【龍崎翔子のクリップボード Vol.28】旅先でのピクニック

龍崎翔子<連載コラム>

龍崎翔子<連載コラム>第1・第3木曜日更新
24歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

【龍崎翔子のクリップボード Vol.28】旅先でのピクニック

旅先で心を奪われる景色を目にした時、ただ眺めているだけで手持ち無沙汰になり、どうしたらこの美しい景色を身体全体で感じて心ゆくまで楽しめるのだろう?と考え込んでしまうことがある。

非日常を際立たせるには、日常の光景を紛れ込ませるのが一番いい。屋上で飲み会をしたり、プールサイドで昼寝したり、海辺でスクリーンを張って映画を見たり、寝台列車の旅で読書するように、普段の生活で行なっていることを持ち込むことで自分が非日常空間にいることがより鮮烈に感じられるようになる。

なので、美しい景色を前にした時、ここにいるということを自分の所在を五感に植え付けたいと願う時、最近はピクニックをするようにしている。草原、森、海辺、砂漠…日常生活を離れて自然の中に身を置いた時に、「食事」という日々の営みを行うことでその非日常性が際立つのだろう。

ピクニックって本当にすごい。世界中のどんな場所でも、バスケットと、サンドイッチとフルーツがあればあっという間に非日常に様変わりしてしまう。それが美しい景色のある場所ならなおさらだ。ただ突っ立っているだけでは物足りない、食事と一緒なら非日常が身体の隅々まで染み渡り、そして二度と忘れない体験となる。

私たちのホテル、『ホテルクモイ』では1日数量限定で、朝食をピクニックバスケットで提供している。どこで食べるかは自由。ロープウェイに乗って黒岳の山頂から北海道の木々を眺めながら食べてもいいし、森の中の草原にポツンと置かれているテーブルセットで食べてもいい。

もし旅先でピクニックの準備をするのが難しかったら、見晴らしのいいところにレジャーシートを敷いて、カフェでテイクアウトしたものを食べるだけでもいいかもしれない。スーパーでちょっとフルーツとお酒を買って、ささやかで贅沢な朝餉にしよう。

今、未知の感染症が世界中で広がり、私たちはあっという間に日常という檻の中に閉じ込められてしまった。いくらオンラインの可能性が謳われていても、私たちはオフラインの世界を生きている。そんな中で、日常に刺激をくわえるために、屋上や公園、川原など、徒歩圏内のオアシスでささやかなピクニックを楽しむのもたまにはいいかもしれない。

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、2019年3月21日にリニューアルオープン。

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