記憶を呼び覚ます人生の記録
瞬間を捉えることにとらわれず焦らずまじまじとスナップするのも楽しい
「蝶々とサナギが蜘蛛の巣に絡まってしまっているところ。皮肉にも夕日のグラデーションが美しくドラマチックでした」。
「私にとってスナップ写真とは、人生の記録のようなもの。自分自身が主体となって、『どんな場所で何をどんな風に見て、何を思ったのか』を記憶するために撮っている気がします。時間が経ってから昔撮った写真を見ると、鮮明にその時の空気や記憶が蘇る感覚が好き。そこには作りこんだ世界ではなく、自分の目で見たありのままが写っているから。また、出会わなければ撮れないので、さまざまな場所へ行きたい気持ちになるんです。スナップ写真といえば瞬間を捉える、逃さないというのが醍醐味なのかなと思うのですが、それにとらわれすぎず、構図を自分なりに考えて焦らずにまじまじと撮影するのも意外と楽しいです。あとは、日常のどこに目を向けるかが大事だと思っています」。
【TIPS 01】スナップといえども良い光が当たる場所をちゃんと探る
カナダでファームステイしていた時。「三人兄弟の末っ子、コーリーが飼っている馬と遊んでいる様子。とても仲が良く、日本ではあまり目にすることの無い光景にトキメキました」。
「撮りたいと感じたら、いつも被写体の周りを1周して、良い光が当たる場所を探ります。そこにある光と、被写体が偶然にも交じりあっているような感覚になった時にシャッターを切ります。スナップ写真というと、そんなにモタモタしていられないという感じかもしれませんが、良い瞬間こそ落ち着いて、良い光で撮りたい。理由は、ものの奥行きを感じたいから。平面的ではなく、広がりや距離感が見える写真を撮るためには、光を上手く利用する必要があると思っています」。
カナダのウェスト・エドモントン・モールで撮影。「光と人物のバランスがとても気持ち良く感じました」。
【TIPS 02】自分なりの観点で物事を見てみる
「大学生のころから通い続けている牧場のお家にて。仏壇の前に大量のトウモロコシが干してある光景が何とも好きです」。
「何を好きなのか、何を大切に日々生きているかなど、そういうことがスナップ写真は特に伝わりやすいのではないかと感じています。撮影者の視点そのものが写ると思うので、広い空間の中でほんの一部分に集中して見てみたり、人と少し違う自分なりの観点から物事を見たりすることで、自然と面白いスナップ写真を撮れるようになる気がします」。
【TIPS 03】とにかくたくさん歩きたくさん出会う!
「夜の公園で出会った野良猫。どこか人間のような立ち姿に思わずシャッターを切りました」。
「歩くのはその土地の匂いや空気を感じるため。出会うというのは経験するという意味で。私自身は、良い写真を撮りたいからということがきっかけでファームステイをしたり、たくさん遠出をしたりするようになりました。何か思い悩んだり、行き詰まったらどこか遠いところに行ってみてください!日常に飽きたら、非日常体験をできる場所に足を運べば良いと私は思っています。とにかくアクティブに動くことこそが良いスナップ写真を撮る秘訣なのでは、と思います」。
野口花梨
フォトグラファー 1999年生まれ、大阪府出身。2022年3月、日本大学芸術学部写真学科を卒業。高校でなんとなく写真部に入部したのをきっかけにカメラを始め、高校時代は地元の職人さんなどを訪ねて撮影・取材を行う。2023年「私が撮りたかった女優展 in PARCO 2019 ~2023」の浦和PARCOでの展示に参加。ポートレートの実力も話題となる。
愛用のカメラ:Nikon Z 6II、PENTAX 645Z
愛用のレンズ:NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、smc PENTAX-FA645 45-85mmF4.5、MINOLTA MC ROKKOR-PF 55mm F1.7
GENIC vol.69【写真家に聞く「スナップの腕をあげる3つの極意」】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.69
1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。