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【This is my Journey. 我が旅をゆく。:2】根本絵梨子

好きなものがある。好きな旅がある。好きな写真がある。
自分なりの視点で旅を追いかけ、自分らしく旅を表現する4名のフォトグラファーに、こだわりの詰まった「我が旅」を紹介していただきました。
2人目は、フォトグラファーの根本絵梨子さんです。

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山の美しさに惹かれて

山を始めたことで旅の目的地や旅の仕方が広がった

ネパールのツェルゴリ(4980m)、ランタン谷トレッキング最高地点で。
「初めての海外トレッキング、初めての4000m超えで緊張とワクワクした気持ちでいっぱいだった。サブ機として持って行っていたCanon EOSのフィルムカメラで撮影。Hasselbladで撮った写真は光線漏れで、真っ白にしか写っていなかった。このころのKodak PORTRA 160の色味は、ヒマラヤの色味にとても合っていた」。

白馬山荘で働いているときの休憩時間に、Hasselbladで。
「毎日みんなでコーヒーを飲む時間が当たり前で、それがとても贅沢だった。そんな日常を残しておきたくて、小屋ではスナップもよく撮った」。

秋に小屋を閉める作業を手伝っている、平標山の家で。
「1年の小屋の仕事が終わってみんなで宴会。こういった温かないい時間を残しておけるのもカメラの良いところ。こういう暗いときは完全マニュアルのHasselbladやLeica M3が撮りやすい」。

北海道・白雲岳避難小屋付近。
「縦走中に振り返ると紅葉がとても綺麗だった。色のグラデーションと空とのバランスを考えてシャッターを切る場所を決めた。コロナの影響で海外に行けていなかった時期だったけれど、日本離れした景色を見てとても興奮した北海道のひとり旅」。

白馬山荘で働いているとき。
「夕方は撮影チャンスが突然巡ってくるので、休憩中や退勤後はいつもカメラを2台くらい持ち歩いています。雷が遠くで光って、下では嵐のように雨が降っているけれど、雲の上は天国のように美しかった」。

アルゼンチンのラグーナ・デ・ロス・トレス。
「フィッツロイが朝日に当たるのを見たくて、夜中にトレッキングを開始」。

山に差す光や雲の淡い色を残したくて中判フィルムカメラを手に入れました

年間70日前後は山や森での撮影、そして北アルプスの白馬山荘で各1カ月、3度にわたり働いたこともある根本さん。なぜそこまで山に魅了され、写真を撮りたいと思うようになったのでしょうか?
「父親が山好きで、1歳くらいから山に連れて行ってもらっていました。10代になると行かなくなっていたのですが、仕事を始めて心身ともに疲れてしまったときに、幼馴染に誘われて八ヶ岳に縦走へ行ったのをきっかけに山が好きに。頭の中がリセットできたり、リフレッシュできたりしているうちに、だんだんと山の美しさに惹かれていきました。そして、ちゃんと写真でも残したいなと思い、中判フィルムカメラを手に入れ、山小屋で働いたり海外のトレッキングに行ったりするようになったんです。仕事以外で山に行くときは必ずフィルムカメラを持参しますが、大体持って行くのは2~3台、とくにHasselbladがお気に入り。山は朝と夕方がとても美しいのですが、光の細かい描写が美しいHasselbladは朝や夕方の光、雲や淡い色などもちゃんと写してくれます。最初は休みの日に山に通っていましたが、そうすると天気予報が外れて思った天気ではなかったり、そもそも天気が悪くて登ることもできなかったりで。"毎日いればどんな時でも撮れるじゃない!"と気づいて山小屋で働くようになりました。6年ほど前から雪山も始め、最近はバックカントリースキーも始めたので、冬の行動範囲が増えました。撮ってみたいのは、北海道の大雪山。2021年の秋に一人旅に行ってとても良い景色に出会ったから。冬の大雪山を撮ったらぜひ展示をしたいと思っています」。

根本絵梨子

フォトグラファー 1988年生まれ、群馬県出身。富山大学芸術文化学部で建築デザインを学んでいるころにフィルムカメラに夢中になり、大学を休学してオーストラリアに留学し写真の専門学校に通う。代官山スタジオでスタジオマンを約2年、その後アシスタントを経験。
ファッション、ポートレートを中心に活動開始。2015年ごろより山に行くようになり、中判のカメラを持ち始める。現在は山小屋で働いたり、海外のトレイルにも足を運んだりしている。
愛用カメラ:Hasselblad 500C/M、Leica M3、Leica minilux
愛用レンズ:Hasselblad Planar C 80mm F2.8、Leica Summicron 50mm F2/35mm F2

根本絵梨子 Instagram
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GENIC vol.68【This is my Journey. 我が旅をゆく。】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.68

10月号の特集は「旅と写真と」。 まだ見ぬ光景を求めて、新しい出逢いに期待して、私たちは旅に出ます。どんな時も旅することを諦めず、その想いを持ち続けてきました。ふたたび動き出した時計を止めずに、「いつか」という言葉を捨てて。写真は旅する原動力。今すぐカメラを持って、日本へ、世界へ。約2年ぶりの旅写真特集。写真家、表現者たちそれぞれの「旅のフレーム」をたっぷりとお届けします。

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