目次
- プロフィール
- 名作写真集が生まれた日
- 『未来ちゃん』一年にわたり、佐渡の少女を島の四季とともに撮影
- ありのままの感情を爆発させながら疾走している姿に感動して、自分もそうありたいと思ったし、そう感じてもらえる作品にしたいと思った。
- かわいいような、ワクワクするような未来がいいなと思って『未来ちゃん』というタイトルに。
- 自由に泣いたり、怒ったり、笑ったり…記憶の奥に眠っていた幼かった頃の気持ちが蘇るような瞬間がいくつもあった。
- オリジナルプロジェクトは、写真家として一番中心にあるもの。
- 『vocalise』 ヨーロッパ各地で撮影された未来ちゃんの特別な夏の旅
- 自分が今何を思って写真を続けているのかを確かめることで、前進するエネルギーになる。
- Photo Book
- 『未来ちゃん』
- 『vocalise』
- GENIC vol.76
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プロフィール
川島小鳥
写真家 早稲田大学第一文学部仏文科卒業。写真集に『BABY BABY』(2007)、『未来ちゃん』(2011)、『明星』(2014)、谷川俊太郎との共著『おやすみ神たち』(2014)、『ファーストアルバム』(2016)、 小橋陽介との共著『飛びます』(2019)、『violet diary』(2019)、『おはようもしもしあいしてる』(2020)、『(世界)²』(2021)。『サランラン』(2025)。第42回講談社出版文化賞写真賞、第40回 木村伊兵衛写真賞を受賞。2025年2月26日~2026年1月25日、ソウル美術館にて個展「サランラン」を開催。
愛用カメラ:Nikon F6
愛用レンズ:35mm
名作写真集が生まれた日
『未来ちゃん』一年にわたり、佐渡の少女を島の四季とともに撮影
ありのままの感情を爆発させながら疾走している姿に感動して、自分もそうありたいと思ったし、そう感じてもらえる作品にしたいと思った。
『未来ちゃん』を撮影した際のMYルール
①一年という期間で撮り終える。
撮り始めたのが雪の降り積もる冬でした。直感的に、一年後の同じ季節までの彼女の変化や成長を追いかけたいと思いました。
②しゃがんで撮影する。
大人が子供を撮影する時に、同じ目線でいることが大切だと思ったから。
③いつでもカメラをぶら下げている。
起きている時は常に、いつ撮りたい瞬間が来ても逃すことのないようにしたかったので。
かわいいような、ワクワクするような未来がいいなと思って『未来ちゃん』というタイトルに。
自由に泣いたり、怒ったり、笑ったり…記憶の奥に眠っていた幼かった頃の気持ちが蘇るような瞬間がいくつもあった。
オリジナルプロジェクトは、写真家として一番中心にあるもの。
「『未来ちゃん』を撮り始めたのは、2009年12月。写真家の松岡一哲さんと二人展をすることになり、子供を撮っていた松岡さんと共通するモチーフを撮ろうと思いました。未来ちゃんが生まれる前からお母さんとは知り合いで、『佐渡島の子供は面白い』と聞いていたのを思い出したんです。そこで佐渡に行ったら、未来ちゃんがいました。もともと写真はドキュメンタリーではないと思っているのですが、『未来ちゃん』も例外ではなく、作品として撮影しています。未来ちゃんという少女に出会った時に、ありのままの感情を爆発させながら疾走している人間の姿に感動して、自分もそうありたいと思ったし、見てくれる人にもそう感じてもらえる作品にしたいと思いました。未来ちゃんは生きるエネルギーに満ち、喜びも悲しみも正直に表現するような世界にいる少女。子供は未来の象徴だと思っているのですが、かわいいような、ワクワクするような未来がいいなと思って“ちゃん”をつけて、『未来ちゃん』というタイトルにしました。『未来ちゃん』を通して伝えたいことは、生きる喜び。佐渡島に一年通い、彼女の家に居候しながら撮影しました。佐渡の四季折々の風景や自然の中で、ハッとする瞬間をいつも待ちながら未来ちゃんと過ごしました。未来ちゃんは自由に走ったり、いきなり面白いことを始めたりするので、シャッターチャンスはいつも突然訪れます。そのスピードに追いつくのに、必死でした。撮影する上で大切にしたのは、未来ちゃんに憧れて、尊敬しているという気持ち。記憶の奥に眠っていた、自分が幼かった頃の気持ちが蘇るような瞬間がいくつもありました。自由に泣いたり、怒ったり、笑ったり…その瞬間を生きたいという、きっと誰もが持っている気持ちです。『未来ちゃん』が大きな支持をいただいたのは、そういった人の心にあるものを元気にするからかもしれません。
毎回作品を作り終えるたびに前回と違うものを作りたいと思うのですが、『未来ちゃん』の後は反響の分だけ、より強くそう思いました。仕事での撮影は別の人との共同作業という要素が強いのですが、オリジナルプロジェクトでは自分がどうしたいか、を中心に考えます。自分が今何を思って写真を続けているのかを確かめることで、前進するエネルギーになります。また、新しい世界、人、自分自身に出会える貴重な機会にもなります。プロジェクトを生み出すきっかけは、日々生きる中で疑問に思ったり、何かにつまずいたりした時に立ち止まって感じたことなどです。『未来ちゃん』以外に印象深いプロジェクトは、苦労したけれどそれが成長になったという意味で、『明星』と『サランラン』でしょうか。プロジェクトは写真集など一つのまとまりとして、完成させたいと思っています。時間が経っても、形として残るので。自分にとってオリジナルプロジェクトとは、写真家として一番中心にあるものです」。
『vocalise』 ヨーロッパ各地で撮影された未来ちゃんの特別な夏の旅
自分が今何を思って写真を続けているのかを確かめることで、前進するエネルギーになる。
「『未来ちゃん』を撮影した一年の中の、夏の時期にヨーロッパを旅して撮影した作品が『vocalise』。vocaliseとは、歌詞のない母音だけで歌われる歌唱法のこと。未来ちゃんが目にした、言葉にする前の新鮮な世界そのものを一冊に綴じています。当時『未来ちゃん』をまとめる時にはヨーロッパの部分は削ったのですが、2024年に『未来ちゃん』の写真集のデザインを一新した際にデザイナーさんと出版社と相談し、一つの作品として本にまとめました」。
Photo Book
『未来ちゃん』
『vocalise』
GENIC vol.76 【名作写真集が生まれた日】
Edit:Satoko Takeda
GENIC vol.76
2025年10月号のテーマは「 撮ることのその先へ This is My Project.」
あなたは「何」を撮っていますか? 自分の表現を説明できますか?
タイトルをつけることができますか?
オリジナルのプロジェクトを持つことは、自分の写真を「言語化」すること。
1つの企画によってまとめられた作品群からは、“作家の声”が聞こえてきます。
あなたも、写真プロジェクトを始めませんか。
一歩進む。撮ることのその先へ。