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いくつになってもゲストハウスに/ぽんずのみちくさ Vol.30

ぽんず(片渕ゆり)<連載コラム>毎週火曜日更新
ほんとに大切にしたい経験は
履歴書には書けないようなことばかり
旅をおやすみ中のぽんずが送るコラム

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いくつになってもゲストハウスに/ぽんずのみちくさ Vol.30

ひとり旅のときは、たいていゲストハウスに泊まる。

ひとくちにゲストハウスと言っても個人経営の一軒家からホテルのような大きな施設まで色々あるけど、どこも相部屋形式で、個人の占有スペースはベッド一台とロッカーくらい。トイレやお風呂、キッチンは共有だ。そしてホテルに泊まるよりずっと安い。

私がゲストハウスに泊まるようになったのは大学生のときで、その理由はシンプルに「すこしでも旅費を浮かせたかったから」だった。

だけど、気づけばゲストハウスという場所が好きになっていた。

内装も設備もゲストハウスごとに全然違うし、オーナーの人柄やその土地の文化が滲み出る。同じ部屋の人と話せば旅の寂しさだって消えるし、仲良くなってそのまま一緒に観光に行くこともある。

だけどたまに、ふと「このままで、いいんだっけ」と思うこともある。

ゲストハウスには国籍も年齢もさまざまな人が集まってくる。だけど、自分より年上の日本人女性に出会うことは、極端に少ない。

ひとり旅に目覚めて10年弱、たまにそんなことを思うようになったころのこと。インドのゲストハウスでひとりの女性と出会った。

ここでは仮に佐藤さんと呼ばせていただく。ひとり旅をしている佐藤さんは、「もうすぐ70歳になるの」と微笑む。

「若い人は体力があるからいいわね」と彼女は言うけど、トレッキングをしたり石の上で野宿をしたりしている佐藤さんのほうが、私よりよっぽどエネルギッシュだった。

その夜は、宿の食堂で彼女と一緒にごはんを食べた。佐藤さんは好きで旅をしているだけだけど、私はなんだか「ありがとうございます」と言いたい気持ちになった。

世の中には色んな人がいる。ゲストハウスなんて、お金のない学生の泊まるところだ。いい大人はいいホテルに泊まらないと恥ずかしい。そう考える人もいるし、そう思う人がいてもいい。他人の頭の中を変えることはできない。でも自分は、やっぱりそうは思わない。

好きである限り、そして体力の許す限り、バックパックを背負ってゲストハウスを渡り歩く旅を続けるんだ。

ぽんず(片渕ゆり)

1991年生まれ。大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いから退職。2019年9月から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。

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