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【撮影と表現のQ&A】笠井爾示/Q.写真で賞を取ることの本質は何ですか?

さまざまな写真家、フォトグラファー、クリエイターが登場するQ&A企画。
「知ることは次の扉を開くこと」。
今回は、2023年日本写真協会賞 作家賞を受賞した、写真家の笠井爾示さんです。

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笠井爾示

写真家 1970年、東京都出身。1996年初個展「Tokyo Dance」を開催。翌年、同名の初作品集『Tokyo Dance』(新潮社)を出版。以降、エディトリアル、グラビア写真集を多く手がけ、また自身の作品集も多数出版。主な作品集に『Danse Double』(フォトプラネット)、『トーキョー ダイアリー』(玄光社)、『東京の恋人』(玄光社)など。2023年、「2023 年日本写真協会賞 作家賞」を受賞。
愛用カメラ:FUJIFILM X100V

Q.写真で賞を取ることの本質は何ですか?

A.賞は氷山の一角。そこにたどり着くまでにどれだけの時間を写真に捧げてきたか

撮影機材:FUJIFILM X100F

写真で何かを超えていくにはやっぱり努力が必要

「“努力”っていう言葉がありますよね。日々努力したから今がある、みたいな偉そうなことは本当に言いたくないけれど、でも、写真で何かを超えていくには、やっぱり努力が必要なんじゃないかと思っています。今春、母親を撮った写真集『Stuttgart』で名誉ある賞をいただいたけれど、僕の全作品中、『Stuttgart』はほんの数パーセントにしか過ぎません。公に出ている作品は氷山の一角で、僕は毎日写真を撮っていて、それこそ膨大な作品を撮ってきた。写真を撮ることよりも実際は作品として認知させていくことのほうが難しいから、撮ったら欠かさず現像し、ふるいにかけ、自己評価を繰り返すこともしてきました。中途半端な作品を許容したり、自己満足になったりしてしまわないよう、ちゃんとした出版社から作品集として出版され、書店に置かれることを最終目標にもしています。努力というよりも好きでやらずにいられないという面が圧倒的に強いけれど、それでも日々撮って考え続けたその先に、母親を撮ったという行為があったからこそ、何かを超えたものになっていったのではないかと考えています」。

撮影機材:FUJIFILM X100F

日本写真協会による笠井さんの受賞理由は、写真集『Stuttgart』において「作家が新境地を切り拓いた作品に対して」としている。「僕自身の中でも、『Stuttgart』はそれまでの写真集とは異なるベクトルのものだと感じていて。意図して追求していたわけではまったくないけれど、それまでの作品集よりもテーマが広く、社会性があるように思う。歳を取った女性の生き方のような、病気を抱えながらの日々というか。写真集を出した当初、『自分の母親のことを思った』という声を多くいただきました」。

Information

『Stuttgart』

出典: bookshopm.base.ec

10代の時に過ごしていたドイツ・シュトゥットガルトを家族で訪れた旅の中で、初めて母を撮影し、135点の作品でまとめた作品集。(5,500円/出版社:bookshop M/文:大平一枝/造本:町口覚)

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GENIC vol.67【撮影と表現のQ&A】笠井爾示/Q.写真で賞を取ることの本質は何ですか?
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.67

7月号の特集は「知ることは次の扉を開くこと ~撮影と表現のQ&A~」 。表現において、“感覚” は大切。“自己流” も大切。でも「知る」ことは、前に進むためにすごく重要です。これまで知らずにいたことに目を向けて、“なんとなく”で過ぎてきた日々に終止符を打って。インプットから始まる、次の世界へ!
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