セソコマサユキ
編集者、カメラマン、ライター 神奈川県出身。編集チーム「手紙社」に参加後、2012年6月に独立し、自身のルーツである沖縄へ移住。媒体を問わず、企画・編集、執筆、写真を通して沖縄の魅力を独自の世界観で表現し、発信している。ちいさなメディア&コミュニティ「SQUA」主宰。沖縄CLIP編集長。「あたらしい沖縄旅行」(WAVE出版)はじめ、著書多数。11月にオープンした沖縄のクラフトや雑貨を扱う「島の装い。STORE」のブランディングディレクターも務める。
愛用カメラ:CANON EOS R5
愛用レンズ:Carl Zeiss Planar T* 1.4/50/Vario-Sonnar 3.5-4.5/28-70、Canon EF24-70mm F4L IS USM
心が動いたとき
沖縄本島北部の名護という町に泊まりに行ったとき。
「晩ご飯を食べて、ホテルまでの帰り道にビーチを散歩。暮れていく風景がとても綺麗で、息子二人の歩く姿が映画のようでした」。
写真を撮るときに大事にしているのは、「心が動いたときに撮るということ。写真は自由。”こうあるべき”に囚われないようにしています」とセソコさん。
ありのままの日常を撮りたい
「どんな写真でもそうですが、心が動いたときにシャッターを切ります。かわいいなと思ったときとか、楽しいときとか、切ないときとか。ただただありのままの日常を撮りたいと思っています。大人になると時間の経過を感じにくいこともありますが、子どもたちを見ていると時間はあっという間に過ぎていくし、二度と戻れないということを強烈に実感します。だから写真に残すということは、昨日とはまるで違う今日を愛おしむように切り撮って、心なのか頭なのかわからないけど、どこかにそっとしまっているような感覚です。いつか振り返ってみたとき、撮影時にタイムスリップできるような、感情や情景が蘇るような写真が撮れていたらいいな、と思います」。
「我が家はベッドを二つ並べて使っていて、掃除のときなどに動かします。そうすると子どもたちがやってきて、ジャンプして大騒ぎがスタート。躍動感が出るといいな、と思いながら撮っています」。
「夕ご飯の水餃子が美味しくておかわりしようと思ったら、先に弟に食べられて、悔しくて大泣きする兄。かわいかった!」。
伝えるために効果的な視点に気づける自分でありたい
編集と文、写真で「伝える」ことを職業にされているセソコさんが、写真を通して伝えたいことは?
「見る人の心を動かしたいと思っています。おいしそうとか、たのしそうとか。それが、食べてみよう、行ってみようという行動につながって、その人生が1mmでも幸せのほうに動いたらうれしいです。また、子どもたちが大きくなって、写真を見たときのことを想像しています。仕事の場合は構図や内容など、その写真の意味を考えながら撮影しますが、子どもたちの写真はほぼ瞬発力。いかにシャッターチャンスを逃さないかが大事で、その短時間でいかに自分が気に入る写真に仕上げるか、という部分が面白いのかもしれません」。
「仕事用のiPadが自動で過去の写真を表示してくるので、それを見て不意にキュンとしています。現在は長男7歳、次男は5歳です」。
子どもたちの写真はほぼ瞬発力。いかにシャッターチャンスを逃さないかが大事
「ご飯を食べるときはいつもおしゃべりしっぱなし、ふざけっぱなしの大騒ぎなのですが、その感じがよく出ている写真です(妻が撮りました)」。
セソコさんにとって写真とは、「自分の目は誰にも貸せないけど、自分の見ている世界を他の人にシェアすることができるもの」。
「次男がうんち出たー!(=お尻拭いてー)と言っています」。
「急に兄のヘアメイクがスタート。凝り性なのか、始めると真剣にセットしています。弟もつられて別の鏡でセット。ちょっと覗き見してる感じで撮りました」。
「アイロンビーズで遊んでいるところなのですが、なぜかパンツをかぶってました」。
家族との日々を写真に残すことは昨日とはまるで違う今日を、愛おしむように切り撮って、どこかにそっとしまっているような感覚
「地元のプールで遊んでるとき。楽しんでいる感じが出てればいいなと」。
パイプから別の出口に音が伝わっていく公園の遊具で。
「とうちゃんかあちゃん大好きー!と叫び出したのがかわいくて撮りました。背伸びと顔が隠れてる感じがポイント」。
週末の買い物の途中。
「疲れたーと言いながら、寝たふりを始めました。古びたベンチに銀行の文字と、すごく現実的な場所に、二人だけの世界があるようで微笑ましかったです」。
「次男がスパイダーマンにハマっている時期、綺麗な海とスパイダーマンのギャップが面白くて撮りました」。
うるま市の石川岳(標高204m)に山登りした日。
本島北部にある「ター滝」でのリバートレッキング。「植物たちの緑と、木漏れ日と、水の煌めきが綺麗で、その中にいる家族を撮りました」。
To my sons.
時間がないとかマナーとか親の都合でついつい怒ってしまうことがあるけれど、ふざけすぎるのも、走り回るのも、言うことをきかないのも、喧嘩するのも、泣くのも、笑うのも、ぜんぶどれも最高にかわいくて、1秒経てば2度と帰らない過去になってしまうって知っているから、本当は全部残しておきたい。だけど、そういうわけにもいかないので、こぼれ落ちていく大切なシーンを必死に捕まえている。
写真を撮るということは、心が動いているということ。なので、写真の枚数だけ(本当はその何倍も多く)、僕たちを幸せな気持ちにしてくれているということ。そして、そのことにとても感謝しているということを、いつか大きくなって膨大な写真を見たときに、感じてくれたらうれしいです。
「行ってきまーすと言ったあとに、子どもたちがくっついてきた様子を妻が撮りました」。
GENIC VOL.61 【愛が伝わる写真】
Edit:Akiko Eguchi
GENIC VOL.61
テーマは「伝わる写真」。
私たちは写真を見て、何かを感じたり受け取ったりします。撮り手が伝えたいと思ったことだけでなく、時には、撮り手が意図していないことに感情が揺さぶられることも。それは、撮る側と見る側の感性が交じり合って起きる化学反応。写真を通して行われる、静かなコミュニケーションです。