枝 優花
1994年生まれ、群馬県出身。2017年初長編作品『少女邂逅』を監督。主演に穂志もえかとモトーラ世理奈を迎え、MOOSIC LAB 2017で観客賞を受賞、劇場公開し高い評価を得る。香港国際映画祭、上海国際映画祭に正式招待、バルセロナアジア映画祭にて最優秀監督賞を受賞。2019年には日本映画批評家大賞の新人監督賞受賞。また写真家として、さまざまなアーティスト写真や広告を担当。
WOWOWドラマ『神木隆之介の撮休』(第4話『夢幻熊猫』)の演出や、WOWOWドラマ『ダブル』のスチール撮影も手がけている。
愛用カメラ:Nikon F3、PENTAX 67
その人と自分の共鳴できる何かを掴んでシャッターを切っている
その場で生まれる空気を収める。瞬間や偶然を操りながら楽しむ遊び
「3人の茶目っ気と可愛さが一発で伝わって欲しい!と思って撮りました。またドラマ『放課後ソーダ日和』のスチールなので、それぞれのキャラクターがわかるポーズで。東京特有の坂道から見える景色を生かしたくてこの構図に」。
「何かを表現しようと思って写真を撮ることはあまりなく、『その場で生まれる空気を収めたい』という気持ちが強いです。強烈な強い愛情を持って向き合うので、その方と自分の共鳴できる何かを掴んでシャッターを押しています」という、枝さんの撮る人物を入れた路上での写真。今回選んだ写真につけたテーマは『刹那』。
「キリンジの20周年企画の短編映画『Melancholy Mellow』を監督した際のスチールです。縦と横の構図と配色(緑と赤)を強く意識して撮りました」。
「『少女邂逅』で香港国際映画祭に行ったとき、ふたりと一緒に香港散策をしていて、もうただ”香港ぽい!”と思って撮影。彼女たち以外は全てエキストラに見えるように意識して」。
懐かしい。知らないけど知っている。なんとなく愛しい。でもなぜだかわからない。そんな曖昧でぼんやりとした温かさが伝わったら良いなあ
「曇りの日で海も暗かったので、暗い印象にしたくなくて赤が映えるように真ん中に配置。高井息吹さんMV『今日の秘密』の撮影の合間に、嬉しくて海に駆け出していった女優さんを咄嗟に撮影しました。彼女の気持ちが後ろ姿からも伝わってくるし、赤いカバンを真ん中に配置した、ぼんやりとしたものが締まる構図が良いんです」。
「佐藤さきさんの写真集『さちよちゃれんじ』での一枚です。偶然見つけた木が曲がっているのが面白く、一緒に斜めになってもらって撮影しました」。
「作品を作るときに、性別にはこだわりません。その人物がどんな人かだけに興味があるので、その人に不思議と似合う場所、魅力が溢れる空気はどこかを探しながら一緒に歩き、似合う場所を見つけて、ただただそこに立ってもらいます。そして話をしながらその形をどんどん崩していき、その方が持っている”見せたい自分”というものから少しだけずれた瞬間を収めていくことが多いです」。
「SUMIREと一緒に作品撮りをしたときのものです。髪の毛をバッサリ切ってしまうとのことだったので、”じゃあその前に制服姿で撮ろうか”と。階段と信号機と人物の構図が好みの写真です」。
「今回の写真のような女性を撮るときに意識していることがあるとしたら、特有の肌の質感、しなやかさや瑞々しさを損なわないように気をつけること。それらが最大限発揮される光、背景を見つけること。たとえば、太陽の光や緑を感じる場所に引き寄せられたり。あとは自分の中にある、確実に気持ちの良い構図を意識すること。被写体は生身の生き物だから、そこに最大限の刹那性や瑞々しさを込める。そして、そのほかに値する背景などの情報は、幾何学的だったり、すべて垂直のもので整えたり。そこに空、カラーコーン、木々の緑など、相性の良いカラーたちを配置してデザインしていくイメージです」。
その場その場の瞬間を、どんどん切り取っていくことが好き
「フリーペーパー『Uni-Share』で『少女邂逅』を取材していただいた際に撮り下ろしたものです。雨が降っていたので『となりのトトロ』みたいに楽しい感じが撮りたいなと思い、傘をビョーンと上げてみてとお願いして撮りました」。
「小説『17歳のうた』の表紙撮影のワンシーン。懐かしい、自分と彼女だけの時間が写ればいいなと思い、この構図にしました。奥の子は知らない、自分だけが知っている顔、そこにどこか懐かしさも写ったらいいなと思って、シャッターを切った記憶があります」。
撮りたいシーンは出会い頭に訪れることが多いという枝さんにとって、ストリートフォトグラフィーとは?
「光がぴかーんと当たってキラキラした瞬間だったり、被写体の方がくしゃっと笑ったり、くしゃみをしたりしてしまった瞬間など、今このときしか絶対ない!みたいな、瞬間や偶然を操りながら楽しむ遊び。偶然や瞬間は降ってくるものなのでそれを待ちながらも、自分の好みの写真を撮るために、それ以外の背景たちを脳内デザインしておきます。スナップだけど、あらかじめ脳内では確実に欲しいものがあって、それをいかに超えるか、偶然を作れるかを被写体とセッションするように撮影する。そんな遊びだと思っています」。
GENIC vol.63 【セッション】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。