笠井爾示
写真家 1970年、東京都出身。1996年初個展「Tokyo Dance」を開催。翌年、同名の初作品集『Tokyo Dance』(新潮社)を出版。以降、エディトリアル、グラビア写真集を多く手がけ、また自身の作品集も多数出版。主な作品集に『Danse Double』(フォトプラネット)、『トーキョー ダイアリー』(玄光社)、『東京の恋人』(玄光社)など。2023年、「2023 年日本写真協会賞 作家賞」を受賞。
他の作品とはまったく違う抽象的でミニマルな世界
笠井爾示は私邸近くに流れる川を何気なく撮り始め、5年にわたり同じ川を撮り続けてきました。川の水鏡に映る光や風景を眺めてみると、同じ川であっても当然ながらそこにひとつとして同じ水面はなく、春夏秋冬あらゆる天候によって変化し、さらには観る者の心持ちによっても常に表情を変えていきます。「川」は、撮影者にとってはただ淡々と流れゆく日々の記録でありながら、鑑賞者の心のひだにそっと触れ、いつの間にか心象風景に取って変わる写真作品となっています。膨大に撮り溜められた新作「川」の中から、笠井爾示自らが選んだ選りすぐりの作品群がプリント展示されます。
会場では、展示作品(プリント)の販売も行われます。
笠井爾示からGENIC読者へのメッセージ
この度、『川』と題した写真展を行います。
5年ほどまえに、いまの住まいに引っ越して以来、近所の歩いて3分もしないところに流れる川を撮り続けてきました。散歩の際、あるいは駅に向かう道中、この川を通る度にかならず橋のうえから見下ろすようにカメラを向けてきました。
3年ほどまえにフと思い立ってこの川のインスタグラムアカウントを作ります。
以来、毎日、一日一枚川の写真をアップしてきました。このインスタグラムを作った理由は、他の自分の作品とはすこし異質なこの写真を単独で見せたらどうなんだろう、あの絵がグリット上に並んだらどう映るんだろう、ひたすら淡々と展開するものに人はどう反応するのだろう、そんな興味と実験的な意味合いがあのアカウントにはありました。こうして日々アップした写真は昨年の秋に1000枚に達し、そこでいったん更新を止めることにしました。
度々言ってきていることですが、僕の写真行為の基本原理は「日記」です。これまで出してきた作品集すべてにおいて日記がベースになっています。日々、新たに出会う人や風景を撮る一方で、毎日の生活のなかで繰り返し見るものに対してもシャッターを切ります。それは自宅のベランダから見る景色だったり、目のまえに置かれた食べ物だったり、飲み屋の常連の顔だったり。繰り返し見る川もその延長で撮っているに過ぎません。僕にとって川の写真とは、他と同様に日記なのです。
川に対する興味は、インスタグラムというSNS空間から、実際にプリントと額装をして見せるということに移りつつあります。インスタグラムではより多く見せるという、そんな気分でやっていました。今度の展示では、膨大な川の写真を極限まで切り落として厳選することに重きを置いています。その結果、おなじ日記でありながら、僕の他の作品とはまったく違う抽象的でミニマルな世界が広がりました。なにより、プリント上で蠢く混沌としたテクスチャーに僕自身ゾクゾクしてます。そんな、これまでとは違う、僕にとっては稀有な展示にぜひ足を運んでご自身の目で見てほしいです。
PS: テイラーであり、デザイナーの信國太志氏が『笠井爾示 個展「川」によせて』という、とても素敵でやや長めの文章を綴ってくれています。展覧会のパンフで読むことができ、また「川」のインスタグラムにも最新の投稿として掲載しています。ぜひそちらも見てください。僕のぎこちない文章より遥かに僕の気分をとても詩的にトレースしてくれています。
笠井爾示
笠井爾示 個展「川」情報
開催日時
2024年2月1日(木)~2月18日(日)13:00~19:00
休廊日:月・火
入場料
無料
会場
HECTARE
〒150-0047 東京都渋谷区神山町40-2 1F
行き方・アクセス
<電車>
東京メトロ千代田線「代々木公園駅」2番出口から徒歩で7分
小田急線「代々木八幡駅」南口から徒歩で9分
JR山手線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線、東急東横線「渋谷駅」A2出口から徒歩で11分
池谷修一×笠井爾示 トークイベント開催
開催日:2024年2月4日(日)15:00~
予約:不要
参加費:無料
- 【お問い合わせ先】
- HECTARE
- www.hectaregallery.com