目次
プロとして活躍するフォトグラファーたちの軌跡
<BIOGRAPHY>
20歳 インターンとしてフォトグラファーの仕事を経験
24歳 映像アシスタントとして制作会社に入社
25歳 退職し、フリーランスの映像アシスタントに
27歳 自身初の写真展を開催。DOP/映像カメラマンとして初仕事を経験
30歳 独立
31歳(現在) 広告、ミュージックビデオを中心に活動中
「STERNBERGの仕事は、ムービーのクリエイティブチームでスチールを撮っています。毎回セットの発想に映像的な要素が表れていて、このときは4×8(1219×2438mm)サイズの鏡を12枚、大道具さんにつくってもらいました。草原までみんなでかついで運んで、どう配置したら映り込みが面白くなるかを模索。皆でわいわい、すごく楽しかったですね」。
まるでスポーツ選手のように、映像の撮影ではゾーンを体感するときがある
「朝焼けが美しい早朝の時間帯を狙って、海を臨む崖の上での撮影。このときも、鏡を使った撮影のときと同じチームでつくり上げていて、僕はどちらもフォトグラファーとして参加しています。この仕事はもともとスチールのみですが、映像と写真、一つの仕事でどちらも任せていただけるのが理想で、最近はそうした機会にも恵まれるようになってきました」。
「フィルムディレクターのグラフィックイメージをどう映像で演出するか、ロケ地からハウススタジオ、白ホリのスタジオまで、撮影候補となる場所に足を延ばしてはその場所で試し、照明技師と一緒になって、かなり試行錯誤してこの情景を生み出しました。最終的にスタジオ撮りで、夕景のようなグラデーションもライティングで出しています。アプローチの仕方が新鮮で、印象に残る仕事の一つ。すごく綺麗に表現することができ、大好きな作品でもあります」。
Director of photographyの略称である「DOP」は、映像において、撮影にまつわるすべての責任を負う人物で、現場でカメラを回す「映像カメラマン」の仕事も含まれている。
「仕事の依頼は、基本的にフィルムディレクター(映像監督)から来ます。ディレクターがつくった企画やイメージする表現を、どう実際の映像に落とし込んでいくか、というのが僕の仕事。撮影時だけでなくセットの部分における役割も大きくて、ロケハンや照明技師のアサイン、また映像では膨大にもなる撮影機材や機器の選別と手配もDOPの仕事になります」。
写真展をして、カメラマンとしてやっていけると思えるようになった
2019年に開催した、初の個展「SHUHO TERAMURA PHOTO EXHIBITION」で展示した作品。「当時はまだアシスタント業しかしていないようなときで、なんかもやついていたんですよね。このままじゃダメだと思って、まったくノープランのなかで、お金を払って、半年後の写真展の場所を押さえた。それからさてどうするかって考えて、スケートボードがもともと好きだったので、その流れでサンフランシスコに行った。展示に向けて、スケーターをはじめ、興味が引かれたものをフィルムカメラで好きに撮っていきました。展示は5日間だったんですけど、見に来てくれた人たちの声とか、写真もたくさん買っていただいて、すごく心を動かされた。当時の全財産をはたいてやったんですけど(笑)、写真であっても映像であっても、“カメラマンでやっていく”と決意することができました」。
今が一番楽しい。6年間のアシスタント業時代が、確実に今につながっている
「写真よりも、自由度が高いのが映像。映像にはこう撮ればいいっていうものが存在していなくて、被写体が違えばアングルも全然変わってくるし、つながりを意識する分、カットごとにアプローチも変えていく必要がある。綺麗なところをカチッと撮ればいいというものではないから、つくり方は無限です。映像特有の取り組み方みたいのはあると思いますね」。
まるで文化祭のような現場が楽しみで仕方ない
一聞すると、難しく雲の上の職業のようにも感じられるDOPだが、寺村さんはどうやってその道を開拓したのか。
「一般的には、アシスタント業からはじめていくようになります。派遣みたいな形で、いろいろな現場に赴く。僕は6年間のアシスタント業時代に、機材の知識を深め、大きな現場を数多く経験することで自分の引き出しを増やしていくことをしました。同時に、正直ちっともお金にならないような仕事でも、なんならノーギャラでも、知人から声をかけられた撮影は必ず引き受け、自分の作品を増やしていくということをしていました。アシスタント業も自分の撮影もがむしゃらにやっていくうちに人脈も広がって、だんだん仕事の依頼が増えていった。今はもう、天職だと思っている。本当に楽しい仕事です。現場は毎回新しいことへのチャレンジで、飽きません。みんなでつくり上げるような現場だと、しょっちゅう喧嘩みたいにもなるけれど、いい作品を目指してちゃんと議論してつくり上げていく様は、まるで文化祭のようだと感じます。そして僕個人でいうと、映像の撮影中、ゾーンに入ることがある。集中力が極限まで高められて、これから撮る画が脳裏に鮮明に見えるような感覚を味わう。緊張感はあるのだけれど、どこを撮っても楽しくて仕方がないという状態。DOPとしてもっともよろこばしく、充実感を味わえる瞬間です」。
寺村周歩 プロフィール
寺村周歩
DOP/映像カメラマン/フォトグラファー 1992年生まれ、三重県出身。学生時代にインターンとしてフォトグラファーの仕事を経験。2016年、映像アシスタントとして制作会社に入社し、ムービー撮影における機材の知識を習得。その後フリーランスとなり、アシスタント業を継続するなかで多くの撮影現場を経験。2019年に自身初となる写真展「SHUHO TERAMURA PHOTO EXHIBITION」を開催。2021年、独立。広告やミュージックビデオを中心に活動中。
GENIC vol.70【プロとして活躍するフォトグラファーたちの軌跡】
Edit:Chikako Kawamoto
GENIC vol.70
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