【ぽんずのみちくさ Vol.25】直線コースから落っこちて見た景色

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【ぽんずのみちくさ Vol.25】直線コースから落っこちて見た景色

大学受験に失敗して、福岡の予備校に通っていた。

「浪人してました」というと、何かいけないことを聞いてしまったように申し訳ない顔をされたり、気の毒がられたり、なぜか励まされたりすることもある。

学校という場所への感情が人によって千差万別であるように、浪人に対するイメージや思い出も人それぞれだと思うけども、私にとって浪人時代の記憶というのはわりと悪くない部類、というか、恥ずかしがらずに言うならば「青春」のフォルダに分類されている。

私だって、望んで失敗したわけではなかった。薔薇色の大学生活を夢見て日々勉強していたのだし。

一度「浪人」という選択肢を選んだ時点で、それまで「よーいどん」で生きてきた人生から一歩遅れることになる。 "みんな" で小学校に入った日からずっと同じタイミングで生きてきた友人たちと、いきなり歩調がずれる。目的のゴールにたどり着ける保証のないまま、「まわりみち」ライフがスタートした。

とはいえさっきも書いたように、私にとっての浪人生活はそう悪いもんじゃなかった。何より、目指すものがとてもハッキリしているのでわかりやすい。目指す数字、つけるべき力、覚えるべき項目。どれも明確だ。悩みがあるとはいえ、それらは具体的な悩みだった。具体的な悩みには、たいてい具体的な答えがあるものだ。

浪人仲間だってできた。眠くなりそうな授業の前には一緒に缶コーヒーを一気飲みし、授業中にどちらかがうとうとしかけたら、先生にバレないようにくすぐって起こし合っていた。

実際に浪人してみて、わかったことがあった。歩調が変わっても人生は終わらないし、意外といい景色を見られるかもしれないということだ。

こんなことを思い出すのは、私にとって(そして多くの人にとって)の2020年が、目眩がするほど「まわりみち」な年になったからだ。


去年思い描いていた直線とは、ほど遠い場所に来てしまった。ここはどこだろう。どこへ行けるだろう。目指していた場所から、どのくらい遠くまで来てしまっただろう。今なにをしたらいいのかはわからない。受験勉強と違ってやるべきことはわからないし、ズバッと教えてくれる先生もいない。

ただ、今この状況だからこそ見える景色もあるはずだ。今は美しいと思えなくても、それが望んだものでなくても、「案外あれは悪くなかった」と言える日がいつか来るかもしれない。来てほしい。来るように生きる。

ぽんず(片渕ゆり)

1991年生まれ。大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いから退職。2019年9月から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。

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