大川優介
株式会社TranSe創業者兼取締役/動画クリエイター 自身のSNSにてCinematic/VLOGやチュートリアル動画を発信。フォロワー数は延べ30万人を超え、自社が運営する日本最大の動画オンラインコミュニティ「OneSe」には累計1万人が参加。より多くの方へ「動画という選択肢を」というミッションのもと、国内外の大手メーカー各社とのタイアップで映像の魅力を発信しつづけている。2021年、イメージングブランド「kyu」を設立。
Q.動画の画質を上げるために大切なこと、教えてください!
A.スペックよりも断然大事。それが「光」
斜め45度の光が、被写体を際立たせる
「斜め45度の光は、色の再現性が高く、またディテールまで表現してくれます。そのことは、広い風景でも被写体に寄ったものでも同様に言えます」。
「動画の画質をよくするには、4Kやビット深度、RAW撮影など機材の設定や性能ももちろんありますが、僕がそれ以上に大切だと思っているのは、“太陽の光”です。日本と、ハワイや南半球にあるオーストラリアで撮った動画とでは、動画の仕上がりがまったく違って見える。それも光によるところで、光は動画の印象を大きく変える大切な要素なんです。中でも、被写体に対して斜め45度に当たる太陽の光は、被写体の色の再現やディテール、輪郭をきれいに美しく表現してくれます。青空が広がる晴れた日は、動画撮影に最適。逆に難しいのは、中途半端な光、つまり曇りの日です。光源がない動画はのっぺりとした印象になりがちなのです。機材のスペックがものを言うことになるのは、難しい条件下でも撮影しなければならないような時。ただそもそも、画質の良し悪しって見た人の印象で決まりますよね。印象的な動画を撮るためには、スペックに走るよりも前に、まずはいい光を見つけることから始めてみるのがオススメです」。
「とはいえ、斜め45度の光じゃないといい動画が撮れないというわけではありません。雨の日や逆光は、その情景ならではのドラマティックな動画を撮ることができます」。
光の条件がよければ、iPhoneでも十分撮れる!
「光の条件がよければ、スマホでもハイスペックな機材と遜色なく撮ることができます。これはiPhone 13 Proで撮影していますが、葉脈などディテールまで鮮明に、また葉の緑色も美しく再現されています。これはまさに、光によるもの。被写体以上によい光を見つけることができれば、スマホでも十分、画質のよい動画を撮ることができます」。
光が違うだけで動画は全然違う印象になる。だからまずは、天気や時間帯を意識してほしい
日没前の夕暮れどきに、東京の街をヘリコプターから撮影している。斜陽を浴びたビルは一つひとつが輪郭をもって際立ち、全体が印象的な光景として映し出されている。
混乱解消に!画質を左右するキーワード
・解像度
記録画素数のこと。最近のカメラの多くは4K(3840×2160)撮影に対応。4Kの映像は鮮明で美しく、写真のような解像感を得られる一方、再生・編集時のPCへの負担はそれだけ大きくなる。8K(7680×4320)が撮れるミラーレスカメラも登場している。
・フレームレート
1秒間の動画が何枚の画像で構成されているかを示す単位のことで、数値が大きいほど滑らかな動きの動画になる。30p(30fps)であれば1秒間に処理されるフレームの数は30枚、60p(60fps)であれば60枚で構成された動画となる。
・カラーサンプリング
人の視覚で弱いとされる色情報(色解像度)を間引くことで、見た時の品質を下げることなく、少ないデータ量で記録を行う処理のこと。4:2:2は水平方向に、4:2:0は水平に加え垂直方向に、半分に色情報を間引く処理をしている。
・ビット深度
1ピクセルに対するデータ量のことで、映像の階調性につながる。10bitは8bitよりはるかにきれいなグラデーション表示が可能だが、データ量もかなり大きくなるので、編集にはハイスペックなPCが必須となる。
・Log撮影とRAW撮影
いずれも記録方式のこと。RAW撮影はイメージセンサーに映る情報をほぼそのまま保存する方式で、編集前提の記録方式。編集の自由度が最も高い。Log撮影はRAWから色調、彩度、階調を処理した圧縮方式となるが、撮って出しに比べると色や明るさの編集領域は高く、より細かい補正が可能となる。
スペックにこだわりたい場合はフル装備で挑んで!
「僕は基本RAWで撮影し編集で追い込んでいますが、それは自分の動画を、多くの人が憧れの対象として見る、ロールモデルとして存在させたいから。性能を高くしていこうとすると、当然そのリターンも大きくなるので、そこまで目指したいという方は、まずは編集に使うPCをフルスペックにすることから始めましょう。例えばMacBook Airを使っていて、それでRAW撮影の編集をしようとしても、動作も遅く面倒なばかりで、難しいというのが現実です」。
GENIC vol.67【撮影と表現のQ&A】大川優介/Q.動画の画質を上げるために大切なこと、教えてください!
Edit:Chikako Kawamoto
GENIC vol.67
7月号の特集は「知ることは次の扉を開くこと ~撮影と表現のQ&A~」。表現において、“感覚”は大切。“自己流”も大切。でも「知る」ことは、前に進むためにすごく重要です。これまで知らずにいたことに目を向けて、“なんとなく”で過ぎてきた日々に終止符を打って。インプットから始まる、次の世界へ!
GENIC初のQ&A特集、写真家と表現者が答える81問、完全保存版です。