花梨
モデル・コラージュアーティスト。1997年生まれ、東京都出身。中学2年生のころからコラージュ作品をつくり始める。モデルとしての活動の他、広告、国内外の雑誌へのアートワーク提供、コラボレーションTシャツの発売、展覧会への参加など、制作の幅を広げている。WEBサイトwww.karinworks.comにコラージュ作品を多数掲載。
愛用カメラ:OLYMPUS μ、iPhone
想像や空想することの素晴らしさを伝える「コラージュ」
ひとつひとつのアイテムを並べながら物語をつくっていく
「十二支の始まりは、土星を基準にして決まっていったという話を基にイメージしています。レコードの上を干支の動物たちが踊っているのがポイントです」。
モデルとして雑誌や広告の場で活躍している花梨さん。昨年コラージュ作品だけをポストするInstagramを開設したことで、“コラージュアーティスト”としての活動も増えています。モデルとして活動する中で得たものが、コラージュ作品に反映されることはあるのでしょうか?
「モデルのお仕事はたくさんの場所へ行き、多くの人に会うので、そこから受け取るものは大きいと思います。私のコラージュは、まずテーマを決め、それをベースに物語をつくります。ひとつずつ丁寧に作品をつくっているので、それぞれのコラージュに、どんな物語があるのかを想像しながら見て欲しいです」。
花梨さんがつくるコラージュを通して、見る人に伝えたいこととは?
「想像、空想することの面白さ。もしこれからコラージュをつくってみたいという人がいたら、ぜひ、たくさん空想して想像して、知ることを楽しんで欲しいと思います」。
Q1 コラージュを始めたきっかけを教えてください。
「幼いころからいろいろなものをスクラップしていたのですが、コラージュとして形になり始めたなと感じたきっかけは、中学生のときに美術の自由課題でつくったものにあります。でもそのときはまだコラージュというものを知らずに制作していました。コラージュというジャンルがあることを知ったのは高校生のとき。先生に私のつくったコラージュをとても褒めていただいて、そこから世界が広がったのかもしれません」。
「登った山をテーマに。登っているときに撮った写真を印刷して使用しています」。
Q2 花梨さんのコラージュをつくるための必需品を教えてください。
「まずは素材集めです。フィルムカメラやスマホを使って自分で撮影した写真や、素材提供をしているフリーサイト、著作権が切れている年代の雑誌から探しています。イラストは自分で描くこともあります。アイテムに使う写真を撮影するときは、使いやすいように影をつけないこと、いろんな角度で撮ることを心がけていますね。私のコラージュ作品は、デジタルである程度ラフづくりをしてから紙におこしていく場合もありますし、デジタルで進めた方がいいなと思ったときはすべてデジタルでつくります。制作過程において、私の中でデジタルとアナログの違いはあまりないです。あるとすれば...その素材の絵が欲しいか、素材感が欲しいかによって変わってきます。どこに偶然性を置くかを大切に考えているんです。なので、1メートル定規と大きなカッターマット、切れやすいカッター、スプレー糊にイーゼル、Adobeソフトと印刷機は、絶対に欠かせないアイテムです」。
遠近法と見たときの心地よさにこだわって
「クリームソーダを飲んだとき、踊りたくなる人もいればキスしたくなる人もいて。嬉しくなったり、懐かしさが込み上げたり、とにかく人それぞれいろいろな気持ちになると思うんです。そんな人々の気持ちを表現してみました。実際の作品が、台東区谷中にある喫茶ニカイさんに展示されています」。
Q3 花梨さんのコラージュのテーマはなんですか?
「“メルヘン”というキーワードを自分らしいコラージュのテーマとして大切にしています。必ず自分の中で物語をつくってから創作していくんです。例えばこの『クリームソーダ・アパートメント』は、クリームソーダを飲んだとき、どのような気分になるかをパターンで考え、それを細分化し、擬人化させ、それぞれにキャラクターと物語をつくっていく。思いつきで楽しく空想していますが、どうやってつくっているかを言語化すると、このような流れです(笑)。小さいころから絵本や児童文学をたくさん読んできたことが大きく影響していると思います。チェコのアニメーションや、エルサ・ベスコフ、エルンスト・クライドルフなどが描いた絵本、アストリッド・リンドグレーン、ロアルド・ダール、フィリップ・K・ディック、ボリス・ヴィアン、安部公房などの小説も好きでよく読みます。作品をつくる上で何回見たかわからない『ムードインディゴ』という映画や、デレク・ジャーマンも大好きです」。
「フランスの作家、ボリス・ヴィアンの『日々の泡』という小説に登場するカクテルピアノをモチーフに。雨でも曇りでも晴れでも、美味しい料理を食べると踊りたくなる。そんなイメージでつくりました」。
Q4 今後どういうものをつくっていきたいですか?
「もっと物語性の強いものをつくっていきたい。絵本の挿絵などもいつかお受けしてみたいです。アニメーションなどもつくってみようと思っています。仕事で制作するものは、自分の作品とはまったく異なり、創作というより、もう少しデザインすることに近いかもしれないですね。相手がいることで成り立つものがデザインだと思っていて、いい意味で自己創作のときより、自分を客観視することができ周りがより見えて面白いんです」。
「コミュニティをテーマにしました。お昼休憩にお花たちが水を飲みながら話している様子。それもひとつのコミュニティだと感じて」。
GENIC vol.61 【あの人たちの感性から学ぶ 想いを運ぶ写真術】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.61
テーマは「伝わる写真」。
私たちは写真を見て、何かを感じたり受け取ったりします。撮り手が伝えたいと思ったことだけでなく、時には、撮り手が意図していないことに感情が揺さぶられることも。それは、撮る側と見る側の感性が交じり合って起きる化学反応。写真を通して行われる、静かなコミュニケーションです。