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プロフィール
ヘアリンデ・ケルブル
1939年10月31日、ドイツのリンダウ生まれ。最初に学んだのはファッションで、1970年代半ばに表現のためのクリエイティブなメディアとして写真に出会う。その後、雑誌を中心に写真家として活動をスタートし、その傍らで自身の長期プロジェクトにおいて非常に多くの作品を出版。その作品の多くは写真だけでなくインタビューも添える構成で、ドキュメンタリー映画として発信したプロジェクトもある。『ツァイトマガジン』誌では、感受性にあふれ、時に哲学的なケルブルのインタビューが定期的に掲載された。作品制作で愛用したカメラは、35mmフォーマットでは主にライカのカメラ、ミドルフォーマットではハッセルブラッド社のカメラ。これまでに写真集を20冊以上出版。受賞歴に、ライカ・メダル・オブ・エクセレンス(1987年)やドイツ写真協会のドクター・エーリッヒ・ザロモン賞(2001年)などのほか、ドイツ連邦共和国功労勲章(2009年)やバイエルン功労勲章(2013年)。現在は、ミュンヘン近郊のノイリートに生活と活動の拠点を置いている。
Portrait Herlinde Koelbl
© Johannes Rodach© Herlinde Koelbl/Leica Hall of Fame Award 2024 Leica Gallery Wetzlar 2024
ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード
ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワードとは
ライカのカメラで撮影したワンシーンが、世界中の人々の心を揺さぶり、その記憶に鮮明に残る――。私たちを取り巻くこの世界を独自の視点で捉え、その写真作品で何らかの変革やムーブメントを起こしてきた偉大な写真家に対し、ライカは2011年から「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」を授与しています。受賞者の作品は自身のクリエイティビティの表れでもあります。そしてそこには「人間とは何か」が印象的に視覚化されており、それぞれの時代を象徴する不朽の名作として、大勢の人々の記憶に刻まれてきました。今年度のヘアリンデ・ケルブルは14人目の受賞者となります。ケルブルの作品を展示する写真展が、ドイツのライカギャラリー ウェッツラーにて2025年1月19日まで開催されます。
幅広い領域において比類なき作品を残してきたヘアリンデ・ケルブル
ヘアリンデ・ケルブルは被写体を緻密に観察するドイツの写真家です。また、多分野で才能を発揮するアーティストや実績豊富な執筆者、さらには感受性豊かな年代記編集者としての顔も持っており、これまでの50年で実に幅広い領域において、比類なき作品を残してきました。設定したテーマを徹底的に追究し、長期にわたる取り組みによって得られたその成果を主に書籍として出版すると同時に、大規模な写真展で発表しています。1980年に出版した自身初の写真集『Das Deutsche Wohnzimmer (ドイツのリビングルーム)』は社会学的研究の意味合いがあったもので、大好評を博しました。ドキュメンタリー風の写真と被写体になった人々の個人的な主張を組み合わせたその構成は、後にケルブルのトレードマークのひとつになっていきました。1989年に初版を刊行した『Jewish Portraits』は、何年もの歳月を費やした印象的なプロジェクトです。直截的なモノクロ写真に、現代史の目撃者たちのロングインタビューを付け加えることで、ドイツの現代史をエモーショナルに掘り下げ非常に高い評価を受けました。1991年から8年にわたってドイツの政治家のポートレートを撮影した『Traces of Power』は、ケルブルの代表作といえる作品です。さらに、アンゲラ・メルケル前首相のポートレートの撮影とインタビューも2021年まで続けました。『Traces of Power – AngelaMerkel 1991–2021』シリーズから写真展用に選ばれた6組の作品からは、コンセプチュアルな表現というアプローチが見て取れます。
『High Society』『Clothes Make the Man』『Bedrooms』『Hair』『Portraits』『Writers』『Metamorphoses』――これらは、ライカギャラリー ウェッツラーでの展示作品が属するプロジェクトの一部です。テーマもスタイルも実に多様な長期プロジェクトに挑み、見る者の心を揺さぶる一方で、社会的・政治的な問題に関心を抱かせるようなプロジェクトとなっています。プロジェクトの多くでケルブルが好んで使ってきたのは、ライカのカメラです。ライカを使う一番の理由は、被写体に撮影を意識させない控えめさ。現在のデジタルの時代においても繊細なニュアンスまで描き出せるカメラとして信頼を寄せています。ライカギャラリー ウェッツラーで開催中の写真展では、10のプロジェクトから厳選された47点の作品が展示されており、充実した活動の中で生まれてきた作品の真髄に触れることができます。
ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー
ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤーとは
ライカは2021年以来、「ライカ・ホール・オブ・フェイム」に殿堂入りした傑出したライカフォトグラファーの作品を「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」に選出しています。その偉大さの一端をライカファンと共有するという目的で毎年選出しており、選出作品は世界29のライカギャラリーにて限定販売されます。コレクターやライカファンにとっては、ライカのカメラで撮影された傑作の限定プリントという特別なコレクションを入手できる絶好の機会です。過去にはラルフ・ギブソン、トーマス・ヘプカー、エリオット・アーウィットの作品が選出され、今年度はヘアリンデ・ケルブルの作品が選出されました。
2024年度 ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー
『Metamorphoses』はごく最近の作品シリーズのひとつで、自然を題材にしています。「長年にわたってさまざまなプロジェクトを手がけてきましたが、人物がまったく登場しないのはこれが初めてです。しかし、どのプロジェクトでも主要なテーマは『変化、儚さ』であり、一貫して変わっていません」 ── 着手してから約10年の歳月が経つ本シリーズについてケルブルは語っています。今年度の「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」に選出された作品では、そのアプローチが見事なまでに実践されています。植物のフォルム、色合い、質感がクローズアップで描き出されており、フレームの中に神秘的で不思議で抽象的な世界が広がりを見せています。そこに記録されているのは枯れゆく植物の姿ですが緻密な構図によって新たなレベルの現実が表出し、認識がもたらされます。衰えゆく過程で見出された美しさ――どんなものも同じ状態であり続けることはできないのです。「これは、いわばビジュアルで見る考古学。私たちが当然だと思い込んでいる像や概念と部分的に重なり合うだけなく、相反することすらあるものです」「過去と現在は互いに、一方から他方へと流れ込んでいます。そして、それらの再現が未来なのです」。
プリント用紙:ハーネミューレ社 ファインアートパール(ホワイトウォール社がプリント/今回の特別プリントは、写真ラボのホワイトウォール社の協力により実現)
全体サイズ:40 × 50cm(15.75 × 19.69インチ)
写真のサイズ:28.6 × 38.1cm(11.26 × 15インチ)
サインとシリアルナンバー入り
作品証明書付き、シリアルナンバー入り、特製フォルダー入り
販売数:87点
※世界各地のライカギャラリーでの限定販売
※国内での取扱いにつきましては各ギャラリーへお問い合わせ