【龍崎翔子のクリップボード Vol.15】街中のバスケットコート

龍崎翔子<連載コラム>

龍崎翔子<連載コラム>第1・第3木曜日更新
23歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

【龍崎翔子のクリップボード Vol.15】街中のバスケットコート

大人になって、ふと思い立って楽しめるスポーツがぐっと減った。


そもそも身体を動かすのがそんなに好きではなかったとはいえ、ジム行って筋トレするか走るか泳ぐか、ゲーム性など関係なく自分ひとりで淡々とこなす競技しか選択肢が残っていないせいで余計に運動不足になった。人数・時間・場所の都合を合わせてスポーツをすることがいかに困難なことかと思い知らされる。


そんな私が駒場キャンパスに通っていた頃、昼休みになると彼氏に連れられてキャンパスの裏のグラウンドに行って、男子学生たちがサッカーをするのをよく眺めていた。敵味方を見分けるために片方のチームは全員上裸で、ジャージにスパイクの人もいればオムプリッセにローファーで疾走する人もいて、それはそれは混沌とした試合だった。


共通の知人は多少いれど基本的には見知らぬ人同士で、友達や先輩の紹介で来た人、あそこに行けばサッカーができると噂を聞きつけやって来た人、近くを歩いていたら人数合わせで呼び止められ誘い込まれた人、と人間関係を超越してサッカーのルールだけで繋がっていた人たちだった。


名前も知らない、世間話もしない、ラインも交換しない、ただ一緒にゴールに向かって走って、同じ感情を共有する。そんな時間はきっと心地いいのだろうと、グラウンドの片隅の日陰で見て思っていた。


アメリカに引っ越したばかりの時、英語がうまく喋れなくて小学校に馴染めなかった。昼休みに、友達と深い緑色のゴム地のバスケットコートで遊んでいて、なんの気もなしにボールを放り投げたら、みるみるゴールに吸い込まれてシュートが決まった。それを見た今まで話したことのなかったクラスメートの男の子が、私に向かって親指を立てた。

世界で一番競技人口の多いスポーツはバスケなのだという。誰しもがルールを知っているスポーツは、もはや英語以上のコミュニケーションツールなのかもしれない。無理して話さなくていい、お互いのことを知ろうとしなくていい、それでも人と人が出会い、打ち解けるためのきっかけになるポテンシャルをバスケは秘めていると思う。

街中でバスケットコートのあるホテルをしたいと常々思っている。地元の高校生もサラリーマンも、年齢や立場に関係なく集う。旅行に来た観光客も混ざる。人が出会い、会話する理由が生まれ、コミュニティが広がっていく。そんな、人生が交差する言い訳となる空間をデザインしたい。

ついでに、私の運動不足も解消したい。

photographer: yuki nobuhara

【龍崎翔子のクリップボード】バックナンバー

Vol.14 ドープな映画館

Vol.13 旅と音楽

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、3月21日にリニューアルオープン。

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