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シャドウ部分の描写が秀逸で、自分好みの写真が撮れる
わたしにとって写真とは、記録。まばたきがシャッターで脳がメモリーのようなもの。人間の記憶って完全じゃなくて、良くも悪くも忘れてしまうからこそ、あったことをちゃんと思い出せるように記録しています。
そんななかで、わたしは日常に存在する光と影に惹かれてシャッターを切ることが多いです。日本は四季があり、光も変われば、季節によって植物や空などの雰囲気も違います。そんな、日々変わる被写体を撮影しているときの心の静けさのようなものが気に入っていて、自分のために写真を撮っていると感じます。
富士フイルムのカメラを使うのは、じつは今回が初めて。仕事柄、個人経営の飲食店や宿で撮影することが多いのですが、事前にお店のSNSなどを拝見すると、素敵な雰囲気の写真だなあ、好みだなあと感じることがあります。そんなときは使っているカメラを聞くのですが、「富士フイルムのカメラですよ」とレスポンスをいただくことが多くありました。その頻度は、この写真の雰囲気好きだなと思ったときに、FUJIFILM Xシリーズだな、とカメラ予想ができるようになる程です。そのため、自分好みの雰囲気の写真が撮れるカメラなのだろうと想像していました。
一方で、一度手にした機材を長く愛したいという気持ちもあり…。というと聞こえは良いですが、正直に言うとガジェットに疎いので新しいカメラに手を出せない臆病さがあって、なかなか手は出せずにいました。
それが今回、ついに実際に手にすることに。使った機種は「FUJIFILM X-T50」。想像通り、撮って出しの雰囲気が抜群に良いと感じました。まずは早朝に、散歩しながら季節の植物を愛でるように撮影してみたのですが、シャドウ部分の描写が秀逸。黒を黒く写してくれるというか…、漆黒という言葉が似合う表現をしてくれるので、光がより際立つイメージで被写体を捉えてくれる。派手さはないけど、むしろそれがすごく好みで、写真から静寂が読み取れるかのような雰囲気に仕上げてくれました。
また、X-T50は、首から下げていたいし、部屋の棚にも飾っておきたいと思うくらいビジュアルが可愛い。軍艦部にシャッタースピード、露出補正、フィルムシミュレーションをコントロールする3つのダイヤルが搭載されていて、これがフィルムライクな見た目を醸し出しているし、操作していているときも心をくすぐられます。
そして、もっとも気分を盛り上げてくれたのが、やはりフィルムシミュレーションです。色再現はもちろん、ファインダーやモニターで被写体を確認しながら、シーンに応じてダイヤル一つでフィルムシミュレーションを直感的に変更できます。「今日はこの雰囲気で撮る」と決めてフィルムのように撮影を続けることもできるし、雰囲気を変えたくなったらすぐに変更することもできる。気分屋の自分には合っていると感じました。難しいことはわからない、体で覚える!というわたしのような人間でも、簡単に雰囲気作りを楽しめました。
My favorite フィルムシミュレーション
今回、様々なシーンでフィルムシミュレーションを試しました。ストリートスナップなら「クラシックネガ」で彩度を低くコントラストは高めでクールな印象に、野菜や果物などは「Velvia/ビビッド」で彩度を高く鮮やかさや新鮮さを出す、といった風に、自分の“こう表現したい”を出発点にフィルムシミュレーションを選択することで、しっかりと着地点に結びつけられたように思います。あとは、光の雰囲気に合わせてフィルムシミュレーションを使い分けるようにしていました。
1:ASTIA/ソフト
それぞれ使ってみたなかで、まず気に入ったのが、「ASTIA/ソフト」です。ふんわりと柔らかいイメージに仕上げてくれるので、人肌の撮影などに向いてそうだなと感じました。コントラストは抑え気味にして表情を和らげたい、優しげな空気感を持たせたい、などの雰囲気作りを助けてくれます。
今回は、わたしは植物をメインにレンズを向けてみました。花や葉のしっとりとした質感とナチュラルな色味が被写体になめらかさを与え、捉えたい魅力をより自然に表現してくれました。派手な発色は苦手だけどちゃんと鮮やかさも残したいとき、色のりの良さもある「ASTIA/ソフト」は本当に良いと感じました。
2:REALA ACE
次いで興味を惹かれたのが、「REALA ACE」。発色が目で見たままに近く、より自然な仕上がりですっきりと爽やかな印象になります。場面を選ばず、様々なシーンで活用できる万能さに感動しました。捉える色によって印象がすっきりとこってり、逆に転ぶところが不思議だと感じつつ、それがとても魅力的でした。空や海、緑など寒色系はすっきりと爽やかなイメージに仕上げてくれ、肌などの暖色系には若干こってりとした色味が乗ってくれるのです。
3:クラシックネガ
常時使い的に、「クラシックネガ」と「クラシッククローム」も自分の表現したい好みの仕上がりに近いと感じました。普段は住んでいる東京の街を歩きながら撮影することが多いのですが、東京のグレーな街並みと光と影の印象が好きで、それらを表現する際にとても合っています。
なかでも「クラシックネガ」は、東京の凛とした空気感に合うと感じました。
4:クラシッククローム
一方の「クラシッククローム」は、ノンフィクションな世界観を表現するドキュメンタリー的な雰囲気のイメージに仕上がります。
「クラシックネガ」と「クラシッククローム」は、いずれも「ASTIA/ソフト」や「REALA ACE」とは対極的な表現になります。どんな雰囲気を表現したいかによって、フィルムシミュレーションの選択やそれが与えてくれる表現が変わってくることもまた、フィルムシミュレーションの面白さだと感じました。
6151さんが恋したフィルムシミュレーションの特徴
1:ASTIA/ソフトとは?
ファッション・ポートレート撮影での使用を想定して設計されたリバーサルフィルム「フジクローム・アスティア」がベース。
ソフトで忠実な肌再現と鮮やかな青空や緑の両立を目指しており、扱いやすいフィルムシミュレーションです。
2:REALA ACEとは?
世界初の「第4の感色層技術」を導入したネガフィルム「REALA ACE」がベース。目で見たままに近い忠実な色再現を目指し、様々なシーンにおいて使いやすくしながらも、諧調にメリハリを持たせることで立体的な表現が得られます。
3:クラシックネガとは?
スナップシューターに愛用されてきたネガフィルム「SUPERIA」がベース。メリハリのある諧調と、彩度を抑えつつも明部と暗部の色味を変えることで深みを増した色で、立体的な表現が得られます。
4:クラシッククロームとは?
20世紀のグラフジャーナル誌に使われた写真のような色再現を目指したフィルムシミュレーション。彩度は低め、暗部の諧調は硬めに設計されており、ドキュメンタリータッチでリアリズムを求める写真を撮る際などに最適です。
6151
フォトグラファー 東京都出身。インスタグラムをきっかけにフリーランスに転身。国内外で風景からブツ撮りまで幅広く撮影。雑誌やウェブで旅にまつわる執筆をする傍ら、全国でフォトワークショップを開催するなど「写真の楽しさ」を伝える活動にも取り組む。著書に『日々を美しく記録するフォトレッスン』がある。
6151さんが使用したカメラ
X-T50
軍艦部に「フィルムシミュレーションダイヤル」を新規搭載し、フィルムシミュレーションの選択がかつてないほど直感的に。ダイヤルを回すだけで最新の「REALA ACE」を含む、20種類のフィルムシミュレーションモードから選ぶことができる。表示倍率0.62倍で269万ドットの電子ビューファインダーは高い視認性に加え、色彩や明るさが調整されているので、仕上がりを確認しながらの撮影が可能。また、クラシカルなフィルムカメラを彷彿とさせるX-Tシリーズのデザインを継承しながらも、わずか438gへと軽量化(バッテリー・メモリーカード含む)。洗練されたデザインとボディのコンパクトさも相まって、持つ喜びを感じられる、どこへでも持ち歩ける理想的なカメラ。