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色に恋して。デジタル写真をフィルム風に 「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」vol.4 6151

デジタルカメラで撮影した写真を、フィルム写真のようなカラーに。そんな夢のような機能が、富士フイルムのデジタルカメラに搭載されています。その名も「フィルムシミュレーション」。フィルムを交換するような感覚で色再現を楽しめる機能で、その数なんと20種類。フィルム時代から90年以上にわたり、色の表現を研究してきた富士フイルムだからこそ作れる機能です。

「Xシリーズ」「GFXシリーズ」すべての機種で使用できるとあって、この機能に恋して、富士フイルムのデジタルカメラを愛用し続ける写真愛好家やフォトグラファーも多数。

そこで、本連載では「フィルムシミュレーション」の魅力を、全12回にわたってお届け。毎回1名のクリエイターがお気に入りのフィルムシミュレーションで撮影した作品とともにその魅力を語ります。

第4回は、フォトグラファーの6151さん。富士フイルムのX-Tシリーズの最新機種「X-T50」で撮影した作品とともに、富士フイルムのカメラを使ってみた感想と、恋したフィルムシミュレーションについて紹介します。

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目次

シャドウ部分の描写が秀逸で、自分好みの写真が撮れる

わたしにとって写真とは、記録。まばたきがシャッターで脳がメモリーのようなもの。人間の記憶って完全じゃなくて、良くも悪くも忘れてしまうからこそ、あったことをちゃんと思い出せるように記録しています。

そんななかで、わたしは日常に存在する光と影に惹かれてシャッターを切ることが多いです。日本は四季があり、光も変われば、季節によって植物や空などの雰囲気も違います。そんな、日々変わる被写体を撮影しているときの心の静けさのようなものが気に入っていて、自分のために写真を撮っていると感じます。

camera:X-T50 lens:XF16mmF1.4 R WR
フィルムシミュレーション: REALA ACE
「初夏の昼どき、移動中の電車の窓から見た風景。白い雲と青い空のコントラストに夏の予感がして、窓をフレームにして撮影。窓越しの風景が好きで、自分のなかでは長く撮り続けているシリーズでもあります。外と中の輝度差によってコントラストが高く、普通なら車内は黒潰れしてしまいがちなところ、REALA ACEは階調が柔らかいためか、窓枠の陰影も優しい印象で残っています」。

富士フイルムのカメラを使うのは、じつは今回が初めて。仕事柄、個人経営の飲食店や宿で撮影することが多いのですが、事前にお店のSNSなどを拝見すると、素敵な雰囲気の写真だなあ、好みだなあと感じることがあります。そんなときは使っているカメラを聞くのですが、「富士フイルムのカメラですよ」とレスポンスをいただくことが多くありました。その頻度は、この写真の雰囲気好きだなと思ったときに、FUJIFILM Xシリーズだな、とカメラ予想ができるようになる程です。そのため、自分好みの雰囲気の写真が撮れるカメラなのだろうと想像していました。

一方で、一度手にした機材を長く愛したいという気持ちもあり…。というと聞こえは良いですが、正直に言うとガジェットに疎いので新しいカメラに手を出せない臆病さがあって、なかなか手は出せずにいました。

それが今回、ついに実際に手にすることに。使った機種は「FUJIFILM X-T50」。想像通り、撮って出しの雰囲気が抜群に良いと感じました。まずは早朝に、散歩しながら季節の植物を愛でるように撮影してみたのですが、シャドウ部分の描写が秀逸。黒を黒く写してくれるというか…、漆黒という言葉が似合う表現をしてくれるので、光がより際立つイメージで被写体を捉えてくれる。派手さはないけど、むしろそれがすごく好みで、写真から静寂が読み取れるかのような雰囲気に仕上げてくれました。

camera:X-T50 lens:XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
フィルムシミュレーション: REALA ACE
「小雨が降る日の出の時間帯、雫をつけた美しい蜘蛛の巣を見つけました。芸術的で、まるで異国の王族が首から下げていそうなネックレスのようだと思いました。色数が少なく彩度の低いシーンでしたが、背景のぼけた植物のピンクが映えて、蜘蛛の巣に連なる雫がより煌めきを帯びたような印象に仕上がりました。REALA ACEは撮りたい被写体の主役感を少し底上げしてくれます」。

また、X-T50は、首から下げていたいし、部屋の棚にも飾っておきたいと思うくらいビジュアルが可愛い。軍艦部にシャッタースピード、露出補正、フィルムシミュレーションをコントロールする3つのダイヤルが搭載されていて、これがフィルムライクな見た目を醸し出しているし、操作していているときも心をくすぐられます。

そして、もっとも気分を盛り上げてくれたのが、やはりフィルムシミュレーションです。色再現はもちろん、ファインダーやモニターで被写体を確認しながら、シーンに応じてダイヤル一つでフィルムシミュレーションを直感的に変更できます。「今日はこの雰囲気で撮る」と決めてフィルムのように撮影を続けることもできるし、雰囲気を変えたくなったらすぐに変更することもできる。気分屋の自分には合っていると感じました。難しいことはわからない、体で覚える!というわたしのような人間でも、簡単に雰囲気作りを楽しめました。

My favorite フィルムシミュレーション

今回、様々なシーンでフィルムシミュレーションを試しました。ストリートスナップなら「クラシックネガ」で彩度を低くコントラストは高めでクールな印象に、野菜や果物などは「Velvia/ビビッド」で彩度を高く鮮やかさや新鮮さを出す、といった風に、自分の“こう表現したい”を出発点にフィルムシミュレーションを選択することで、しっかりと着地点に結びつけられたように思います。あとは、光の雰囲気に合わせてフィルムシミュレーションを使い分けるようにしていました。

1:ASTIA/ソフト

それぞれ使ってみたなかで、まず気に入ったのが、「ASTIA/ソフト」です。ふんわりと柔らかいイメージに仕上げてくれるので、人肌の撮影などに向いてそうだなと感じました。コントラストは抑え気味にして表情を和らげたい、優しげな空気感を持たせたい、などの雰囲気作りを助けてくれます。

今回は、わたしは植物をメインにレンズを向けてみました。花や葉のしっとりとした質感とナチュラルな色味が被写体になめらかさを与え、捉えたい魅力をより自然に表現してくれました。派手な発色は苦手だけどちゃんと鮮やかさも残したいとき、色のりの良さもある「ASTIA/ソフト」は本当に良いと感じました。

camera:X-T50 lens:XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
フィルムシミュレーション: ASTIA/ソフト
「赤い木苺が緑の中で映えていました。赤い実があるといつも目を惹かれます。家の付近で散歩中に見つけた光景でした。わたしの住む町は緑の多い地域なので季節ごとに様々な自然の景色が楽しめて、カメラ散歩が捗るのです。目で見た瞬間のふわっとした雰囲気は残しつつ、輪郭はシャープに。葉の緑色や木苺の赤などの彩度を際立たせながらも派手すぎず、普段使いしやすい印象を受けました」。

2:REALA ACE

次いで興味を惹かれたのが、「REALA ACE」。発色が目で見たままに近く、より自然な仕上がりですっきりと爽やかな印象になります。場面を選ばず、様々なシーンで活用できる万能さに感動しました。捉える色によって印象がすっきりとこってり、逆に転ぶところが不思議だと感じつつ、それがとても魅力的でした。空や海、緑など寒色系はすっきりと爽やかなイメージに仕上げてくれ、肌などの暖色系には若干こってりとした色味が乗ってくれるのです。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: REALA ACE
「初夏の夕刻、福井県の若狭湾国定公園の一部を、ケーブルカーの中から撮影しました。湖と海、島のように浮かぶ山々、もやがかかる幻想的な遠くの山という風景に惹かれました。寒色系で低いコントラストだった風景が、フィルムシミュレーションによって若干すっきりとした印象になりました。今回、寒色系の風景を撮影することが多かったのですが、自然の緑や空や海の青がよく映えて、撮って出しでも好みの雰囲気になることが多かったです。あれこれ手を尽くさなくても気に入った仕上がりになるので、撮影がより楽しくなりました」。

3:クラシックネガ

常時使い的に、「クラシックネガ」と「クラシッククローム」も自分の表現したい好みの仕上がりに近いと感じました。普段は住んでいる東京の街を歩きながら撮影することが多いのですが、東京のグレーな街並みと光と影の印象が好きで、それらを表現する際にとても合っています。

なかでも「クラシックネガ」は、東京の凛とした空気感に合うと感じました。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: クラシックネガ
「初夏の夕刻、都内で撮影した小ぶりな紫陽花の房。紫陽花を撮り歩くことが趣味の一つなので宝物を見つけた気分で撮りました。彩度が控えめな仕上がりになるクラシックネガは、明るい環境の撮影より、暗い環境の撮影でより良さを発揮してくれます。緑や花の鮮やかさが抑えられ、シックな色表現に転びやすく、作品を落ち着いた静けさのあるムードに持っていきやすいです。なんとなく、雨や曇り、冬の表現が似合う色合いだと感じました」。

4:クラシッククローム

一方の「クラシッククローム」は、ノンフィクションな世界観を表現するドキュメンタリー的な雰囲気のイメージに仕上がります。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: クラシッククローム
「都内を歩き回って撮影したあと、缶コーヒーを片手に、夕焼けを待ちながら撮影しました。ガラス越しのためか空気のためか光が縦に伸びていて、ビルに反射している様がキラキラと美しかったです。また、シャドウ部分には空の青さが反射していて、強すぎない穏やかな西陽の色が東京の灰色の風景にマッチしていました。見たままに近い色で、彩りの少ないビル群など、彩度を求めないシックな風景にクラシッククロームは似合います」。

「クラシックネガ」と「クラシッククローム」は、いずれも「ASTIA/ソフト」や「REALA ACE」とは対極的な表現になります。どんな雰囲気を表現したいかによって、フィルムシミュレーションの選択やそれが与えてくれる表現が変わってくることもまた、フィルムシミュレーションの面白さだと感じました。

6151さんが恋したフィルムシミュレーションの特徴

1:ASTIA/ソフトとは?

ファッション・ポートレート撮影での使用を想定して設計されたリバーサルフィルム「フジクローム・アスティア」がベース。
ソフトで忠実な肌再現と鮮やかな青空や緑の両立を目指しており、扱いやすいフィルムシミュレーションです。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: ASTIA/ソフト
「散歩中に見つけた、カラフルに実った宝石のようなミニトマト。前ボケの緑の透け感で被写体が際立ったようなイメージに仕上がった点が気に入っています。ASTIA/ソフトはカラフルなイメージにぴったりです。夏や春に花畑や野菜畑で使うと彩りが増して、瑞々しさまでも一緒に写ったような仕上がりに。全体的にふわっとした空気感が出るので、前ボケに緑の葉などを入れた撮影にも似合います」。

2:REALA ACEとは?

世界初の「第4の感色層技術」を導入したネガフィルム「REALA ACE」がベース。目で見たままに近い忠実な色再現を目指し、様々なシーンにおいて使いやすくしながらも、諧調にメリハリを持たせることで立体的な表現が得られます。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: REALA ACE
「初夏の夕方、懐かしい型の信号機と青い空を撮りました。なんでもない風景ですが、電線がいくつもつながっている様子もレトロな感じがして好みでした。このときは陽が傾く時間帯の若干オレンジの光が混じっていたのですが、REALA ACEを使ったことで色が全体的に寒色系に転び、空の青さも爽やかな明るさを保ってくれました」。

3:クラシックネガとは?

スナップシューターに愛用されてきたネガフィルム「SUPERIA」がベース。メリハリのある諧調と、彩度を抑えつつも明部と暗部の色味を変えることで深みを増した色で、立体的な表現が得られます。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: クラシックネガ
「都内の散歩中に目に留まった神社。朱色の鳥居と日陰の緑など静かな佇まいに惹かれて撮影しました。日陰だったため暗かったのですが、それが似合う被写体だなと感じました。クラシックネガはコントラストが高めで黒の表現がしっかりしているので、落ち着いた雰囲気を演出するのが得意です。神社仏閣のように彩度が低く和の静けさを表現する際にクラシックネガの黒を黒とする表現がよく似合うので、出番が多くなりました」。

4:クラシッククロームとは?

20世紀のグラフジャーナル誌に使われた写真のような色再現を目指したフィルムシミュレーション。彩度は低め、暗部の諧調は硬めに設計されており、ドキュメンタリータッチでリアリズムを求める写真を撮る際などに最適です。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: クラシッククローム
「長い移動のあと、やっとたどり着いた宿泊先で一息つくと、もう夜が始まりかけていました。まだ少しだけ明かりが届く、カーテンのわずかな光やそれに照らされた家具の存在が、静かで寂しげでした。全体的に彩度が低い一枚ですが、部屋の中に少しだけ差し込む少ない光と影の暗さによって、窓の外の緑が映えて見えます。クラシッククロームは、彩度を無理に強くしなくても光と影の印象だけでその場の良さを引き出してくれるので、落ち着いた大人の空気感を演出するのにぴったりです。影の描写が本当に美しい」。
(宿泊先 リブマックスリゾート加賀山代)

6151

フォトグラファー 東京都出身。インスタグラムをきっかけにフリーランスに転身。国内外で風景からブツ撮りまで幅広く撮影。雑誌やウェブで旅にまつわる執筆をする傍ら、全国でフォトワークショップを開催するなど「写真の楽しさ」を伝える活動にも取り組む。著書に『日々を美しく記録するフォトレッスン』がある。

6151 Instagram
6151 X

6151さんが使用したカメラ

X-T50

軍艦部に「フィルムシミュレーションダイヤル」を新規搭載し、フィルムシミュレーションの選択がかつてないほど直感的に。ダイヤルを回すだけで最新の「REALA ACE」を含む、20種類のフィルムシミュレーションモードから選ぶことができる。表示倍率0.62倍で269万ドットの電子ビューファインダーは高い視認性に加え、色彩や明るさが調整されているので、仕上がりを確認しながらの撮影が可能。また、クラシカルなフィルムカメラを彷彿とさせるX-Tシリーズのデザインを継承しながらも、わずか438gへと軽量化(バッテリー・メモリーカード含む)。洗練されたデザインとボディのコンパクトさも相まって、持つ喜びを感じられる、どこへでも持ち歩ける理想的なカメラ。

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