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富士宮でクラフトビールの作り手に会いたい!/伊佐知美の「つながる・友達作り旅」Vol.2

今まで様々な移住者にインタビューしてきた『移住女子』の著者・伊佐知美さん。2021年夏には、GENICの連載コラム「旅するように移住」の番外編として、「移住」をテーマに静岡県富士宮市を訪れていただきました。今回はその続編。「つながる」をテーマに伊佐さんが冬の富士宮市を訪れ、魅力的な富士宮観光を楽しんだり、前回インタビューした移住者のayameさんを再び訪ねたり、新たに友達になりたい!と思っていた人にも会ってきました。 伊佐さんが「何度も行きたくなる」という富士宮市の魅力を、3回にわたりたっぷりお伝えします。
第2回は、クラフトビール醸造所の発起人・深澤道男さんに会いに、富士山の麓、富士宮市「柚野(ゆの)」エリアへ。人との出会いが、その土地への愛着をさらに深めてくれます。

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前回の富士宮市訪問で何度も話題に出た「フジヤマハンターズビール」へ

2021年夏の富士宮市訪問時、ゲストハウスやショップオーナー、移住者など、様々なジャンルの方々に取材させていただきました。その取材中、「あの人には会いに行くの?」と、何度も話題にのぼったのが、フジヤマハンターズビールを運営する株式会社FARMENTの代表・深澤道男さん(以下、道男さん)。
なんでも、フジヤマハンターズビールのクラフトビールはすこぶる美味しく、また道男さんの活動内容も暮らしぶりも粋で格好いいらしい。「富士宮市に根ざした活動をしている人だから、とにかく一度会いに行ってみたらいいよ!」と皆さんが口を揃えてオススメしてくださったのです。
これは絶対に会いに行かねばということで、今回の富士宮市訪問時、アポイントを取って訪問することにしました。

富士宮市の豊かな自然に抱かれた、山の麓の醸造所へ

フジヤマハンターズビールの店舗は、富士宮市内に2ヶ所あります。

1つが、富士宮駅近くの気軽に飲みに行ける「浅間大社タップルーム」。そしてもう1つが、富士宮市街地から15分ほど離れた「柚野(ゆの)」エリアの醸造所「ブルワリーテイスティングルーム」です。今回は道男さんのいる柚野へ向かいます。

柚野は、朝霧高原とはまた違った魅力がある、地元の人に愛される自然豊かな場所と聞き、道中はワクワクが止まりませんでした。

山を越えて柚野に到着すると、越えてきた山の向こうに富士山が見えました。その富士山に見守られるように佇んでいる緑の建物が、フジヤマハンターズビールの本拠地「ブルワリーテイスティングルーム」です。

「こんにちは、ずっとお会いしたいと思っていたんです」と伝えると、少し照れながらも応対してくださったのが、道男さん。

柚野の棚田と稜線が描く美しい景色に見惚れていると、「ここは、富士宮市街地に近いのに、自然の恵みが豊かな里山で、『ちょうどいい田舎』なんだよね」と教えてくれました。

里山の景色を眺めながら、富士宮産のローカルビールをいただける場所

フジヤマハンターズビールは、道男さんを始め、富士宮を愛する農家さんと猟師さんが一緒に作ったクラフトビールブランド。
「ブルワリーテイスティングルーム」は醸造所でもあるため、様々な出来立てのビールを、柚野の里山を眺めながらいただけます。取材当日はとても天気がよくて、鳥が空高く飛び、遠くに富士山まで見えて、贅沢な気分になりました。

コンセプトは、「柚野の里山からいただく自然の恵みを、みんなで分かち合うための、自由でちょっと特別なローカルビール」。
「ちょっと特別」の秘密は、水と原料にあります。水は、富士山から長い年月をかけて湧き出た天然の伏流水を採用。原料は、無農薬で自社栽培した富士宮産の大麦・ホップ・米などの作物を中心に使っているので、富士宮市の自然の恵みをそのままいただいているような味がするのです。

クラフトビールのラインナップは、季節によって原料が変わるため、その時々で異なります。たとえば私が訪れた日のラインナップは、「やぶさめ ライスセゾンセッションIPA」「Mt.FUJI ALE 柚子ペールエール」「年貢 ライスIPA」「斧(ヨキ)ヒノキラガー」「森のたね クロモジセゾン」の5種類。
中でも、私の一推しは「斧(ヨキ)ヒノキラガー」。フタを開けた瞬間に、ヒノキの香りがふわりと漂い、味わいはまるでヒノキをそのまま飲んでいるようなフレッシュさで、驚きさえありました。

また、この日は柚子を収穫したばかりだったそうで、入口付近には柚子がたくさん置かれていました。
これらの柚子は、柚野に生息するミツバチの在来種「ニホンミツバチ」が、柚野に咲く様々な花から集めた香り豊かな「百花ハチミツ」と合わせて、一番人気のクラフトビール「YUNOMURA」に加工予定だそう。出来上がったら、絶対に飲んでみたいフレーバーです。

フジヤマハンターズビールと道男さんが伝えたいこと

フジヤマハンターズビールの活動が始まった背景には、富士宮市の豊かな自然と、そこで紡がれる暮らしの素晴らしさを、次世代に継いでいきたいという道男さんたちの想いがあります。

たとえば、近年は人工林の手入れが大変で追いつかなかったり、棚田の米作りの担い手が高齢化で引退して耕作放棄地が出てきても、若者の手が足りず荒れ放題にするしかなかったり、温暖化で富士宮市の自然環境がだんだんと変わっていったり。富士宮の里山の伝統的な暮らしが時を追うごとに崩れていっているのが現状なのだそう。

けれど、「その現状をただ言葉で伝えても、人にはきっと響かないし、実感も湧かないはずだ」と道男さんは話します。
「であれば、富士宮市で育った作物を使った本当に美味しいビールを飲んでもらって、『このビールの原料は、富士宮産なんだ。農作物や木材、ハチミツなど、こんなのも採れるんだ』と、食を入口として、自然に富士宮市に興味を持ってもらう方が近道だろうと思っている」とのこと。

道男さんたちが、「フジヤマハンターズビール」と名乗り、醸造と猟師の仕事を両立しているのもじつはその一つ。浅間大社タップルームでは、ビールと一緒に道男さんたちのジビエ料理もいただけます。「新鮮なジビエ料理を楽しんでもらうことはもちろん、そのうちの数人でも、なぜ里山で猟が必要か考えてくれたら嬉しい」とも話されていました。

最近では、フジヤマハンターズビールをきっかけに、柚野エリアに移住する若者も少しずつ現れ始めたそうで、道男さんたちの活動の意義深さを感じざるを得ませんでした。

職住一体、自然の暮らしが生み出すプロダクトだからこそ

出会って1時間も経たないうちに、私は、フジヤマハンターズビールの一番の魅力は「道男さんたち自身が、自分たちの暮らしと仕事を愛していること」にあるのかもしれない、と思うようになりました。
というのも道男さんたちは、柚野の土地に誇りを持っていて、かつ柚野での暮らしを心から楽しんでいるということが、取材中に自然と伝わってきたからです。

これからの柚野は、2月に梅が咲き、じゃがいもを植える時期を迎えるそう。3〜4月頃に桜が咲く時期が来たら、ニホンミツバチの巣箱を用意し、養蜂の準備を整えます。そうするうちに、田んぼに水を張る5月がやってきて、数々の農作物の種を蒔き、農家としての繁忙期を迎え、あっという間に手入れに追われる夏になっていきます。
様々な自然の恵みが、季節ごとに目白押しで登場する柚野の地で、自然のリズムとともに幸せに暮らし、収穫した作物を生かしてプロダクトを作り、仲間と分かち合い、その日々のお裾分けをお客様に届けている──。
その螺旋の営みの結果が、フジヤマハンターズビールという結晶なのだろうと感じるようになったのです。
そして、その結晶が富士宮の魅力を凝縮する結果になっているからこそ、富士宮のプレイヤーの多くの人が、「フジヤマハンターズビールを訪ねて、道男さんに会ってみてほしいな」と薦めてくださったのだろうなとも思いました。

この暮らしと仕事が成り立つのは、富士宮市の豊かな自然があってこそ。
「今後は、フジヤマハンターズビールで醸造したビールを飲んで、泊まって帰ることができる宿泊施設をオープンしたい」という夢も語ってくださった道男さん。
きっと、次に富士宮市を訪れたら、宿ができていたりするんだろうなぁ。これからの活動をそっと追いたい、大好きな人がまた一人富士宮に増えた柚野の旅でした。

フジヤマハンターズビール ブルワリーテイスティングルーム (醸造所) 基本データ

<住所>静岡県富士宮市大鹿窪1427
<TEL>0544-66-0399
<営業時間>13:00~18:00
<休業日>月~金
<駐車場>あり(10台)

行き方・アクセス

<電車>JR身延線「富士宮駅」からタクシーで約20分
<車>新東名高速道路「新富士IC」から約22分

フジヤマハンターズビール 浅間大社タップルーム 基本データ

<住所>静岡県富士宮市宮町12-2 いちふくコーポ1F
<営業時間>
※営業日・営業時間は変動あり。Facebook、Instagram(@sengentaisyataproom)を確認ください
金曜 17:00~23:00
土曜 13:00~23:00
日曜 13:00~20:00
<休業日>月~木曜
<駐車場>なし(近隣の駐車場を使用ください)

行き方・アクセス

<電車>JR身延線「西富士宮駅」から徒歩で約8分、「富士宮駅」から徒歩で約16分
<車>新東名高速道路「新富士IC」から約12分

フジヤマハンターズビールとともに寄りたい!富士宮駅近くのカフェ「自家焙煎珈琲店 choricapo」

音楽と猫が好きな店主が営む、富士宮駅近くのカフェ「自家焙煎珈琲店 choricapo(チョリカポ)」。
飲む人のことを思って、一杯ずつゆっくりと淹れてくれるコーヒーを飲む時間は、心が安らぐ癒しのとき。

コーヒーと一緒にいただく素朴な自家製スイーツもオススメ。「レトロプリン」は、早めの時間で売り切れてしまうこともあるとか。その場で焙煎してくれる自家焙煎のコーヒー豆の販売や、店主との穏やかな会話も、お店の魅力です。
地元の人が日常使いで楽しむカフェを訪れるのも、富士宮市の穏やかな暮らし方を垣間見る、一つの方法です。

自家焙煎珈琲店 choricapo 基本データ

<住所>静岡県富士宮市黒田12−1
<TEL>0544-29-7102
<営業時間>水~土 12:00-18:00(LO 17:30)日 12:00-16:00
<休業日>月・火曜定休、日曜不定休
<駐車場>あり

行き方・アクセス

<電車>JR身延線「富士宮駅」からタクシーで約5分
<車>新東名高速道路「新富士IC」から約12分

伊佐知美の取材後記

取材が終わった後、道男さんは、「じつはビールの他に、こんなものもちょうど完成したんだよね」といくつかのプロダクトを見せてくれました。
たとえばそれは、手作り味噌や、「世界で一番美味しいんじゃないかな」と道男さんが胸を張るどぶろく。さらには、フジヤマハンターズビールスタッフの1年が追える特製カレンダーまでありました。
「フジヤマハンターズビール」という名を掲げ、季節ごとに富士宮の暮らしに基づく、様々なプロダクトを作り上げている道男さんたち。その生き方は、まさに「グローカル」という言葉がぴったりで、「これからの暮らしの一つの解」のように感じました。

帰り際、私は自宅のお土産用に、全5種類のビールと出来立てのお味噌を購入しました。自宅でプシュ、とビールを開けたり、お味噌汁を作ったりするたびに、道男さんたちの暮らしを思い出して嬉しくなる日々です。

観光・ワーケーション・移住など富士宮市情報はこちらから

富士宮市観光協会サイト
富士宮市ワーケーション特設サイト
富士宮市移住・定住ポータルサイト

何度も行きたくなる富士宮/伊佐知美の「つながる・友達作り旅」

伊佐知美

これからの暮らしを考える『灯台もと暮らし』創刊編集長。日本一周、世界二周、語学留学しながらの多拠点居住など「旅×仕事」の移動暮らしを経て沖縄・読谷村に移住。移住体験者の声をまとめた『移住女子』の著者でもある。

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