Street Photography 物語の流れる道の上で
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。
【編集長コメント】
初のイラスト扉は、掲載しているストリートフォトグラフィーたちを1枚で可視化したものです。今回のテーマはこういうことか!って直観的にわかっていただけたらいいな、と思って作りました。
なぜかというと、自分自身、ストリートフォトグラフィーの定義があいまいだったからです。いったいどんな写真のことを指しているのか?
そこで、今号を作るにあたり最初に「GENICにおけるストリートフォトグラフィーの定義を決める」という作業に取り組みました。
世の中にはさまざまな解釈があり、
・街中で撮る日常写真のことである
・人と人工物とが組み合わさった写真のことである
・人が動的に創り出した光景を撮ったものである
などなど、調べるといろいろと出てきます。
そのなかで、GENICはどんな写真を「ストリートフォトグラフィー」とするのか?それをどう言語化するのか?「路上で撮った写真」という以上の"何か"があるはず、それはいったいなんなのか?
たくさんの作品を見て考えていくうちに、ひとつの大切なことに気が付きました。
ストリートフォトグラフィーには物語が写っている。
そうか、被写体が何か?人が写っているか?などは関係ないんだな。
光、人、風、感情。路上には、その時にしか表れない、出会えないたくさんの物語が常に流れていて、それを瞬時に切り取っているのが、見る人の心をつかむストリートフォトグラフィーなんだ。
目の前の事実でありながら、特別な場面を伝える報道写真とはまったく違う、路上の呼吸を感じるような日常写真。
その前に起きたであろう、このあと起こるであろう出来事を想像せずにはいられない、GENICが定義したストリートフォトグラフィーの回答が、この1冊に詰まっています。
物語の流れる道の上で、大切に切り取られた写真と、その撮り手の想いを、たっぷりご覧ください。
そして、カメラを持ってすぐに路上に飛び出したくなっていただけたら、とても嬉しいです。
カバーフォトはYusukeさん
今号のカバーフォトは、Yusukeさんです。
【編集長コメント】
女性の脚をフレームに見立てることで、飼い主を待つ犬の表情が際立ち、目線も気持ちもワンちゃんにスッと持っていかれる。" in the frame " というテーマを持っているYusukeさんらしい作品です。
物語性、偶発性、発見力、瞬時の切り取り。ストリートフォトグラフィーの要素が丸ごと詰まった、今回のテーマにぴったりな表紙になりました。とってもお気に入りです。
【Features】
路上/森山大道
日本のみならず、世界から高い評価を得ている写真家、森山大道。なぜストリートスナップを撮り続けるのか?という質問をぶつけてみました。本号の始まりを飾る回答にご注目ください。
【編集長コメント】
路上写真を撮る人たちにとって最高の憧れである森山大道先生に、本号の始まりにご登場いただいています。シアワセです!
あの日の彼 あの日の彼女 1967-1975/横木安良夫
「僕は何も見えていなかった。これは僕が吸った空気、あの日一日、若く生きた気分の記録」。横木安良夫が18~26歳までの間に夢中でシャッターを切ったという、"あの日"の写真と最新インタビューです。
【編集長コメント】
ページを開いた瞬間に、その時代、その時に吹いていた風が私の髪を揺らしました。何度見ても読んでも、グッときます。大切なページになりました。皆さんにも絶対見ていただきたい!ストリートフォトグラフィーに対する想いも必読です。
心が動いた空気感/髙梨沙羅
写真が趣味でカメラ歴は約3年という、スキージャンプ五輪メダリストの髙梨沙羅が、愛用カメラで撮影した、心のままに情景や感情を写し出した写真を掲載。写真への想いをQ&A方式でお届けします。
【編集長コメント】
世界を飛び回る髙梨沙羅さんには、遠征中に撮った写真を見せていただきました。大会前の心情が降ってくるような、静かにそびえるジャンプ台の写真もあります。出演オファーにとても喜んでいただいて、編集部が沸きました!
彼女に贈る物語/石田真澄
今大注目の若手女優、八木莉可子を、新進気鋭の写真家、石田真澄が撮り続けた3年半の記録。いろいろな種類の興味が散乱しているからこそ撮りたくなる、という路上で撮影した写真をご紹介。
【編集長コメント】
石田真澄さんが撮る八木莉可子さんは、本当にキュート!信頼関係が透けて見えてくるようです。写真集出版のための大詰めの作業真っ最中に、GENICの取材にお答えいただきました!眼福いっぱいの特集です。
セッション/枝優花
ストリートフォトグラフィーとは「瞬間や偶然を操りながら楽しむ遊び」だという、映画監督であり写真家である枝優花が、さまざまな女優たちと繰り広げる路上セッションをお楽しみください。
【編集長コメント】
「その場で生まれる空気を収めたい」という言葉が印象的でした。即興のセッションの枝ワールド感がすごくて、本当に映画から跳び出してきたような、ストーリー性たっぷりの、とても可愛いストリートスナップたちです!
Singapore in pastel/Nguan
日本のフォトグラファーからも絶大な人気を誇る、シンガポールの写真家Nguanによる、超近代都市シンガポールの、平凡でいて魔法のような日常生活のポートレート。ストリート写真の概念が変わる作品は必見です。
【編集長コメント】
いつか出てもらいたいと思っていたNguanさん。念願叶いました。とってもお茶目な方で、「名前の発音は?」の質問に、お父さまがNguanさんを呼んだときの録音を送ってくれました!日本語の発音だと、「ンアン」というのが近いようです。
自分だけが見つけられたもの/小見山峻
合成加工に頼らず、グラフィカルな世界を建築する写真家、小見山峻が、“誰もが見覚えのあるような場所で、誰も観たことがないような瞬間”を収めたストリート写真をお届けします。
【編集長コメント】
「ストリート写真はその人の足跡であり、“I was here”というメッセージ」という言葉がとても素敵で、心に刻みました。撮り手の残像が、それぞれのストリートフォトグラフィーに写っている。小見山峻さんがそこにいた、だから撮れた写真の数々に注目ください。
【特集1】街の被写体、それぞれの視点
偶然性を多分に秘めた路上の光景を、自分なりのテーマで切り取るフォトグラファーたち。「遠くに行かなくても撮りたくなるシーンはすぐそこにある」そんな気づきがもらえる特集です。
出演(掲載順):Hiroaki Goto、Chiho Yoshimura、Kou KATO、Ichi Nakamura、今吉優衣、Chihiro Matsumoto、澤村洋兵、細谷謙介、Yusuke、SHUN、naok、Junya Watanabe、Ken、高橋直哉、巢山サトル、コハラタケル、Azusa Adachi
【編集長コメント】
ストリート作品を数多く残した写真家ソールライターは「なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ。」という言葉を残していますが、この特集に登場してくれた17名は、そのことを体現しています。
交差点で、駅で、路地裏で、夜の街で、雨の道で。街にはこんなにもいろいろな表情と物語があるのかと、私自身かなり刺激を受けました。そして、ストリートフォトグラフィーに対する考えや、撮影するときの想いに、共感し、驚き、多くのことを学びました。目の前にあるものをただやみくもに撮っているんじゃない。それぞれの視点があり、そこに各自のスキルやパワーが掛け合わさって、表現されているんだなと。瞬発力、忍耐力、想像力、デザイン力、勇気、覚悟、感覚、予感。きっとみんなにもあります。これは、他人事ではなく、自分事です。きっと自分なりの表現が見つけられる!すぐ街を撮りに行きたくなっちゃうはずです。
【特集2】すばらしきドラマな路上
見慣れているはずのストリートに潜む奇跡を発見し、瞬時に切り取る3名のフォトグラファーによる作品をご紹介。ドラマを感じずにはいられない、想像が膨らむ写真たちです。
出演(掲載順):Ken Tanahashi、オカダキサラ、E-WAX
【編集長コメント】
この号を作るにあたってたくさんの作品を見ました。その中で、飛びぬけて「発見」する力が強い!と感じたフォトグラファー3名に出演いただいた企画です。
フッと笑える瞬間や、偶然が創り出す二度見してしまうような光景、街と人が起こすユニークな一瞬。理想とするシーンをあらかじめ思い描かないことは、むしろ自分のイメージの枠を超える写真が撮れる可能性が高いということ。ストリートで日々起きているドラマをリアタイで視聴しながら撮るというのが、ストリートフォトグラフィーの面白さのひとつであり、鮮度の高い作品を生み出すことにつながるのだな、と思いました。瞬発力!
【特集3】World Street Photography
独自の文化や歴史、そこで暮らす人々の個性が色濃く表れる路上写真。世界を旅し、海外で暮らす写真家3名が個性豊かに表現した、3都市のストリートの表情をお楽しみください。
出演(掲載順):Halno、北野詩乃、Etienne Leung
【編集長コメント】
世界のストリートが持つそれぞれの"顔"を個性豊かに表現する3名の写真家にフィーチャー。
カナダ・モントリオール、アメリカ・NY、香港。どの場所も、旅先として撮った写真は今まで数多く見てきましたが、今回ここにあるのは、それらとは一線を画しています。人の暮らしがあって成り立つ光景であり、街の普段の息遣いが聞こえてくるような写真を見て、私は「より行きたくなる!」という感覚でした。皆さまはいかがでしょうか?12ページにわたる、世界のストリートフォトグラフィーをご覧ください。
【特集4】わが街の道の上で
毎日通る道、慣れ親しんだ場所。そこには、自分の視点だからこそ写し出せる「何か」がきっとある。地元フォトグラファーから、ファインダーを通して自分の街を愛する方法を学びます。
出演(掲載順):八木香保里、平井裕士、藤原さやか、伊藤博晃、webwrap、kamosan
【編集長コメント】
「愛」という言葉なんてひとつも出てこないのに、愛が溢れている特集です。
自分だけが知っている光や角度、地元らしいと思う光景。その土地が纏う空気感までも写し取ったような写真からは、優しさがにじみ出ていて、「ああ、もっと自分の街を観察して、いろいろなことに目を向けて感じ取らなければ!」という想いにかられます。わが街を、自分らしさというスパイスを振りかけて表現している、素晴らしいフォトグラファーたちの写真とエピソードをご覧ください。玄関のドアをあければ、そこは被写体の宝庫です。
連載
女優・橋本愛「日日是好日」
現実のなかに溢れる愛おしい瞬間を封じ込めた写真と、そのとき感じた想いを言葉にのせて。かけがえのない日々を写真と言葉で表現する、橋本愛の連載第10回。
小関裕太の自分探しの旅「スキ」Vol.9
ストリート=道のりと捉え、過去を振り返りながら紡いだ2000字にも及ぶテキストと写真を4ページでお楽しみください。本人による構成でお届けする連載第9回、タイトルは「幼心」です。
KYON.Jが出会った“奇跡の一瞬”「Exploring the World」
世界を照らす美しい光を追いかけ続けるトラベルフォトグラファーKYON.Jが出会った、光溢れる大自然の姿、第12回「淡いブルーに染める初夏の光」をお届けします。
その他コンテンツ
・表現を豊かにする最新カメラカタログ
・新しい世界が広がるZ fcの楽しみ方「6151 meets Nikon Z fc」
・いつも傍らにフルサイズカメラ「Canon EOS RP と私の24h」
・Canon PIXUS XK500-写真家・浅田政志が伝える「写真プリント」の魅力
・ミツカン「カンタン酢™」で作る「鶏のさっぱり煮」の広告撮影現場をレポート
・人生を変える!移住&ロングステイという選択