吉川然(写真家/大学生)
2002年生まれ、京都市出身・在住。プロカメラマンの父親の影響で7歳から日常的に写真を撮り始める。2016年頃からTumblrの投稿写真が話題となり、現在はアーティストのアルバムジャケットや雑誌などでも撮影を行う。2021年9月13日には、リコーイメージングスクエア東京にて初の個展「さがしもの」を開催。
愛用のカメラ:FUJIFILM X100F
「この写真どう撮ったんだ?」と見返して自分で驚くこともある。
「猫に家族の誰かが何かを与えている瞬間」。
「妹がロウソクの炎で炙っているのはエンドウ豆。上の2点とも2020年のクリスマスに自宅で撮影しました」。
今年4月に大学へ進学し、課題が多くも新生活が楽しいと話す然さん。最近では他誌の企画で若手俳優とコラボ撮影をしたことで、雑誌業界でも話題となっている。約1年半ぶり(GENIC Vol.54に出演)の登場となった然さんに、GENIC Vol.60のテーマである、日常でカメラを向けたくなる瞬間、を聞いてみた。
「明るい光や色に惹かれたときです。撮る理由はその時々によって違うんですけど、雨の日の水滴や鏡などを撮影することが多い気がします」。
そう話す彼の写真は、生命力を感じさせる特有の色彩感覚が光る。
雨の日の水滴や、鏡…。明るい光や色に 惹かれてカメラを向ける。
「電車で移動中、車両の一番端の座席から窓越しに隣の車両を写しました」。
「これは蛍光ペンライト的なものを使用したと思います。特別に用意したわけではなく、たまたまです」。
今の自分が送っている日常は、今の自分にしか撮れない。
「ふとしたときに日常で撮った写真を見返すと、シンプルに懐かしいって思うものもあれば、『この写真どう撮ったんだ?』って驚くこともあります。撮るときはほとんど何も考えず、撮りたいように撮っているので、自分らしい写真というのは今の僕にはわかりません。ただ、いい写真が撮れたときや、思わぬ発見があったときは素直に嬉しいです」。
前回の取材でも「シャッターを切るときには迷わない。ファインダーから見る世界は目まぐるしくてその瞬間を逃すと同じ写真は撮ることができない」と答えていた。
呼吸するかのように、はたまた、水中をすいすいと泳ぐかのように日常で写真を撮り続ける然さん。弱冠19歳、今後の活躍から目が離せない。
「手の間から何かを見てる写真です。なぜ撮ったのかわからない写真もたくさん」。
「京都市内の国際会館の近くに大きな池があるのですが、妹の後ろに隠れていた鹿を撮りました。その辺にたまたまいた鹿です。奈良ではありません(笑)」。
「なんでもない光景に少し違和感を持たせたくて、メガネのレンズを写り込ませました」。
「水溜まり。ストロボはよく使います」。
Information
『Water. 』(発刊/bookshop M)
写真家・吉川 然の初となる写真集。これまでに撮り溜めてきた、主に地元・京都での日常や家族との時間、旅行先などで撮影した37点を収録。代官山蔦屋書店を始め、全国の書店にて発売中。
GENIC VOL.60 【Daily Life of … Under23】
Edit: Yoko Tadano
GENIC VOL.60
特集は「とある私の日常写真」。
当たり前のようでかけがえがなく、同じ瞬間は二度とないからこそ留めておきたい日常を、表現者たちはどう切り取るのか。フォトグラファーが、クリエイターが、私たちが、それぞれの視点で捉えた日常写真と表現、そしてその想いに迫ります。