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旅のエキスパート5名が綴る、もう一度行きたい東南アジア <第5回>“英語が話せない私”を変えてくれた国「フィリピン」/伊佐知美

少しずつ日常が戻り始めた今。しばらくお休みしていた国外への旅を再開する人が増え始めています。今回は、久しぶりの旅先に悩む人にむけて、気軽に行ける東南アジアの国々のなかから、旅のエキスパートたちが「もう一度行きたいあの国」への想いを綴ります。
また、これからの旅に欠かせないサスティナブルツーリズム(持続可能な観光)についての自身の取り組みや考えも教えてもらいました。
第5回は、世界二周を経験した編集者でありフォトグラファーでもある伊佐知美さんが、7000以上の島々で構成されるフィリピンでアイランドホッピングを楽しみながら、英語の語学留学で自分をアップデートした国「フィリピン」を語ります。

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旅のエキスパート5名が綴る、もう一度行きたい東南アジア<ベトナム・ラオス・タイ・インドネシア・フィリピン>

“英語が話せない私”を変えてくれた国「フィリピン」

海を見ながら英語を学ぶために、フィリピン・セブ島の語学学校へ

フィリピン・セブ島近郊の海にて

フィリピンを初めて訪れたのは、2019年4月のこと。2016年4月に開始した「旅×仕事」の世界放浪旅からちょうど3年が経ち、「自分をアップデートしたいな」と考えた私が、再出発の地に選んだのがフィリピンだった。
具体的には、語学の習得。もっと英語を自由自在に話せる私になるため、2週間のセブ島語学留学の旅に出た。フィリピンは、7000を超える島々で構成される、美しい海と自然を有する国であると同時に、旅人の間では有名な「英語の語学留学先のベストデスティネーション」でもある。

私が選んだセブ島の語学学校「ブルーオーシャン」の敷地内にあるプール

理由は、英語が公用語であることはもちろんだけれど、割とリーズナブルな費用で、朝から晩までマンツーマンの英語授業が受けられるから。私は朝7時から夜20時まで、1日9コマ(!)の英語授業を受けつつ、寮では外国からやってきた生徒との相部屋を希望したため、滞在中は本当に英語漬けの日々。

私が選んだ語学学校は、リゾートホテルの敷地内にあり、部屋はなんとリゾートホテルの上層階。朝起きたらフィリピン海一望のこの景色……!

滞在中は英語で夢を見るようになり、初めて「頭で考えるよりも先に英語が口をついて出てくる」体験ができて、卒業後は英語への苦手意識が払拭された。その後の、仕事で英語を使えるようになるまでの道のりを整えてくれたのは、間違いなくフィリピンだ。

滞在先のリゾートホテル屋上から見た朝日。海沿い以外にも、都会のマニラや、緑豊かな環境で学べる高原エリア・バギオなども語学留学先としてとても人気がある

またフィリピンは、社会人が仕事を辞めずに短期の語学留学をするメッカでもあるらしい。実際現地で、1〜10日程度の長期休暇を使って自分をアップデートする「語学留学×リゾート旅」に挑戦中の人に多く出会ったし、私も似たようなものだった。
今なら、「午前 / 午後のみ授業スタイル」を選んだら、リモートワークとの両立や、ワーケーション的滞在も可能になるんじゃないかなと思う。
若い人以外にも、孫がいる年齢の女性が、お一人で「語学留学するのがずっと夢だったの」とフィリピン語学留学を選ばれて、滞在を楽しんでいたのもとても印象に残っている。「いくつになっても、夢は叶えていい」。当たり前のように響くこの言葉に、リアリティを与えてくれたのもここフィリピンだった。

島ごとに表情が異なるフィリピン。「アイランドホッピング」で、海の美しさを味わい尽くす

フィリピン海に浮かぶ小さな島と、フィリピン特有の両翼のある船の景色

もともと、南国の気候と海と島の景色が大好きな私。フィリピン語学留学のいいところは、授業以外の時間で、気軽に島暮らしの雰囲気と、隣り合わせの大自然を味わえる点だった。
たとえば私のお気に入りの過ごし方は、週末に「アイランドホッピング」を楽しむこと。「アイランドホッピング」とは、丸一日かけて複数の島々を船で巡るという、7000以上の島を持つなんともフィリピンらしいアクティビティ。

私が参加したアイランドホッピングツアーで、最初に訪れた島の浜辺にて

多島国ゆえ、視界にずっと「たくさんの島々」が見えている状態で進んでいくので、つねに島が近くなったり遠くなったり、景色に飽きるということがない。しかも、フィリピンの船は水面が触れるほど近くにある仕様なので、運行中は水しぶきに触れたり、時折エンジンを止めて広い海に足を浸けてパシャパシャしたりと、なんだかチル。
たどり着く島ごとに、特徴が異なるのもおもしろい。たとえば、今日の一つ目の島は、とにかく白い砂浜と透き通るコーラルブルーの海が美しい、泳ぐのに最適な島。二つ目の島は、船着場から色鮮やかな熱帯魚がたくさん目視できるほど、シュノーケルに適した場所。三つ目はダイビング、四つ目はサップ、その次は木陰が多いから浜辺でバーベキュー!などなど……。海を舞台とする遊びが詰まった、宝箱みたいな一日が過ごせてしまう。
フィリピンのさまざまな海の美しさを全身で感じ続けると、段々と日頃の悩みが小さく感じられ、帰着する頃には、悩みが風といっしょに遠くに流れていってしまったような気持ちになる。
私にとってフィリピンは、自分をアップデートしてくれる学びの島であると同時に、気持ちをフラットな状態に戻してくれる、大切な原点みたいな場所なのだ。

ちなみに、東南アジア最後の秘境と呼ばれることもある「エルニド」があるパラワン諸島も、今後訪れたい旅先のひとつ。フィリピンは近年、経済やアート、NFTや投資などの世界の発展も著しいそうで、さまざまな興味が尽きない

「私なりのサスティナブルツーリズム」伊佐知美

セブ島の海沿いに咲いていた花

先日仕事で訪れた国では、サスティナブルと声高に言わずとも、環境に配慮した行動が想像以上に根付いていて驚いた。たとえば、マイボトル所持は当たり前で、街中に多くの無料給水所があるため、ペットボトルとはほぼ無縁。販売されている日焼け止めは、すべて「リーフセーフ」と呼ばれるサンゴ礁に有害な成分が入っていないもので、ホテルによっては無料で自由に使えるところもあった。
国内外を問わず、最近旅をしていて感じることは、「ホテルの無料アメニティがとにかく減ったな」ということ。歯ブラシやスリッパ、ブラシなどのアメニティは部屋備え付けでない場合が多く、希望したらもらえるスタイルのホテルでも、使い捨てのアイテムを極力減らしている印象を受ける。また、中期滞在者向けには「シーツやタオルの交換は毎日でなくてもいいですよ」という意志を表明する「エコカード」なるものの説明があったり、地産地消のローカルフード採用に力を入れているホテルが目立ったりと、数年前に比べて国内でも「サスティナブル」を意識する取り組みに出会うシーンがとても増えたように思う。

セブ島の日常風景

私は旅先で「その土地の日常のリズムを感じる時間」が好きだ。それぞれのローカルが育んできた昔から続く暮らしや風景は、二度と再現できない貴重なものという気持ちがある。だから、「サスティナブルツーリズム」で大切だと言われる「伝統文化や生活様式を守る」ことには大賛成で、そのための一歩は「知ること」だと思っている。
マイボトルを持ったりリーフセーフの日焼け止めを使ったり、アメニティを持参したり、シーツの交換を減らしたり、旅先の歴史や暮らし、食文化に興味を持って学んだり。旅中で気付いた小さな取り組みを、旅先に限らず、日々の中で当たり前のように実践したいと思っている今日この頃。

東南アジア観光情報サイト

伊佐知美

Somewhere&Here inc. 代表 / Editor, Writer, Photographer
「旅と暮らしを行ったり来たり。そうやって過ごす日々から紡がれるもの、すべて」。「軽やかに生きる」をテーマに、旅のあるライフスタイルを追いかけて数年。三井住友、講談社、ITベンチャーWasei勤務の後、独立。日本一周、世界二周、四カ国の語学留学、無拠点生活など長年の旅暮らしを経て、2022年に沖縄にて起業。著書に『移住女子』(日・韓)。

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