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食べることを真ん中に 奥はる奈 | 連載 好きよ、ごはん

生活に欠かせない3つの要素、衣食住。そのなかでも「食べること」は、生の根源を支えながら、暮らしをより豊かにしてくれるものでもあります。食の風景にカメラを向けるフォトグラファーたちに、その理由を伺いました。
全5回の連載、第4回は、フードデザイナーとしても活躍している奥はる奈さんです。

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目次

プロフィール

奥はる奈

フォトグラファー/ビデオグラファー/フードデザイナー 大阪府出身。ロンドン在住中、レシピコラム『Banana Kitchen』の連載を始める。10年勤めた防災・危機管理コンサルからカメラマンに転身。“しなやかに生きる(レジリエンス)”可能性を自然の中に見出し、八ヶ岳、のちにニセコへと移住。現在はフォトグラファー、ビデオグラファー、レシピ開発からフードスタイリングの食周りをデザインするフードデザイナーとして活動中。
愛用カメラ:Sony α 7R IV
愛用レンズ:Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、MAMIYA SEKOR C 80mm F1.9、FE90mm F2.8 Macro G OSS

食べることを真ん中に

料理を作り、食べることは刹那的で儚くて美しい

「12月の午後2時、おやつ時間の光。北海道の秋冬は早い時間帯から陽が深く入ります。西陽で濃く伸びる影とキラキラと光るグラス。日々の仕事やあれこれの合間に、ほっと癒やされる一瞬」。

「友人でもある谷口めぐみ農園さんの白いコーンを使ったポタージュ。夕ごはん時の暗くなる直前に撮った一枚です。ふわっふわに仕上げたので、急いで撮って熱いうちにいただきました」。

「ご近所のlalala farmさんに、晩夏と初秋のお野菜をいただきました。季節を感じる新鮮なお野菜を籠に入れたら目に触れるだけでも気持ちがわくわく。しばらくそのままにして愛でています」。

「朝ごはんに卵白を泡立てチーズをかけたふわっふわの卵かけご飯。卵黄を割るときはドキドキする、思わず写真に収めたくなる瞬間です」。

「友人を自宅に迎えたときに作ったインド料理たち。“パクチー追加は100円ね~”と、インド料理屋さん遊びが始まり(笑)、パクチーをサーブしている瞬間を切り取りました」。

時間や感情、その時の物語を真空パックのように閉じ込める

「“食べること”の写真は、ただの料理写真ではなくて。そこに込められた想いや物語を視覚的に表現する特別な手段だと思います。それを始めた背景には、料理を作ること、食べることの奥深さに魅了されたということがあるように思います。私が暮らしの中で大切にしていることは、“食べることを真ん中に置く”です。仕事が食べることに関わっているので、必然的に暮らしも食べることが真ん中になってくるし、大切な人と食べるごはんは忙しない日々の中のほっとする瞬間。適当に用意したごはんでも、しっかりと準備する日も、両方が愛おしく思えます。また、食べることを真ん中に置くと、日々の料理を通して季節を感じられます。今は北海道の自然豊かな場所に住んでいるので、春なら山菜狩り、夏なら家庭菜園をしたり秋ならきのこ狩りや鹿の狩猟をしたり、と四季の移り変わりを濃く感じています。都会でも田舎でも、旬のものを楽しむことは大切にしたい。料理を作ったり食べたりすることは、刹那的で儚くて美しい。その瞬間を写真に切り取ることで、何気ない瞬間が特別なものになって、誰かと共有した時間やその時の物語や感情を真空パックのように閉じ込めておけるように思います。暮らしや日常を写真に切り取ることは、もはや生活の一部です。レンズを通して暮らしを見ることは、ささやかな日々をより繊細に感じるための手段だと感じています。食べることの楽しさや豊かな時間を、写真を通して表現できたら最高です」。

GENIC vol.74 【好きよ、ごはん】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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