【撮影と表現のQ&A】中道智大／Q.走り回る犬を上手に撮るコツは？

「小型犬であっても、目線を下げて撮影することで躍動感を表現できます。ちょうど足が浮いている状態で、必死に走ってくる表情が気に入っています。SSは1/2000秒」。

「僕が考える魅力的な犬の写真というのは、撮影者と犬との関係性が見える一枚です。今回は走り回る犬を撮る具体的なテクニックを紹介しますが、それよりも常に意識しているのは、撮影以前に犬の気持ちを最大限尊重すること。よくある事例として、写真を撮ることに集中しすぎて、犬の表情がまったく豊かでないことがあります。写真が目的ではなく、あくまでも犬と楽しく時間を過ごすことが最優先です。写真はその過程で生まれるもので、結果ではありません。写真が好きだからこそ、写真以外の部分をとても大切にしています」。

「走り回る犬を撮る場合、シャッタースピードが遅いとブレてしまいます。犬の動く速さにもよりますが、1/1000秒を基準にすると良いでしょう。また、初心者が犬を撮る際には立ったままで撮影し、上からの俯瞰ショットになりがちです。それはそれで良いのですが、走る犬を躍動感あふれる姿で撮りたい場合、犬と同じ高さまでカメラや視線を下げて撮影するのが効果的です。ミラーレスカメラなど背面ディスプレイがある場合は積極的に利用して、確認しながら撮るのがおすすめ。背面ディスプレイがない場合は、伏せながら撮影する方法もありますが、着替えは必須です（笑）」。

「広角レンズで背景を広く入れて撮影。夕陽の美しさや海の雄大さを犬と一緒に表現し、自然と溶け込む犬の魅力が伝わる写真に」。

「最も簡単に走り回る犬を撮影する方法は、引きで撮ること。この方法ならカメラを選ばず、スマートフォンでも容易に撮影できます。走る犬を撮影する上で最も難しいのはピントを合わせることですが、広角にすることで被写界深度も深くなり、ピント合わせが容易になります。また、犬だけでなく雄大な自然と合わせると、写真としての表現の幅もより広がります」。

「何気ない瞬間ですが、モノクロにすることでより情緒深い作品に。もう亡くなってしまった猫と一緒のショットで、記録性という写真のもう一つの魅力も感じる一枚です」。

「走り回るというシチュエーションに限らず、犬を情緒的に撮影するテクニックとしてよく使われるのが、モノクロームにすること。普段見慣れている光景もモノクロームにすることで、どこか感情に訴えるような風景となり、新しい発見があったりします。色情報が少なくなることで、より始原的な、その犬の生き物としての魅力が見えると個人的には思っています」。

GENIC vol.67【撮影と表現のQ&A】中道智大／Q.走り回る犬を上手に撮るコツは？
Edit：Satoko Takeda