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【伝えたいニッポンの風景:2】山田悠人

日本には誇るべき素晴らしい風景がたくさんあります。自然が積み重なった絶景や、歴史文化が薫る古き良きまち並み、季節が運ぶ美しい色。ただ目の前に広がるシーンを撮影するのではなく、残し、伝えたい、そんな想いを込めて作品として日本の姿を発信している、4名の写真家に迫ります。
第2回は、ドイツと日本。世界を股に掛け活動する写真家、山田悠人さんです。

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山田悠人

写真家 東京都出身。2013年よりドイツの首都ベルリンに活動拠点を移し、写真家、映像クリエイターとしても活動を開始する。2022年12月には「日本の美しさを世界に」というテーマのもと約4年間にわたり、日本全国47都道府県の風景を、四季を通して撮影した写真集『JAPANISM』を刊行。
愛用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV、Sony α7R IV、Leica SL2-s
愛用レンズ:24- 70mm f2.8、70-200mm f2.8、50mm f1.4

世界に誇るJAPANISM

日本を離れたからこそ気付けた日本の素晴らしさを世界へ

福岡県にある南蔵院の釈迦涅槃像。「"五百羅漢"というたくさんの仏像の後方に涅槃像が写り込む見たことのないような構図が面白い。あえて引きではなく寄りで撮り、奥行き感を表現」。

昨年12月に、世界から見た美しい日本を撮り下ろした写真集『JAPANISM』を刊行した、ドイツ在住の写真家山田さん。遠く離れた外国の地に住むことにより、日本の良さや素晴らしさを再認識するようになったのだそう。
「久しぶりに日本に帰国したときに、最もインパクトがあり圧倒されたのが東京の街の活気やネオンの輝き。それ以来、帰国するたびに東京の夜景や人々を撮影するようになりました。日本に住んでいたときには当たり前だったシーンの素晴らしさに気付いたんです。それと同時に、写真を撮影する際にも、これまでとは違った視点で日本を見るようになり、生まれ育った東京のみならず、日本という国に新たな興味が湧いてきました。そこで、私の好きな日本の美しい風景や文化を世界の人々と共有するため、"日本の美しさを自分の作品を通して世界に伝える"ことをメインテーマに掲げることに」。そうして、日本全国を巡り各地の風景を撮り始めた。

京都の瑠璃光院。「窓の外と机に反射した美しい紅葉を、上下二分割構図で撮影」。

「上の写真と同じ、京都の瑠璃光院にて、上下だけでなく左右も鏡に反射したようなバランスのよい中心構図で撮影。見事に反射した新緑が美しい」。

日本に帰ってくると毎日ワクワクしている

京都の岡崎十石舟。「満開の桜と川を横切る観光船と、背景にある鳥居のコラボレーションがポイント。桜をフレームに見立て、被写体の観光船が中心に来た瞬間にシャッターを切りました」。

「撮影に行った先では、その土地の方々と触れ合うようにしています。移動中の車のラジオもローカルチャンネルにしたり、食事は地元のお店でお店の方やお客さんとおしゃべりさせていただいたり。そこから思いがけないチャンスや、撮影に繋がる貴重な情報を教えていただけることがあるんです。出会いによって、素晴らしい写真を撮ることができているので、感謝の気持ちでいっぱいです。帰国するたびに新鮮な発見や驚きがあり、帰国すると毎日ワクワクしています。このワクワク感こそが、日本の風景を"魅力的に"撮るために必要なことなのかもしれません。今後は日本の伝統的な職人さんや、才能や情熱を注ぎ使命を全うしている方々も撮影していきたいと思っています」。

その土地の人々との触れ合いは思いがけないチャンスを呼ぶ

福岡県北九州市にある河内藤園にて撮影。「この構図で撮影しようとしたら、タイミング良く着物の女性が現れました。画面いっぱいに広がる藤の花と、藤色の着物が見事にリンク」。

長野県の妻籠宿。「限られた期間のみ、光が直線に入るので、その光の線を撮りたかった。囲炉裏に火を入れてもらい、煙が部屋にまわったことで光の線がクリアに見えた瞬間を撮影。差し込む光と囲炉裏のシンメトリー構図に」。

「奈良公園で美しい紅葉と、昔ながらの茶屋を背景に鹿を撮影。構図を決めてしばらくすると、牝鹿が完璧な場所に歩いてきた。広角レンズを使用したことでダイナミックさを演出」。

広島の厳島神社の鳥居を望遠レンズの圧縮効果を狙ったシンメトリー構図で撮影。鳥居と神社を海から撮影したら、見たことのない構図の写真が撮れると思いフェリーに乗車。カメラを持って待ち構えていたら思い通りの瞬間が訪れた」。

埼玉県川越市。「上部に泳ぐたくさんの鯉のぼり(メインの被写体)と下を走る車と自転車(サブの被写体)のコントラストがこだわり。非日常感と日常を表現しました」。

山田悠人 Instagram
山田悠人 Twitter

GENIC vol.66【伝えたいニッポンの風景】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.66

GENIC4月号のテーマは「撮らずにはいられない」。
撮らずにはいられないものがある。なぜ? 答えはきっと単純。それが好きで好きで好きだから。“好き”という気持ちは、あたたかくて、美しくて、力強い。だからその写真は、誰かのことも前向きにできるパワーを持っています。こぼれる愛を大切に、自分らしい表現を。

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