべてが新鮮で、吸収したいという欲求からいろいろな人と接していたけれど、本来はそこまで社交的な人間じゃなかったんだと思います。オープンな自分が消えて、写真だけは残って、だんだんと一人の時間で撮影することが増えていきました。ルーティン的に、とにかく歩く。自己フィーリング的な意味合いもあるのですが、でも、何もなくして歩くことはしないはずで、やっぱりきっかけとしてカメラがある。そうして出会った瞬間の光景を、捉えていく。平面として見せる美術として、写真それぞれが、一枚ずつ絵として綺麗、自分がいいなと思えるものが撮れるといいなと思っていて、僕にとってスナップは、そのための技法の一つなのだと思います」。

「フィルム一本分を撮り終えるまで歩くということを日課にしている。修行でもあり、自分だけの時間を過ごしながら心を休めているような感覚。奇跡的な瞬間に出会うことは多くはないけれど、単純な色や形は街の中に散らばっているので、それを収集しています」。

「見知らぬ街を歩きながら目にとまったので撮影。海外製の期限切れフィルムのため発色が淡くなっていました」。

井崎竜太朗

写真家 1994年生まれ、福岡県出身。2016年より拠点を東京に移し写真家として活動。主に企業広告、ファッション、音楽シーンなどの分野で撮影をしながら、自身の作品制作や展示活動にも注力している。2019年には、初の写真集『Time Machine』を出版。近年では、“色と形の採集”をテーマとした『ensemble』、『sampling』などの展示がある。
愛用カメラ:Nikon F3、MAMIYA645、 PENTAX67、FUJIFILM GFX 50R
愛用レンズ:Micro Nikkor P・C Auto 55mm F3.5、GF50mmF3.5 R LM WRなど

井崎竜太朗 Instagram

GENIC vol.69【写真家たちが捉えた瞬間】
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.69

1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。

GENIC公式オンラインショップ

おすすめ記事

【写真家たちが捉えた瞬間:2】森健人

【写真家たちが捉えた瞬間:1】池野詩織

次の記事