うちだなおこ
フォトグラファー 独学で写真を撮り始め、Instagramに投稿した写真が話題になる。幼少期を海外で過ごした経験から、旅をしながら撮影をするスタイルを好み、旅関連の仕事やNYコレクション、ラグジュアリーホテルなどの撮影も多数手がける。現在は一児の母として、子育てを優先中。
愛用カメラ:Hasselblad 501CM、Leica M5、Sony α9
愛用レンズ:Leica SUMMICRON 50mm f/2、Leica SUMMILUX 35mm f/1.4、Leica SUMMILUX 75mm f/1.4
母の眼差し
子供の成長のスピードに寄り添ってくれる…写真はタイムカプセルのような存在
〈0歳12ヶ月〉初節句のとき。「私の真似をすることが楽しい時期で、おめでとうの拍手を真似している写真です。子供の写真で何かを伝えたいと願ったり、意図したりすることはなく、完全に自己満足といいますか、自分が愛おしいと思った瞬間の写真たちを投稿しています」。
私が愛おしいと思う、娘らしい瞬間を撮りたい
〈1歳10ヶ月〉「ソファーでゴロゴロしていたら眠くなって寝てしまったときの写真。赤ちゃんと幼児の間にいるような、眠くなると指しゃぶりをしてしまう癖を写真に残しておきたくて撮影」。
「仕事で写真を撮ることが多いですが、もともとは趣味から始めたカメラ。出産後もすぐにカメラを持って、自然と娘を撮影していました」という、うちださん。お仕事をお休みされている今、被写体はほぼ娘さん一択。
「娘は好奇心旺盛で活発な性格。歌いながら踊ることが大好きで、ハッピーな明るい子です。今は蟻の飼育に夢中で、妖怪お化けが大好き!というちょっと不思議な嗜好も(笑)。もちろん可愛らしい写真も残したいですが、私が愛おしいと思う、娘らしい瞬間を切り取りたいと思っています。子供は幼いときは特に、日々表情が変わり、出来ることが増えていきます。そんな成長のスピードに、写真は寄り添ってくれます」。
〈1歳10ヶ月〉よく遊びに行く公園で。「言葉をだんだん理解できるようになり、初めて私の指示を聞いて、コミュニケーションをとりながら撮影した記憶に残る一枚。自然の中で遊ぶ娘が愛おしくて、幹の間から顔を覗いている瞬間を撮りました」。
写真は感動を残せるものであり、見るだけで思い出が蘇る素晴らしいもの。私のタイムカプセルのような存在でもあるのですが、どんどん成長して忘れていく娘自身の記憶にも鮮明な思い出を残してくれたらいいなと思いますね。私の場合は父が写真を撮るのが好きで、幼少期を過ごした海外での写真がたくさんアルバムに整理されていました。いつもその写真を見ていたからか、不思議と2歳くらいからの記憶が残っているんです。アルバムを見る時間が大好きで、それは私の癒しでもありました。だから娘にも、そんなアルバムを残したいです」。
穏やかな空気が伝わるような写真で見る人に優しい気持ちになってもらえたら
〈2歳0ヶ月〉「コロナ禍でお出かけできなかったので、2歳のお誕生日は自宅で過ごしたのですが、何が食べたい?と聞いたら、大好きなチュルチュル(ラーメン)がいい!というので。好きなものを本当にうれしそうに食べるところが可愛くて、食事風景はよく撮ってしまいます。当時、麺を吸い込むときになぜか目をつぶってしまう癖がありました(笑)。穏やかな空気を写真から伝えられたら、と思いながら撮っています。私の写真を見て、優しい気持ちになってもらえたらうれしいです」。
〈1歳12ヶ月〉「食べるのが大好きな娘。おかわりがほしくて、怒ってるふりをしているところです」。
〈2歳2ヶ月〉箱根のセカンドハウスにて。「もらった木製の黒電話で早速モシモシ、と遊んでいるところが可愛くて撮りました。娘にとって電話といえば黒電話、となっております(笑)」。
被写体である自分の姿を見て、愛おしくて仕方がない私の眼差しに気づいてもらえたらうれしい
〈2歳5ヶ月〉ふもとっぱらキャンプ場にて。「娘はパパの、とにかく激しい高い高いが好きで、よだれを垂らしながら大喜び(笑)。Instagramに投稿する=他人に見てもらう写真。独りよがりにならないように、あ~、あるある!といった共感性の高い写真を意識的に選ぶこともあります」。
〈2歳7ヶ月〉「お絵描きが大好きな娘に、窓に描けるクレヨンをプレゼント。口をキュッと閉じて、夢中になって描いている強い眼差しが愛おしかったです。親は子供が集中している真剣な表情が大好きだと思いますが、そんな瞬間を撮影」。
写真は楽しかった思い出を鮮明に蘇らせ、人生を彩ってくれる
〈2歳10ヶ月〉「セカンドハウス近くに梅園を見つけ、真冬の極寒にお弁当を持ってピクニック。丘の斜面が楽しくて楽しくて、おにぎりを頬張りながら遊んでいるとき、本人は気づいていなかったのですが、お米粒とその位置が最高でした!笑われて娘は不機嫌そうでしたが(笑)」。
〈2歳12ヶ月〉「仕事で石垣島へ行ったとき。ホテルに着くとまずベッドに入るのが好きで、潜っていったときに慌てて撮りました」。
目で見て感動した風景や瞬間のイメージのまま、自分なりのステキ!を写し出したい
〈2歳6ヶ月〉秋の新宿御苑にて。「落ち葉が積もっている場所を見つけ、自然と駆け出して遊び始める子供らしさが可愛くて。落ち葉がカサカサいうのも楽しかったようで、拾っては投げて遊んでいる姿も愛らしかったです。秋の夕日が髪に当たって、光っているのもお気に入り」。
〈2歳12ヶ月〉「桜が咲き始めた3月末、突然大雪が降った日。どうしても雪と娘を撮りたくて、近くにあった服を着せてダッシュで撮影。雪を体感するのは初めてだった娘が、雪を見上げながら不思議そうにしている様子が気に入っています」。
Mom‘s point of view
娘の日常を撮った写真はどれも大好きな瞬間で、すべて私のお気に入りです。
娘はまだ幼く、私が撮ったパパとの写真を見ては、「ママはどこにいるの?」と聞いてきます。写真の多くにはパパとの楽しい、幸せな日常が写し出されているのですが、どの写真にも母である私が娘へ向けた、眼差しのようなものがあります。娘が成長して、写真のことを理解できるようになったとき、その私の眼差しに気がついてくれたらいいですね。そんな日が来ることを願っています。そして写真の中にある家族の愛が、彼女の人生の糧になってくれたらうれしいです。
GENIC VOL.61 【愛が伝わる写真】
Edit:Akiko Eguchi
GENIC VOL.61
テーマは「伝わる写真」。
私たちは写真を見て、何かを感じたり受け取ったりします。撮り手が伝えたいと思ったことだけでなく、時には、撮り手が意図していないことに感情が揺さぶられることも。それは、撮る側と見る側の感性が交じり合って起きる化学反応。写真を通して行われる、静かなコミュニケーションです。