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おれんじ鉄道の古森社長と東さんにGENIC編集長がインタビュー「固定観念を壊して挑んだ一生大事にしたいパンフレット」

熊本(八代駅)と鹿児島(川内駅)を結ぶ「肥薩おれんじ鉄道」の観光パンフレットと、映画館で上映するシネアド(動画CM)「おれんじ鉄道に揺られて」を、GENICがプロデュース。
今回は、肥薩おれんじ鉄道株式会社の社長である古森美津代氏と営業戦略室の東美穂氏へ、GENIC編集長の藤井利佳がインタビューした模様をお届けします。
GENICとパンフレットを作ることになった経緯、「おれんじ鉄道に揺られて」というテーマについて、撮影の不安、完成品を見たときの感想、おれんじ鉄道の今後など、さまざまな話に迫っています。
モノづくりをする人はみな必見!愛の詰まった素敵な舞台裏トークをお楽しみください。

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GENICとおれんじ鉄道の出会い

「担当がやる気を出せるチームでなければいいものはできない」

絶対に撮りたいと思っていたノスタルジックな津奈木駅のホーム。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。東さんからGENICに、最初にご連絡をいただいてから約10ヶ月。パンフレットも動画CMも完成しました!

東さん

やっとここまできました!ありがとうございます。

編集長

お二人は社長と社員、という関係ですが、どれくらい近い感じなんでしょうか?それぞれどんな印象を持っていらっしゃいますか?

東さん

社長は忙しいので会えるタイミングがしょっちゅうあるわけではないですが、会ったときはすごく話しやすくていろいろなことを相談できる人です。ふたりっきりで話すこともあります。

古森社長

東さんは東ワールドを持ってる人です。彼女ならではの世界の中で仕事をしてもらえればいいな、といつも思っています。ただもちろん、おれんじ鉄道は会社なので、会ったときには私もいろいろな想いや意見を言って帰ります。あとはそれを東さんがどう調理するのか?彼女は、その意見を「いらない」と思えば遠慮なくサッと削除しますし(笑)、それでいいと思っています。東ワールドの中でアレンジしてもらえるのがすごく楽しいです。

編集長

素敵な関係ですね!今回、GENICにパンフレットと動画CMの制作について依頼をいただいた経緯を教えてください。東さんがGENICと一緒に作りたいと言ってくださったと聞いておりますが…。

古森社長

パンフレットを刷新するにあたり、東さんは複数社の候補をあげてきてくれました。その会社がそれまでにどんな仕事をしてきたのか?ということももちろん重要ですが、私はその候補を見たとき「東さんは、どことチームを組みたいの?」と聞きました。担当がやる気を出せる環境でなければ、いいものはできないと思っているからです。東さんは「GENICとやりたいと思っている」と答えたので、ではそうしましょう、と決まりました。

東さん

私は、GENICさんが前に担当されていた「鹿児島Colors」の写真を見て、衝撃を受けたんです。特にフォトグラファーの6151さんの写真がすごく好きになりました。それで、うちを6151さんに撮ってもらったらどんな感じになるだろう、と妄想してたんです。だから、パンフ刷新の仕事の担当になったとき、ほぼ最初からGENICさんに決め打ちで行きたい気持ちがありましたが、やはり何社か検討することは会社としては必要でした。でも最初の自分の直感を信じたいという気持ちもあり、どう社長にプレゼンしようかと考えていたところ、「あなたがやりたいようにやりなさい」と。なので、「じゃあ、やります!」という感じで。それで直接GENICさんにご連絡しました。

時刻表を片手に撮影同行中の、おれんじ鉄道株式会社 東美穂氏。(Photo:6151)

「5年後の未来から持ってきたパンフレット」

編集長

ご連絡いただいたあと、弊社の企画担当の菊池とオンラインミーティングをさせていただきましたね。そのときはどのような会話をされたのでしょうか?

東さん

雑誌を作っている会社の方とお話しするのが初めてだったのと、そもそも東京の人と話すということだけでドキドキしていました(笑)。いったいどこから話せばいいのかがわからず、とにかく既存のパンフレットを一新したい!という気持ちだけがあったので「どういうのを作りたいのかわからないけど、とにかく一新したいんです!」と伝えました。その後、企画の提案をいただいたときに、自分の価値観が変わるようなワードが企画書に書かれていて感動しました。相談させていただいてよかったなと最初に思った瞬間です。

編集長

ありがとうございます。菊池が喜んで泣くと思います。

上田浦の極上の夕日に出会って。撮影チーム一同感動。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

東さん

大学時代にとっていた経営学の先生から、「東京の情報が地方にくるのは5年後なんだ」という話を当時聞いて、それがすごく印象が強くて。学術的にうんぬんではなく、ただその先生の感覚の話だとは思うのですが。だから、こうやってパンフレットを作るときに、地元の企業と組むこともとても大事だけれど、東京の人たちに頼んだら5年先の価値観で作ってもらえるのかな、という考えが自分の中にありました。5年後の未来からパンフレットを持ってくるような感覚というか。逆を言えば、5年後も使えるパンフレットになるのかな、という。

編集長

そのお話を取材中にお伺いして、責任重大だなと…気を引き締めなおしました。

パンフレット制作を進めて

「“揺られて”という言葉をタイトルに見たとき、ピタッとハマった!と思った」

自転車を持ち込めるサイクルトレインもあるおれんじ鉄道。水俣駅にて。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

企画の方向が決まったあと、「おれんじ鉄道に揺られて」というタイトルや、パンフレット内に記載するリード文、全体のラフを作り提案させていただきました。それを最初に見たときはどう感じられましたか?

おれんじ鉄道に揺られて「パンとコーヒーとリセット旅」

のんびりとローカル線に揺られ、
どこか懐かしい、でも知らない駅で降りてみる。

そこで見つけたのは、目の前に広がる眩しい夕日、
オレンジ色に輝く柑橘、美味しいパンとコーヒー。

「こんにちは」
出会う人々と言葉を交わしながら、まちを歩く。

心がほぐれるような体験は、
日常の向こう側じゃなくて延長線上にあったんだ。

ちょっとだけ新しい世界の始まりを感じて、
大きく息を吸い込む。

リセットボタンはここにある。
おれんじ鉄道に揺られて。

(パンフレット、リード文より)

東さん

最初にラフを見たとき、こんなにも既存のパンフレットから変えることができるんだ!と感動しました。「うちにはこういうものがあるから来てください!」という呼び込みの強いパンフレットが多いと思うんですけど、そうじゃなくて「うちにはこういうものもあるけれど、お客様自身で好きなところを選んで見つけてくださいね、私たちはそれを受け入れます」というような優しい雰囲気がラフから漂ってて。これが実現できたら、おれんじ鉄道にとってももちろんですが、観光パンフレットというもの自体にも、今までとは違う価値をつけることができるんじゃないかなと感じました。
社内のメンバーも、え!これうちのパンフレットになるの!?と驚いて喜んでいました。

古森社長

ラフを初めて見たとき、「揺られて」という言葉がすぐ目に飛び込んできて、私の感性にピタッとハマった!と思いました。子どもの頃、父が国鉄の職員だったこともあるし、当時は大半の人がそうだったというのもありますが、出かけるときは鉄道を使うのが当たり前でした。そのときに鉄道に対して一番“心地よい”と思っていたのが。まさに「揺られる」感じだったんです。それは物心ついたときから体に染みついて、通学もずっと鉄道を使っていましたから、ほんとにずーっと鉄道に揺られて成長してきたんですね。もちろん私の個人的な原体験、原風景ではありますが、あのフレーズと文章をラフで見たとき「そうだよね!」と思って。私の心にピタッとハマったし、こういうのが欲しかったんだよね、これが私にとっての鉄道なんだよね、とすごく共感しました。

編集長

今、鳥肌がたっているほど嬉しいです。「おれんじ鉄道に揺られて」というタイトルで提案してよかった。仕事ですが、人と人が出会い、想いと想いが重なってこういうものが作れたんだ、という感動があります。

「みんなで新しいおれんじ鉄道の価値を創り上げた」

Shop&Cafeミナマータにて。ガラス越しの撮影。スタッフの方がすごく優しくて、撮影チームにお土産もくださった。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

「おれんじ鉄道に揺られて」というタイトルを考えたときから、揺られたら何ができる?という回答も、きちんとお客様に提案したいと思っていました。古森社長のように、原体験があれば説明は不要かもしれませんが、揺られて何ができるの?と思う人もいると思ったんです。その時点でまだ私は現地に行けていなかったのですが、沿線をリサーチしていくにつれ、新しい自分に出会うような気持ちになり「リセット旅」というキーワードが浮かびました。自分をリセットするためにおれんじ鉄道に揺られに行く。それって旅のスタイルとしてすごく素敵だし、それが叶う場所であるはず、と。そこでヒントにしたのが、東さんが打ち合わせでおっしゃっていた「この前も、沿線駅で降りてパンを食べながら散歩したんですが、やっぱりいいところだなあと思いました」というお話でした。東さんが歩いている姿を想像しながら「パンとコーヒーとリセット旅」というサブタイトルを、その時点では仮でつけました。実際に取材に行って、違う感覚になったら変更提案をさせていただこうと思っていたからです。でも訪れたとき、これはぴったりなキーワードだったな、とストンと自分の中で最終決定できました。
ところで、タイトルやリードの文章は、たくさんの年代の方が関わっているこのプロジェクトにおいては「ちょっとエモすぎるかな?」と思っていたのですが(笑)、まわりの方の反応はどうだったでしょうか?

古森社長

弊社の取締役は、沿線の市長さんや町長さんが多いんです。年齢は70代くらいまでいます。その人たちに「こういうのを作りました」と説明するとき、あまりにも今までのパンフレットとは違うので、私も正直何か言われるかな?と思っていたのですが、これが!!全員が全員「いいね~」と。パンフレットをめくりながらじっくり見ていて、次の説明に移れないほどでした。今回のパンフレットはある程度ターゲットを絞り込んでチャレンジしたものという感覚だったので、わー!意外!これはいろいろな世代の人に受けるパンフレットなんだ!といい意味でびっくりしました。

編集長

嬉しいですね~!!!古くから地元を知っていらっしゃる方からの評価を、私もとても心配していました。観光スポットを観光スポットらしく撮って紹介する、という作りではないので、受け入れてもらえるのかな?と。

阿久根駅にある図書コーナー。駅の中に楽しみがいっぱい。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

古森社長

ページをめくりながら、こういうのを作らなきゃいけないんだよね、なんて市長や職員の会話も聞こえてきて。すごく興味を持ってずっと見てくれている姿や反応を見て、これはやはり、世に出すべきパンフレットなんだと改めて思いました。

東さん、編集長

そのシーンを見たかったです!

古森社長

見せたいくらいでした!!

東さん

校正なんかも社内で協力しあってやったのですが、本当に、みんなで新しいおれんじ鉄道の価値というか、これからのお客様に伝えられる価値を創り上げられたなと思っています。

「固定観念を壊して挑んだ表紙のデザイン」

今回制作したおれんじ鉄道パンフレットの表紙。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

表紙については、いくつかの写真、デザインを提出させていただきました。その中で、どのように決められたんでしょうか?GENICの本誌もそうですが、正解はないからこそ、個人の意見がそれぞれでなかなか決めるのが難しいものですが…。

古森社長

今回、東さんと私は意見が一致しました!

編集長

それがこの表紙ですね!GENIC編集部でもこれがイチオシでした!
表紙の候補にぜひというリクエストをいただき、列車が写った写真でも作らせていただきましたがそちらはいかがしたか?

東さん

撮影中に想像していた段階では、やはり列車が写っている表紙がいいなと思っていたんです。固定観念というか。あくまでも鉄道のパンフレットだし、と。でも、それが途中で変わりました。私はパンフレットというものが好きなこともあり、よく駅のパンフ置き場にも行っていたのですが、GENICさんから撮影中に列車が入っていない表紙を提案されたこともあり、再度その場に身を置いて落ち着いて見てみたら、駅に列車の画が入った表紙のパンフが置いてあるのは当たり前なんだ、と気づいたんです。自分のそういう固定観念を変えつつ…、というか、「頭がかたいぞ私!これだと決めこんじゃだめだ!」と自分と対話しつつ(笑)、多くの気づきとともに進めていきました。他の社員にも投票してもらったら、やはり列車が入ったものが人気だったのですが、私はその時点ではもはや今回表紙にした写真が一番いいという思いになっていたし、社長と意見が一致したので、これでいいんだ!と突き進みました。できあがったらやっぱり新鮮で、本当にこれにしてよかったと思いました!

編集長

東さんは考えが広く、頭がやわらかくて、私たちにすごくたくさんの表現の幅をくれ、相談すればいつでもすごく早いスピードで判断いただけて…、まさかそんな葛藤をされていたとは、全然気づきませんでした(笑)。
表紙候補になった列車入りの写真というのはこちらです。やはり社内でも人気が高かったんですね。

日奈久エリアにある踏切で撮った1枚。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

東さん

この写真はやはり写真としてすごくいいんです。私もそうなのですが、自分で列車の写真を撮る社員もけっこういて、その人たちから「この場所で走り過ぎるおれんじ鉄道をこんなに雰囲気よく撮れるものなのか」と評判が高くて。

編集長

これは…本当に1枚しか撮れていません(笑)。かなり速いスピードで列車が通り過ぎる踏切ですよね。撮影地として事前にリサーチしていたわけではなく、まちを歩いていて見つけたスポットだったので、素敵な写真は撮れそうだけど時間もないからチャンスは数秒もないな、と思っていました。実際は数秒どころか体感は1秒なかった感じくらいです(笑)。よくぞフォトグラファーの6151さんが押さえてくれた!というシーンです。

東さん

でも結果、最終的に表紙に選んだのは、これこそがおれんじ鉄道の売りともいうべきシーンの写真です。リラックスしたこんな時間を過ごせる、というのが最高に伝わる表紙になったと思っています。私自身もおれんじ鉄道によく揺られますが、これは、ああがんばろうと思えるような風景なので。

古森社長

なんにしろ、表紙も中も、モデルの染谷ノエルさんがよかったですね。彼女が効いてる!雰囲気がすごくいいです。

編集長

ノエルさんに伝えます!彼女も嬉しくて泣くと思います(笑)。

「このパンフレットは手に取ると“ふわっ”というのが心にくる」

東シナ海から一番近い駅として有名な薩摩高城駅からつながる、湯田口海岸のサンセット。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

パンフレットができあがるまで、デジタルデータで確認したり冊子の状態になっていない色校紙で確認したり、を何度も続けてきましたが、こうやって1冊としてできあがると印象が違うものです。実際に手に取ったとき、どんな気持ちになられたでしょうか?

古森社長

このパンフレットは手に取ると、なんか…いいんです!モノを手に取った感覚より先に、“ふわっ”という何かが心にくるんです。それがあるから、先ほど話したように、意外な年代の人たちまでもがすんなり受け止めてくれたのかなと。初めてパンフレットを見て、めくって、そこで瞬間に受け入れてくれたというのは、この表紙であり、手触りであり、いろいろな理由があると思うんですが、一番は“ふわっ”と心に何かが伝わってくる、それなんだと思うんです。

東さん

私はこのパンフレットを冊子状態で初めて手にしたとき、「うわ、これは雑誌だぁ!」と思いました。だからこそパンフレット置き場に置いてあったらいい意味で異彩を放って、みんな一度手に取ってみたくなるし、めくりたくなると思うし、これ無料で持って帰っていいの!?って絶対思うと思う。
あと、自分自身が今までGENICの雑誌を買って読んでいた読者だったので、同じタイトルがついたパンフレットが作れるなんて…。手にしたときドキドキが止まりませんでした。
それに、最初のほうにも少し話しましたが、売り込んでる感じや押しが強い感じじゃなくて「おれんじ鉄道ですぅ…」くらいで(笑)雰囲気がいい。色もそうだし、優しさが伝わってくるから、リセット旅を求めている人に刺さるものになったと思っています。

編集長

私が言うのもなんですが…本当に雑誌みたいに仕上がりましたね!有料に見えるという指摘を最後の最後、別の人からいただいて、急遽表紙に「Take Free」を入れました。せっかく無料なのに逆に手に取りづらくなってしまってはいけないので…!これをお読みのみなさま、無料ですので安心して手に取ってお持ち帰りください!!!

古森社長

昨日、おれんじ鉄道の沿線にある高校の素敵な図書館に行ったのですが、瞬間、この入口に置いておきたい!と思って持っていた5冊だけ置かせてもらってきました。今の話を聞いていて、なぜ、私が突然置きたくなったのか?腑に落ちました。押しの強い宣伝パンフレットというのではなく、手に取りたくなるような雑誌みたいな感じがするから置きたくなったんだって!

編集長

地元の高校生のみなさんにも手に取っていただけたら嬉しいです!撮影中、列車の中で快く席をあけてくれたり、「あの駅を越えるとまた海が見える時間が続きますよ」って教えてくれたり。みなさん通学中で疲れているだろうにすごく優しくしてくださって…。車内で出会った学生さんたちにもお届けしたいです!

「パンフレットに流れる物語を大事に選んだ扉の写真」

編集長

ところで、このパンフレットの中で、個人的に気に入っている写真やページはありますか?

古森社長

私は阿久根のページです!ホームの写真が最高です!!

古森社長が絶賛する、阿久根駅のホームで撮った1枚。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

これは本当に素敵です!でも、そもそもホームに柑橘の木があってたわわに実っていて、そこにオレンジを象ったベンチがある…ロケーション自体が素晴らしいからでは!?

古森社長

そこに、ノエルさんがいるのが、すごくいいんです!!景色だけなら確かにあるんですが、ノエルさんの存在がすごくいい。だから生き生きとした写真になって、おれんじ鉄道を代表するようなロケーションというか、おれんじ鉄道といえばコレ、というような感じが伝わってくるんです。

編集長

私も阿久根のホームの写真がすごく好きで、表紙をめくった見開きのページの写真候補にも入れさせていただきました。2種提案した結果、以下の夕日写真が選ばれましたが、それはどのようにセレクトされたのでしょうか?

扉の見開きに使った夕日写真。実際はここにタイトルやリード文などの文字が載っている。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

古森社長

これも、東さんとセレクトが一致しました!このパンフレットのあの表紙をめくって出てくる、最初の見開きの扉になるのは海しかないと思ったんです。表紙の写真は窓の向こう側に海がある。その海が、表紙をめくると続いているという感じで、海しかない、と。阿久根のホームの写真は大好きなんですが、表紙をめくって次にこれが来ると、つながりがなくていきなり感が出ると感じたんです。海がつながって、そこからめくっていろいろな場所に展開していく、というのがいいなと思いました。

編集長

なるほど物語がつながっていく感じですね。古森社長の視点、さすがです!勉強になります。
東さんが個人的に記憶に残っている写真はありますか?

東さん

私は、おれんじ食堂の夕日の写真です。当初組んでいたおれんじ食堂の乗車撮影日は天気が悪くて、夕日が見られませんでした。取材期間中に再度乗車できるように調整し、2回目のチャレンジの日、素晴らしい夕日を見ることができて。本当にきれいで、思い出深いです。

東さんが特別に美しく感じたと話す、おれんじ食堂からの夕日ショット。(Photo:6151)

「東ワールドに不安なし!」

編集長

撮影中にドキドキしたエピソードはありますか?

東さん

列車の運行についてですかね。遅延などが起きないか?予定通りのスケジュールでまわれるか?また、ホームでの撮影もあるので、ケガや事故などが起きないか、ということについてはもちろんすごくドキドキしていました。でも、撮影に同行することってそんなにできる経験ではないし、もともと6151さんの写真が好きというのもあって、本物が目の前で写真を撮っている!というワクワクのほうが強かったです。
撮影チームのみなさんが私にとっては5年後の人たち、という感覚なので(笑)、未来の人たちと話している感じだったのですが、いろいろな価値観を知ることもできたし、勉強にもなりました。それでこうやってパンフレットができあがって、すごいことだなって。一生大事にしたいです(笑)。

編集長

私もエッセイのほうにも書きましたが、おれんじ鉄道にもみなさんにも、とにかく出会えたこと自体が嬉しくて。一生大事にします!
古森社長は、撮影期間中不安はなかったでしょうか?

古森社長

正直、まったくなかったです(笑)。撮影の工程や進捗はメールなどでも連絡をもらっていたので、事故がないといいな、明日天気がいいといいな、というのはもちろんありましたが。内容に関しては、企画もわかっていたし、東さんのいつもの仕事ぶりからして東ワールドで行くなら問題ないなと思っていたので、そういう方面での不安はまったくなかったです。

東さん

ありがとうございます!(笑)

シネアド(動画CM)「おれんじ鉄道に揺られて」について

映像の景色の中にも溶け込む染谷ノエルの存在感

エコパーク水俣に佇む、染谷ノエル。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

映画館で上映するシネアド(動画CM)も、今回GENICでプロデュースさせていただきました。15秒ver.と30秒ver.それに、SNSでも展開しやすいよう縦動画も制作しました。動画撮影はパンフレット撮影から1ヶ月後の1月でしたね。こちらの完成版を見たときの感想を教えてください。

古森社長

染谷ノエルさんが、映像の中でもすごくいい存在感を放っていました。パンフレット用の写真ですでに見ていたので、映像にもぴったりなはずとある程度の想像はついていましたが、実際に見てより思いました。ぎこちなさとか浮いた感じがなく、おれんじ鉄道沿線の景色にうまく溶け込みつつも、ノエルさんがいるからこそ際立つ風景があるということにも気づきました。本当にノエルさんがモデルとして来てくれてよかったです。

編集長

すごく短い尺ですが、まるで映画のような、物語がしっかり見えてくる出来栄えになりました。
ノエルさんは俳優なので、ひとつひとつのシーンで、たとえ写真であっても演技をされている。歩きひとつとっても、振り向きひとつとっても、だからこそ違和感がないし、その場所の空気感にうまく溶け込むことができるのでしょうね。

東さん

動画チームのみなさんも、いい映像を撮るために本当に苦労されていて、全力で動きまわってくれていました。これを15秒とか30秒にするなんて、もったいない!
そして音楽をオリジナルで作っていただいたのにも感激しました。作ってくださったシンガーソングライターの澪さんも現地に来られて直接お会いしましたが、視察をしながらその場でもうすでに口ずさんでいらっしゃったんです!そしてデモを聞いたとき、澪さんはこんな風におれんじ鉄道を捉えてくれていたんだ、と嬉しくなりました。リセット旅がテーマになっていて、優しく語りかける感じで、お客様を受け入れますという、今回のパンフともすごく合っていると思いました。

編集長

澪さんのオリジナル楽曲「君住まう街」ですね。本当に素敵で…私も感動しきりでした。

東さん

パンフレットと映像は別の日程で撮影した上、それぞれに特化したテクニカルメンバーがいたのでチーム構成も少し違いました。それなのに世界観がちゃんと共有されているし、物語も続いている感じがあって感動しました。担当の広告会社さんにも、「この動画すごくいいですね!映画館で流れたらめちゃくちゃいいと思いますよ!」と評価をいただきました。

編集長

プロジェクト担当の弊社の菊池は、とにかく東さんのおれんじ鉄道への愛が伝わってきたからこそ、スチールチームも動画チームもそれに応えたいという熱い気持ちを持ち続けることができた、と言っていました!東さんのおかげなんです。愛は伝わる!

おれんじ鉄道の未来

おれんじ鉄道が見せる愛のカタチ

築120年の武家屋敷の趣を生かして改修したホテル「RITA 出水麓 宮路邸」。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

おれんじ鉄道沿線の高校の卒業生へに向けて、社内の50名以上から募ったメッセージを駅や車内に掲載されたというニュースをこの3月に拝見しました。それにも愛を感じます。

卒業生へのメッセージが掲出されたおれんじ鉄道車内。(写真提供:肥薩おれんじ鉄道)

古森社長

コロナ禍で気づいたことがあります。それまで100万人いたおれんじ鉄道の乗車数が、80万人くらいまで下がったのですが、それは遠くから来る人が減ったけれど、沿線のお客様は変わらず乗ってくれているという証拠でもありました。そして、乗客の7~8割程度が学生さんでした。コロナであっても、彼らは列車に乗って学校に行くんです。特にこの3月に卒業した3年生は入学式もまともにできず、その後すぐに休校もあり、修学旅行も我慢、などという苦しい3年間を強いられた人たちです。それでも車内で見ていると、彼らはいろいろ工夫して友達と何かを話したりして楽しんでいる。本当に彼らを見ていると「えらいな」しかなかった。それに、減ってしまった乗客数を嘆くより、乗り続けてくれている人に感謝を伝えたい。だから彼らに何かを送りたいなと思ったんです。

編集長

おれんじ鉄道のまわりにはたくさん愛がありますね。いつも列車を外から見守ってくれている振り鉄さんをおれんじ食堂に招待したという記事も読みながら、うるうるしました。押しつけの愛じゃなくて、すごく優しい愛で…。
今回このパンフレットや動画CM、SNSなどでおれんじ鉄道を知った方々に、どうしてほしいですか?

古森社長

観光パンフレットというものは、ここに来てください、というのが目的ですが、今回はその行為まで到達しなくてもいいと思っています。このパンフレットを見て、このエリアはすごく素敵じゃないかと思ってもらえて、おれんじ鉄道や地域のいいイメージを膨らませてもらえたらそれでいい。もちろん来てもらえたらすごく嬉しいけれど、今回のパンフレットでは、何かを心に刻んでもらえたら、それが未来の何かにつながるかもしれないと、そう思っています。

東さん

おれんじ鉄道に揺られて、自分で発見する楽しさみたいなものを体験してもらえたらいいなと思います。ここは「日常の向こう側」ではなく「日常の延長線上」なので、気軽に来ていただいて、自分なりのお気に入りの場所を見つけてもらえたら嬉しいです。そしてまたおれんじ鉄道に乗りたいな、って思ってもらえたら最高です。

「鉄道は心のふるさと」~おれんじ鉄道の未来

出水駅で、おれんじ鉄道と。パンフレットに掲載していない秘蔵写真。(Photo:6151、Model:染谷ノエル)

編集長

「おれんじ鉄道」って本当に名前がキャッチーで、一度聞いたり見たりしたら忘れない素晴らしさがある。今回このプロジェクトによって、おれんじ鉄道を知る人がすごく増えると思うので、それが、おれんじ鉄道の素晴らしい未来につながったらいいなと思っています。
来年の3月には、おれんじ鉄道として運行を始めて20周年という節目を迎えられるそうですが、今後おれんじ鉄道はどうなっていきたいですか?

古森社長

鉄道は心のふるさとになると思っています。こういうエリアですから、進学や就職で外に出ている人も多いです。でもたまに地元に帰ってきます。そのとき「あ、ふるさとに帰ってきたな」と、そういう実感が湧く乗り物が鉄道だと思っているんです。心のふるさとであり、多くの人の原風景だから150年も続いてるんじゃないかなって。鉄道が“単なる人を運ぶ手段”なら、ここまで続いてないと思います。心のふるさとである鉄道を、これからも続けていきたいです。

東さん

僭越ながら社長と同じことを考えていたので、ドキッとしていました(笑)。人々の心の中に「鉄道のある風景」というものを残したいと思っています。外から来られる人の心にも、地元にいる人の心にも、おれんじ鉄道というものが風景として残ったらいいな、それが夢です。

編集長

素敵なお話をたくさん聞けて、私自身もたくさんの気づき、喜び、感動をいただきました。
古森社長、東さん、本日は本当にありがとうございました!!

パンフレットは肥薩おれんじ鉄道沿線地域、及び、福岡、熊本、鹿児島の商業施設などで配布中。デジタル版は以下のリンクよりご覧いただけます。

肥薩おれんじ鉄道 パンフレット

肥薩おれんじ鉄道

停車駅

八代・肥後高田・日奈久温泉・肥後二見・上田浦・たのうら御立岬公園・肥後田浦・海浦・佐敷・湯浦・津奈木・新水俣・水俣・袋・米ノ津・出水・西出水・高尾野・野田郷・折口・阿久根・牛ノ浜・薩摩大川・西方・薩摩高城・草道・上川内・川内

肥薩おれんじ鉄道 公式HP
肥薩おれんじ鉄道株式会社 Instagram (おれんじ鉄道・おれんじ食堂共通)

観光列車おれんじ食堂

運行日

金・土・日・祝日
※7・8月の金曜日は臨時運行日となります

プラン

▼1便<モーニング>
出水駅7:54発→新八代駅9:39着

▼2便<スペシャルランチ>
新八代駅10:40発→川内駅14:46着

▼3便<サンセット>
【夏ダイヤ】川内駅15:35発→新八代駅19:04着
【冬ダイヤ】川内駅16:30発→出水駅18:16着

※運行日、ダイヤは変更になることがあります。公式HPをご確認ください。

観光列車おれんじ食堂 公式HP
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