目次
プロフィール
石田真澄
写真家 1998年生まれ、埼玉県出身。2017年、自身初の個展「GINGER ALE」を開催。2018年に刊行した初の作品集『light years -光年-』(TISSUE PAPERS)が話題を呼び、同年には大塚製薬のキャンペーン「部活メイト」のフォトグラファーとして抜擢される。新進気鋭の若手写真家として雑誌や広告をメインに活躍しながら、写真集制作や個展開催なども精力的に行っている。
愛用カメラ:Nikon、CONTAX、コンパクトカメラを使い分け。
My dear, my photography.
自分が投影されていない、自分の写真が好き
Story 01 / 2011
「小学生の頃は、カメラを持つ機会が修学旅行くらいしかありませんでした。それが中学生になって携帯を持つようになると、毎日カメラが手元にある状況に。手作りしたお菓子やきれいなお花など何でも撮れるようになって、だんだん記録として写真を撮ることが好きになっていきました。絵を描いたり何かを作ったりすることも好きでしたが、どこかで自分は、ゼロからイチを生み出すタイプではないのかなって思っていて。その点写真は、イチあるものをどう見るか、どこを切り取るかの作業な気がしていて、自分に合っていると感じました。もっとこう撮りたいとか、アングルを探ったり試行錯誤することも好きでした」。
残したいと思った瞬間と写真が合致することで、記憶は濃く焼きついていく
Story 02 / 2014
「ファッションも好きで、中学生の頃から雑誌をよく読んでいました。『Seventeen』から始まって、写真にこだわっている『装苑』や『GINZA』なども手にするようになると、写っているものよりも写真自体に興味を引かれるようになっていきました。高校生から大学生にかけては、将来は編集者になって、雑誌をつくる仕事がしたいと思いながら過ごしていました。大きな転機は、大学1年生のとき。私のSNSを見たフリーランスの編集者から『写真集を出しませんか?』と声をかけてもらったことです。出版した写真集『lightyears -光年-』は名刺代わりのようにもなり、撮影の仕事で声をかけてもらうことが増えていき、今へとつながっていきました」。
写真のなかに見る風景はすごく豊かで、感情が混在しているように見える
Story 03 / 2025
「広告など仕事の撮影は、ずっと撮り続けた自分のために撮る記録の写真とは、できることの規模も仕上がったときのスケールも違います。関わる方は面白い方たちばかりで刺激的ですが、規模が大きいからこそ制約ももちろん多いです。経験値が増えるとともに対処法が身についてしまい、最近は少し受け身になりすぎているかなと考えるようになりました。スタイリストや編集者に同世代のスタッフが増えてきて、トライアンドエラーを繰り返してチャレンジしている人が多くて、その姿に改めて感化されたことも理由の一つです。単純に、もっと撮りたいものを撮ろうという気持ちがすごく強くなっています」。
変わらない好きの気持ち、変わっていく好きの理由
「写真には、あまり自分が投影されていないことを、大人になってから感じるようになりました。19歳のときに写真集を出版して写真を人に見てもらう機会が増えていくと、撮影した写真から自身に対しての印象を言葉で受け取ることが増えていきました。かけられる言葉は本当にさまざまですが、作品の印象と違って『淡々としゃべりますね』と言われたこともあったりして。確かに、人から感情を受け取っても私自身にはそんなに波がなくて、感情が一定だと思います。でも、自分の写真を見ると、写真のなかにある風景はすごく豊かで、感情が混在しているように見えるんです。作品が生まれるのは感情の波が生じたときなんじゃないかなって他の方の作品を見ていると感じることも多く、起伏に富んだ感情を持っていることに憧れみたいなものもありました。でも、自分の写真を見ると大丈夫って思えるし、写真を撮っていると安心もします」。
石田真澄さんの、「写真が好き」という気持ちは、写真を始めたころから今日まで、変わらない部分もあれば、変わっていった部分もある。最初に好きの気持ちを大きく感じたのは高校1年生のとき。高校の社会見学でヨーロッパを訪れる機会があり、旅先で写真を撮ることを楽しみにしていた石田さんは、普段使っていたコンパクトデジタルカメラとは別に、興味本位で36枚撮りの写ルンですを1つ持っていくことにした。
「帰国から1カ月後くらいに現像ラボからあがってきた写真を見ると、暗かったりボケていたりするものもあったけど、それでも36枚が地続きになっていて、どこで撮ったのか、何を撮ったのか、デジタルカメラよりもすごく覚えていました。フィルム写真だと、撮影のときと現像のとき、強制的に2回写真を見ることになる。英単語を覚えるときみたいに、時間をあけて繰り返して見ることで記憶が濃く焼きついていくのを感じたんです。その頃の私は、ただ忘れたくないことを記録するために写真を撮っていました。フィルム写真は、撮りたい理由に合致するものだったんです」。
今この瞬間をずっと見つめていたいと思うとき、忘れたくないと感情が動く。
「高校生活はすごく楽しかった」と話す石田さんは、3年間、教室や友達、学校の風景など、学生生活における日常のなかの忘れたくないと思う瞬間を撮り続けた。そして19歳のときに、高校時代の写真をまとめた写真集『lightyears -光年-』を刊行する。その頃から、写真を介して自分自身を知っていくような楽しさも出てきたという。そして冒頭、現在に戻る。ある意味で自分が投影されていない———。
そのことが今、石田さんが写真を愛する一番の理由となっている。
高校生のときに戻るかのように。“合間”の写真を撮るために1日の撮影を組む
Story 04 / 2025
「何か仕事以外で新しいことをしたいなと思い、4月に、久しぶりに作品撮りをしました。この見開き(上と、下の写真11枚)に紹介している写真はすべてそのときのもの。“その人”を撮りたいという気持ちがあったので、面識のある俳優の中川大輔さんにお声がけをしました。初めましてのスタイリストに『やってみませんか?』って連絡をとったりもして。総勢4人、ちゃんと声が通る範囲の人数で、天気のいい日にドライブしながら撮影しました。全てのタイミングが合うと、いい写真が“撮れちゃう”ことが多い。着替えているときや、偶然見つけたいい場所にぱっと車から降りて撮るとか、むしろ合間の写真を撮るために本筋の撮影を組んでいるような気がします。充実した時間でした」。
Starring:Daisuke Nakagawa
Styling:Hikaru Tanami
Hair & make-up:NOBUKIYO
GENIC vol.75 【My dear, my photography. 】
Edit:Chikako Kawamoto
GENIC vol.75
2025年7月号のテーマは「I love photography ただ、写真が好きで」。
写真は移ろいゆく季節に目を向けることを教えてくれた。
写真は心の奥にしまい込んでいた自分の感情に気づかせてくれた。
写真は自分らしく生きていいよと励ましてくれた。
写真はかけがえのない仲間と巡り会わせてくれた。
写真は素晴らしい世界の見方を示してくれた。
写真から、たくさんのものをもらってきた。
だから、好きな理由はひとつじゃない。