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美味しい風景を残したい 土田凌

夢中になれるものを撮り続け、それが生きる糧となった人。レンズを通して、ひとつのことに情熱を注ぐようになった人。仕事と愛が交差する場所で生きる6名のフォトグラファーに、“好き”の先にある仕事を語ってもらいました。
「“好き”を撮って生きていく」1人目は、フォトグラファーの土田凌さんです。

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目次

“好き”を撮って生きていく

「ビリヤニ大澤の店舗写真撮影にて、出来立てのビリヤニのカット。打ち合わせ時、お店の方が『良い米の立ち方はどういうものか』を、1〜2時間は語ってくれました。編集者もディレクターも皆が熱量高く、刺激的でした。小窓から入る少ない光と立ち上る湯気、大皿に取り分けられたビリヤニは、今も強く記憶に残っています」。

「標津町観光協会サイトの撮影で、鮭漁に同行させてもらいました。揺れる船内、日の出前なので船の光のみという状況で、いかに漁師さんたちの動線に入らずその様子を伝えられるか、試行錯誤した思い出があります」。

食材や生産現場などもフード撮影のひとつ

「2ヶ月に1度、宮崎県の高原町に通い、神楽という神事芸能を撮っています。これはその舞い手の方による年末の餅つき。ついた直後のお餅の柔らかさに驚き、思わずシャッターを切った1枚です」。

「岩手県の遠野ホップ栽培60周年記念の撮影。ビールの原材料をつくる農家『HOP FARMER』たちのポートレートとホップの物撮りを担当。コンビニで買える缶ビールも、実は農業と密接に結びついているという、忘れがちな事実に気づかされました。もう4年ほど遠野に伺っていますが、農家の方たちと話しながら撮ったのは初めてで、嬉しくなったのを覚えています」。

「写真を仕事として撮るようになったのは、友人の紹介によるプロフィール写真から。それがフード写真に繋がったのは、2018年にユニットとしてスタートした、『つちめい飯』(現在活動停止)という料理や生活のインスタグラムです。特に美食家ではないけれど食には興味があったので、調理過程を撮るのがとにかく楽しくて。茹で上がる素麺やザクザク刻んだミョウガなど、その人なりのキッチンで状態が常に変わっていく料理を撮る、そんなプロセスカットに興奮を覚えるし、そういったところを評価してくださる方が多かったのだと思います。一方で、状態が常に変わるというのは、同じ瞬間は訪れないということでもあり、とにかく早く撮らないといけない、という緊張感がありますね。撮影を続けていくうちに、もっと食全体を見たいという葛藤も生まれました。料理工程や出来上がりだけでなく、その源流にある食材、それを作る人や環境も知りたくなったのです。そこから、生産者やその土地を訪れるような仕事も増やしたく、少しずつシフトしていくように。だから自分にとっては、食材やその生産現場などもフード撮影という認識でいます。始めた時からずっと調理工程などの“途中のもの”に惹かれているので、今後は料理に限らず、人や風景、出会うものの途中を撮っていきたいです」。

常に変化する料理のプロセスカットに興奮を覚えます

「食べ物を撮る喜びやフード撮影仕事のきっかけになった『つちめい飯』で撮影した写真。ふつふつと煮える茄子が変化する様子を見るのが楽しいのです」。

「WEBメディア『北欧、暮らしの道具店』に掲載された、“今夜は、お気楽グラタン”から、カリフラワーとミートソースのグラタン。個人的に家庭料理が好きなので、料理家の山口祐加さんとの仕事は特に楽しいです。料理に素朴さがあるというか、つい撮りたくなります」。

土田凌 プロフィール

土田凌

フォトグラファー 1992年生まれ、千葉県出身。2016年にフリーランスとして活動開始。雑誌やカタログ、カレンダーなどの紙媒体、ブランドサイトやウェブ記事、広告の分野で活動中。人や料理、旅の写真などライフスタイル全般の撮影を手掛ける。7月末には作品集を発売予定。
愛用カメラ:Canon EOS R5、FUJIFILM GFX 50S、PENTAX67
愛用レンズ:NOKTON 50mm F1.2 Aspherical、GF 120mmF4 R LM OIS WR Macro、smc PENTAX67 90mm F2.8

GENIC vol.70【“好き”を撮って生きていく】
Edit:Satomi Maeda

GENIC vol.70

2024年4月号の特集は「撮るという仕事」。
写真を愛するすべての人に知ってほしい、撮るという仕事の真実。写真で生きることを選んだプロフェッショナルたちは、どんな道を歩き今に辿りついたのか?どんな喜びやプレッシャーがあるのか?写真の見方が必ず変わる特集です。

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