KYON.J
中国広東省生まれ、2008年に来日。広告業界で働きながら、トラベルフォトグラファーとして活躍中。映画『LIFE!!』に心を打たれ、インドア派からアウトドア派に。目の見えない子供たちに光をもっと届けるための寄付プロジェクト「Save the Sight, Share the Light」にも取り組んでいる。
愛用カメラ:Sony α7R III
愛用レンズ:Sony FE 24-70mm F2.8 GM/Sony FE 70-200mm F2.8 GM OSS
旅とは…❝未知の世界を探検すること。❞
─旅の写真を通して表現したいことは?
行きたくても行けない人に、その景色を見せる。
今まで見たことのない光景を見て、撮影して、その場所に行きたくても行けない人たちにその景色を見せる。初個展を開催した際、私は在廊中に出会った、足を痛めた老夫婦の言葉が今でも忘れられません。「私たちはこんな場所にはもう行けない。けれど、ここに飾られた写真を見ていると、まるで世界を旅しているような気がして嬉しい」。その言葉を聞き、私は、行きたくても行けない人たちの代わりに、行ったことのない世界中の美しい場所を訪ね、レンズに映る一瞬を届けたいと、改めて強く思いました。その言葉が今でも私を支え、どんなに遠くても寒くても、環境が厳しくても、まだ見ぬ世界を旅して撮影したいというモチベーションにつながっています。
─今までのベストトリップは?
マイナス38度のロシア。
すべてが自分にとっては新しかった。見たことのない光景、感じたことのない世界、人間のちっぽけさと大自然の雄大さをひたすら実感しました。ロシアで撮影した氷の写真は、気に入っている1枚。
そこに行かないとまず出会えないし、毎年氷の形も違う。その日、そのタイミングでしか出会えない構図だったりする。
そういうものに「運命」を感じるときがあります。旅していることを切り取るのではなく、旅しているところで出会った奇跡的な瞬間を切り取ることにこだわっています。
─苦労した思い出がある1枚は?
苦労は特に感じない。
好きなことだし、撮るための努力をしただけ。たとえば万里の長城のこの写真は、もともと内モンゴルで撮影していたときに天気予報で北京に小雪が降ると聞いて、急遽スケジュールを変更。8時間バスに乗って夜中に長城のふもとにたどり着き、朝3時半からひたすら果てしない長い階段を絶望のなか上り続けた。重たい機材を背負いながら滑る階段を上るのを、もう二度とごめんよって思いながら、重たい機材を背負いながら滑る階段を上るのを、もう二度とごめんよって思いながら、また次も次もと何度も上ってしまった(笑)。
─思わずシャッターを切りたくなる瞬間は?
予想外のことが起きるとき。
たとえば予想外の光がどこかに当たって、もともとの普段の風景がそれによって輝き始め、世界がいつもより美しく感じた瞬間とか。
GENIC VOL.54 【Traveling with Camera】
Edit:Satoko Takeda
GENIC VOL.54
「My Identity with Camera.写真を通して伝えたいこと」を大特集。
国内外の表現者やクリエーターたちが、レンズを通して切り取りたい世界、写真という表現を使って伝えたいこと、にたっぷり迫りました。