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どれも愛おしい瞬間だ 内村円 | 連載 好きよ、ごはん

生活に欠かせない3つの要素、衣食住。そのなかでも「食べること」は、生の根源を支えながら、暮らしをより豊かにしてくれるものでもあります。食の風景にカメラを向けるフォトグラファーたちに、その理由を伺いました。
全5回の連載、第3回はフリーランスフォトグラファーとして関西を中心に活躍している内村円さんです。

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目次

プロフィール

内村円

フォトグラファー 1989年生まれ、大阪府出身。高校生のときにトイカメラにハマる。大学卒業後、本格的にカメラに興味をもつようになり、フィルムカメラも同じくらい好きになっていく。アパレル業界で商品やモデル撮影の経験を積み、その後独立し、フリーランスフォトグラファーとして関西を中心に活躍中。現在は写真の見せ方をいろいろと模索中。今いちばん興味があるのは四色分解について。面白いことが大好きで、とにかくやってみるがモットー。
愛用カメラ:FUJIFILM GFX 50S II、OLYMPUS PEN FT、FUJIFILM NATURA S/NATURA BLACK F1.9
愛用レンズ:Speedmaster 65mm F1.4、OLYMPUS H.Zuiko Auto-S 42mm F1.2

どれも愛おしい瞬間だ

共有、感動、記録。これが食の写真を撮る理由

「僕はシナモントーストが大好きです。あつあつのトーストの上でゆるやかに溶けていくバターがたまらなく愛おしい」。

「おばちゃんの手際の良さに感動して思わずシャッターを切りました。食の写真はどうしても“静”になりがちですが、おばちゃんのおかげで素敵な“動”の写真が撮れました」。

「これが肉汁たっぷりできらきら光る魯肉飯です。初めて台湾旅行をして、初めて食べた魯肉飯。街の朝ごはん屋さんで出てきたにしてはその風貌はあまりにも美しく、そのときの感動を忘れまいと記録しました」。

「撮影の小物で余ったから、と知人にいただいたオレンジを思い切って半分に切ってみた。その日は西日が強く、断面がキラキラ輝いていたのをよく覚えている。部屋が散らかっていたので仕方なくベッドの上で撮ったことも」。

「積み上げられた食器や汚れたお皿。普段は埋もれてしまうような光景ですが、そこに陽の光がスポットライトのように当たっていて、『わたしたちも主役なんだ!』と言われているような気がして写真に収めました。綺麗とか汚いとかどうでもよくて、感動する瞬間があれば撮りたい」。

小さな感動をできる限りすくいあげて、写真で記録していきたい

「現在の仕事は、大学のパンフレットや雑誌など、紙媒体の撮影が多く、ジャンル的にはポートレートがメインです。僕にとってポートレートがオンだとすると、“食”に関する写真を撮っているときは、オフの心休まる時間。写真に対して前向きになれないときや、一度思考をリセットしたいとき、力まず格好つけず、良いなと思える瞬間を切り取ることができるのが、“食”の写真です。でも、表現しようと思ったことはなくて、あくまでも記録・思い出の一部という感覚。肉汁たっぷりできらきら光る魯肉飯、ベランダからの光がきれいな剥きかけのおみかん、美味しすぎてスープまで飲み干してしまったラーメン鉢。どれも“愛おしい瞬間”です。シャッターを切りたくなるのは、『美味しそう!あとで友達に教えてあげよう!』という共有、『光がきれいに差し込んでいる!ご飯が輝いている!』という感動、『大切な人とこのご飯を食べた!』という記録。だいたいこの3パターンな気がしています。意識しなければ忘れていくものって山ほどあります。小さな感動をできる限りすくいあげて、それを記録していくというのは写真にしかできない。同じように記録する手段として映像もありますが、瞬間的なシーンにおける感情の整理を容易にできるのは写真の方だと思います。最近プリンターを購入していろいろな印刷を楽しんでいますが、物理的に残るモノになることによってよりその瞬間の愛おしさが増すような、一生忘れられないものになるような、そんな気がしています」。

GENIC vol.74 【好きよ、ごはん】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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