大林直行
写真家 山口県出身。2018年、フリーランスとして独立。人物や風景を中心にさまざまな分野で活動中。 2020年、自身初となる個展「おひか」を開催、写真集「おひか」を出版。2021年、写真集「おひか 濃藍」を出版。
愛用カメラ:PENTAX 67 II、PENTAX 645N II
愛用レンズ:SMC PENTAX SMC 67 105mm F/2.4
ポートレートに投影する自分
「おひか」という一人の女性の姿に自分自身の想いを重ねて
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「写真集『おひか』で、唯一のカメラ目線カット。数回連続してシャッターを切り、最後にふと自分の方を向いた彼女のなんとも言えない表情に惹かれ、表紙に採用しました。 シャッタースピードが遅く、ブレている点もポイント」。
「一昨年、初めての個展を行い、写真集『おひか』を発表しました。その1年後に気持ちを新たに再び撮り下ろしたのが、『おひか 濃藍』という作品です。おひかさんは作品撮りのモデルを探している際に出会い、第一印象で『撮ってみたい』と素直に思えた人です。自然体そのままの佇まいに惹かれたのですが、そんな風に思える人はなかなかいません」。
先の見えない不安や閉塞感、それとは対照的に静かな美しさや生命力を表現したかった
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「湖にポツンと浮かび、空を見上げる。何もない、何も考えない、という世界観を撮りたかったのかもしれません」。
「写真を通して自分の眼差しを伝えたいという想いがあるのですが、特にポートレートに関しては自分自身を投影したい気持ちがあります。おひかさんの真っ直ぐな眼差しに心を惹かれ、撮りたいと思った時点で、この人なら確かに自分を投影できると感じました。コロナ禍で先の見えない不安やモヤモヤとした閉塞感などを踏まえ、それとは対照的な静かな美しさや生命力を表現したいと思い、その気持ちをおひかさんという一人の女性の姿に重ねています」。
想いを伝えるために大切なのは作りすぎず、素直な眼差しで撮ること
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「水をかき分ける手先に、美しさを感じて撮影」。
「個展会場で『彼女を通してあなたが確かに写っている』という感想をいただいたのですが、一番うれしい言葉だったかもしれません。誰かに話すこと、誰かに見てもらうことで、自分や自分の写真とは何かを考えさせられ、気づかせてもらっているような気がします。僕にとって写真とは、“自分自身”。想いを伝えるためには、作りすぎずにそのままの状態を素直な眼差しで撮ることが大切だと思っています」。
彼女の真っ直ぐな眼差しに惹かれ、この人なら自分を投影できると思った
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「逆光の中に浮かび上がる横顔に惹かれました」。
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「“静か”を表現するために選んだ古民家で、シルエットを意識して撮影」。
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「振り向くと、静かに佇むおひかさんの姿が美しかった」。
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「初めてモノクロフィルムでの撮影に挑戦した時の一枚。おひかをそばで見守っている、というイメージで撮りたかったからか、『おひか』では表紙以外にカメラ目線はありません」。
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「斜めに流れる肩のラインを意識して撮影」。
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「うなじに滴る水に生命力のようなものを感じて、シャッターを切りました」。
GENIC vol.61 【写真家が心に抱く、それぞれのテーマ】
Edit: Satoko Takeda
GENIC vol.61
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テーマは「伝わる写真」。
私たちは写真を見て、何かを感じたり受け取ったりします。撮り手が伝えたいと思ったことだけでなく、時には、撮り手が意図していないことに感情が揺さぶられることも。それは、撮る側と見る側の感性が交じり合って起きる化学反応。写真を通して行われる、静かなコミュニケーションです。