menu

<Nikon Creatorsの履歴書>第7回:染谷ノエル「Zと出会って世界の解像度が上がった」

Nikonのカメラとレンズをこよなく愛するクリエイターを12回にわたって紹介する連載「Nikon Creatorsの履歴書」。Nikonと出会って、表現の幅が広がったり、作風に変化が起きたり、“撮る”人生に大きな影響があったという12名にフォーカス。カメラを好きになったきっかけや写真の道を目指した経緯をはじめ、Nikonとの出会いや、Nikon Zシリーズと一緒に歩んできた道のりを振り返りながら、作品とともにそのヒストリーを紐解きます。
第7回はNikon Zシリーズと出会って「好き」の世界が広がり、「撮ってみたい」が増えたという染谷ノエルさんの履歴書をお届けします。

  • 作成日:

染谷ノエル

俳優/フォトグラファー 東京都出身。中学卒業後、演劇を学ぶために単身渡英し、ノーサンプトンのBosworth Independent Collegeなどに通う。4年半後に帰国し、上智大学にて英文学を専攻。在学中より劇団、東京ジャンクZに所属、舞台俳優のキャリアは15年目を迎える(2023年時点)。写真は留学中の授業がきっかけで本格的に取り組むように。旅や日常をドラマチックに切り取る表現を得意とし、雑誌やWEBメディアなどでの作品掲載多数。 撮影、執筆、被写体の三役をこなすキャリアを活かし、取材、連載などでも活躍する。

染谷ノエル Instagram
染谷ノエル Twitter

【BIOGRAPHY】
<2010>
イギリスへ演劇留学
<2013-2014>
Photographyの授業を選択
<2014>
X(旧Twitter)アカウントを開設
<2015>
日本帰国&上智大学入学
<2017>
現在の所属劇団「東京ジャンクZ」に入団
スチール撮影も担当
<2019>
テレビNHK BSプレミアム「アラウンドTOKYO〜変わらぬ風景、変わりゆく風景〜」生放送出演。 視聴者投票の写真コンテストにて遺産部門2位獲得
上智大学卒業
Instagramアカウント開設
<2020>
Sony Music Entertainment YouTube カメラマン(2020-2021)
新潟県三条市 PR映像モデル出演などモデル業をはじめる
劇団タイオン旗揚げ公演 撮影&インタビュー記事執筆
女優・モデルのプロフィール写真の撮影をスタート
<2021>
Z 5購入
舞台撮影(ゲネ・フライヤー・パンフレット撮影)を手がける
<2022>
WEBメディアmichillで星野リゾートを紹介する連載開始
山口県・周防大島「瀬戸内ジャムズガーデン」などの、HP用の写真撮影を担当
<2023>
「CP+2023」登壇

私とカメラの関係の始まり

幼い頃からカメラに慣れ親しみ、ガラケーを経て、留学を機にNikonのデジタル一眼レフを愛用

小さな頃から家の中に当たり前のようにカメラはあって、気がつけば家族は私を撮ってくれていたし、自分もフィルム付きカメラや家族が持っていたカメラなどを触っていました。だからこれといった特別なきっかけはないまま、日常の延長線上で写真自体には慣れ親しんでいた気がします。小・中学生の頃はガラケーで写真を撮って楽しんでいました。
「カメラを触っている」と認識したのは2010年、15歳の時。演劇を学ぶため、イギリスに留学する
タイミングで母が買ってくれたNikon D3200を使うようになってからです。作品は常にこのカメラで撮っていました。それ以外のスナップは自撮りがしやすいバリアングル式のコンデジで。美肌効果がついていたのが、当時高校生の私にはうれしかった(笑)。
スマホも留学のタイミングで買ってもらったと記憶していますが、動画を撮ることも多かったです。友人と旅をして、動画を撮って繋ぎ合わせて思い出ムービーを作るみたいなことは、その頃から始めていました。とはいえ、当時は思い出を残すことが目的で、それ以外を意識して撮ることはなかったですね。

自分で買ったという意味でのファーストカメラは帰国後の2018年、大学時代にオールドレンズと一緒に購入したミラーレス一眼カメラ。3年ほどメインで使っていました。当時、オールドレンズに憧れがあって、手元に届いた時はすごくうれしかったのを覚えています。あわせて、キュートなルックスに惹かれてインスタントカメラも購入。撮ってすぐにプリントが見られるので、友達と盛り上がれるのが楽しかったです。2020年1月にハーフのフィルムカメラを、その後ミラーレスデジタルカメラを立て続けに手に入れました。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
クリエイティブピクチャーコントロール:ビビッド(適用度100%)

留学中に学んだ表現方法としての「写真」

イギリスに滞在する時間に限りがあることはわかっていたので、できるだけ風景や日常を残しておこうという気持ちがあって、通っていた学校のなんでもない景色から食べたもの、教科書まで、その日の出来事を撮って、ブログに載せていました。写真の色編集などを始めたのも、確かこの頃。思い返せば、イギリスにいること自体が「撮る」機会だったし、ブログが「撮る」モチベーションを継続させる大事なツールになっていたのかもしれません。
留学中に大学進学準備の一環で選択した“Photography”の授業も、本格的に写真に取り組む大きなきっかけになりました。自分のカメラでたくさん撮影して、学期中にブックを完成させるという課題で、自分で決めたテーマを「どう表現するか」が一番大事なこと。技術より思考やアイデア、行動を重視し、自分が何を伝えたいのか、なぜこの表現を使ったのかといったことに焦点を当てる“実践型”の授業で、私にはかなり合っていたと思います。Photoshopに初めて触れたのもこの時期です。この授業のおかげでかなり写真と向き合えたように思いますし、写真について考え続ける、撮り続けるという“筋トレ”のベースはここで培われたような気がします。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
「Z 5を使い始めた頃は人物写真をよく撮っていて、少し暗いところで撮影するのが気に入っていました」。

「俳優」業と並行して見えてきた「フォトグラファー」の道

撮影機材:Z fc + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
「SNSやまわりで反応のよかった1枚です」。

14歳の頃から俳優として生きてきた私としては、将来的にも演技を続けたいという想いが強く、2019年、大学卒業後はフリーの俳優として生きていこうと心に決めていました。でもその頃、体調を崩したのが引き金となって、いろいろな“ときめき”を失った時期があって。自分が好きなものをもう一度思い出すために起こした最初のアクションが、大学時代から憧れていた古性のちさんの「.colony」に入ることでした。その後、伊佐知美さんのサロン「旅と写真と文章と」にも入り、「写真」という一つの共通項で、年齢も職業も住んでいるところもバラバラなみんなと仲良くなれたことが、何よりもうれしかった。私がどこの誰かというより、私の考え方や見る世界、私が撮る写真に興味を持ってもらえて、「写真」で繋がれるという雰囲気に救われました。そこで出会えた人たちは、今も私の財産になっています。
GENICとは、北海道上川町のモニターツアーの参加者を募集しているのを見つけて、勇気を出して応募したのが最初です。コロナ禍の2021年に、そのツアーに参加させていただきました。GENICにZシリーズを試用する機会をいただいたのも、その年のことです。

撮影機材:Z fc + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
「パフェの形とお洋服、手の位置など、構図がバチッと気持ちよく決まって、自分でもとてもお気に入りの写真です」。

SNSはX(旧Twitter)を2014年から始めて、趣味として撮った写真を投稿していますが、お仕事としては、2020年、Sony Music EntertainmentさんのYouTubeカメラマンをやらせていただいたのが最初です。所属するアーティストさんの撮影の担当をしました。そもそもフォトグラファーと名乗っていいか、今でも不安はありますが、少しずつお仕事も増え、「ノエルさんの世界観で」と任せていただけることも多くなり、むしろ自信を持たずにお仕事に向き合う方が失礼なのではないかと思うようになりました。全体としては、被写体もやりますし、動画を撮る時には脚本や演出も手がけ、俳優や執筆もしているので、「表現者」という肩書きが一番しっくりくるのかなとは思いつつ、撮影のお仕事の現場では「フォトグラファー」と名乗るようにしています。

2021年、Z 5と出会って

光と影の描写力に衝撃を受けてZ 5の購入を決意

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3

初めてフルサイズ機を意識して触って、使ってみたのがZ 5です。最初に撮った時、まずその描写力に驚きました。光と影の写りが美しく、撮って出しの状態で「すごい!」と感動。これが購入の一番の決め手です。次に惹かれたのが、暗い場所に強いこと。お借りしている時に新江ノ島水族館へ行ったのですが、オートの状態でシャッターを切るだけで、そのまま美しく切り取ることができました。それまでは自分の技術不足もあり、暗い場所はどうも苦手で、正直に言って撮ってみようともしませんでしたが、Z 5なら暗いところもいける!と確信。苦手意識がなくなって、さまざまな状況にチャレンジしてみようという気持ちが湧いてきました。今では水族館でもたくさん撮るし、星空撮影にも挑戦するように。お借りしたZ 5で実際に撮ってみて、自分のしたい表現とマッチすると実感し、自分に馴染む!とわかった上で購入を決められたのは、本当によかったなと思います。今ではもうほとんどすべての撮影をZ 5でしています。人も、風景も、食べ物も、全部撮れる。とりあえず、Z 5があれば安心して仕事に向かえるし、新しい仕事にも挑戦できる。あとは私の腕次第!と思えます。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
「暗い水族館で撮った、この写真の描写は衝撃的でした。恐れずに撮ろうと思えた1枚です」。

お気に入りはクリエイティブピクチャーコントロールの「デニム」

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
クリエイティブピクチャーコントロール:デニム(適用度100%)

世の中にはさまざまな素敵なカメラがあると思いますが、私がZ 5をパートナーに選んだのは、機能のポイントや設定の仕方などを実際にレクチャーしていただき、「そんな設定があるのか、では挑戦してみよう」と素直に思えたからです。あと、クリエイティブピクチャーコントロールの名前にもこだわりがあることなど、作り手の“熱”を感じることができたことも、シンプルにワクワクしました。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
クリエイティブピクチャーコントロール:デニム(適用度100%)
「紫色が写真をより幻想的に仕上げてくれるので、合いそうだと思った時に試してみます。うまくマッチすると、本当に美しいので大好きです」。

クリエイティブピクチャーコントロールを使うと、その場で写真の色味や雰囲気を変えられるところが好きです。特にお気に入りなのは「デニム」。自分が見ている景色以上に、淡く幻想的な世界を写し出してくれます。「デニム」は少し紫がかった色味で、夕日や海、空を撮る時に使うことが多いのですが、“青”が多いところで使うと、自分の世界がよりドラマティックに、新しい見え方になることに魅力を感じています。

Z 5が私の「好き」の世界を広げてくれた

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
「Z 5は黒の描写が本当に強く、絵画のように撮れることにすごく感動しました」。

Z 5と出会ってから、どんな被写体でも恐れることなく、「楽しい!」が先行して撮れるようになりました。「このカメラなら、大丈夫」という絶対的な安心感があるので、特に人を撮ることが怖くなくなった。私はモデルの表情やポーズを引き出すところに集中ができます。Z 5での撮影は人+風景を撮る時が一番好きで、とにかく楽しい。モデルと一緒に撮影した画像を確認しながら、「うわ〜素敵!」と言い合うのは本当に幸せなひとときです。最近ではオーディションだったり、卒業写真だったり、誰かの大事な日の撮影を任されることも多くなりました。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
「Z 5で撮った写真はどれもお気に入りですが、中でも好きな1枚」。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

自宅の植物や、窓に入ってくる優しい光など、なにげない日常の尊さを撮るのもすごく好きです。思えば、木漏れ日を探して撮ることなんて、以前はありませんでした。建物のような無機質なものを撮ることも旅先以外ではなかったのに、そういうものに惹かれるようになったのは、Z 5で撮ってみたい!という意欲が湧くから。Zは私が「好き」と思う世界を全部まるごと広げてくれたんだと思います。
なんだかうまく撮れないという時は、気持ちがノッていないか、自分の技術不足。いろいろと画角や見方を変えてみるうちに「いい!」という1枚が必ず撮れるので、本当に安心して使っています。だから今はどんなものでも撮ってみたいし、挑戦してみたい。Z 5に出会って「撮ってみたい」が増えたことで、私の表現の可能性も広がっているように感じています。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
「これまで縁がなかった”和”の世界に触れるようになったのも、お仕事のおかげ。これも撮れる!という自信に繋がったと思います」。

Z 5を手にしてからの仕事における変化は、明らかに(作品を)見てもらえる機会が多くなったこと。この時!というハッキリしたタイミングまではわかりませんが、Z 5を使うようになって、確実に自分の表現力がアップしたと思っていて。そこから少しずつお声がけいただくことが増えたという実感があるので、フォトグラファーの仕事が増えたのは、Z 5と出会ってからだと断言できます。GENICの雑誌に作品を掲載していただいてからは、“NikonのZユーザーの人”という認識も広まったのかなと。Z 5を使っているから仕事が増える、わけではないですが(笑)、私の中では「Z 5だから」と自信を持ってお仕事を引き受けていたら、少しずつですが、思っていた以上に新しいお仕事と出会えるようになったという感覚です。さらにはZで撮った写真に文章を組み合わせるなどして、自分の表現をもっと増やしていこうと思えるようになりました。まだまだいろいろな表現の仕方があるのでは?もっと自分を出してもいいのでは?とにかくやってみよう!と思えるようになったのは、Z 5という信頼できるパートナーがいてくれてこそです。

ときめく瞬間を見つけられる!万能なレンズを味方に

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3

Z 5と一緒に購入したNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3を1年以上、愛用しています。重すぎず、持ち運びやすいのは、よく外出するタイプからするととても魅力的。キットレンズなのですが、ほとんどの撮影をカバーできる、とても優秀なレンズだと思います。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
「正直これが自分らしさ!というものはあまりわかっていません。ただ、ふと目に入る光、愛しさのような、ちょっとしたものを残しておくのが好きだな、とは思います」。

GENICの旅先の取材で何度か使わせいただいているうちに気に入って、今年購入したNIKKOR Z 28-75mm f/2.8。取材などのお仕事をしていく中で、このレンズがあれば!と思った1本ですが、このレンズが好き!と感じた一番の瞬間は、自分の家で育てているお花を撮った時でした。Z 24-50mm f/4-6.3よりも寄れるので、お花との距離感がすごく心地よくて、光と影の描写がより詩的に思えたんです。f/2.8と明るいレンズなので、被写体の際立たせ方もすごく気に入って。このレンズなら自分がときめく瞬間をもっと見つけられる、と思いました。旅先でも日常でも、基本的にはこの1本があれば何でも撮れると感じていて、宿泊施設やフード、人物の撮影でも、レンズを付け替える必要なく撮影できています。海外の撮影にも持って行きましたが、少し離れた建物も満足がいく写真を撮ることができました。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

ポートレートを撮る時も、私自身が被写体の方に近づくのではなく、ズームで寄れて、被写体の方に威圧感を与えずに済むという点でも重宝しています。f/2.8なのでボケ感がすごく美しくて、撮っていて楽しい!被写体を際立たせたい場合はワクワクしながら撮影しています。手前ボケもすごく楽しくなりました。動画を撮影する際にも、被写体の瞳にグッと寄ることができるなど、繊細だけどダイナミックに撮影することができて、すごくありがたいです。まだまだ自分が撮ったことのないものはたくさんあるので、このレンズで新しい被写体と出会うのがとても楽しみ。特に風景+人はもっともっと撮っていきたいなと思っています。

Zがより楽しくしてくれた動画撮影

Zで撮った動画は想像以上に美しい世界を見せてくれる

読み込み中

TW

撮影機材:Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR

「作品」として、意識してカメラで動画を撮り始めたのは2022年からです。それまではスマホで友人を撮ったり、たまに大学の演劇サークルの舞台の宣伝のための映像を作ったりしていました。
動画は、感情やその場の空気感がより伝わることがすごく魅力的だなと思っています。たとえば夏の暑さ、ハッピーな感じ、海のもの哀しさなど、音も含めて、いろいろなカットを通して伝わりやすい。ひと呼吸の静寂とか、視線とか、流れがあるからこそ引き立つものは、動画で撮っていてすごく楽しいなと思います。自分の物語の伝え方が、より鮮明になるイメージです。
Z 5で動画を撮ったのは、お仕事がきっかけでした。その時までカメラで動画をきちんと意識して撮ったことはなく、作品として映像を繋ぎ合わせる前提で撮ったこともなかったので、最初はあまりの美しさにびっくり。思わず目にするもの、なんでも撮ってしまいました。やはりスマホとは表現の幅の広さが違って、少しずつフォーカスの位置を動かすことで、視線誘導を行うことができるし、ボケ感や色が実際に目で見るよりも美しく写るので、撮っていてとにかく面白い! 自分が思っている以上の世界を見せてくれます。今では、作品を撮る時はZシリーズでと決めていますし、いいなと思う瞬間はZ 5で撮るように。いまだに撮りながら「きれい!」と興奮してしまいます。

一生ものの経験になった「CP+2023」オンライン登壇

【染谷ノエル】「私にとって、撮ることは愛。Z 5で写す、私の物語。」Z 5、Z 17-28mm f/2.8、Z 28-75mm f/2.8 │ニコンCP+2023オンライン

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 17-28mm f/2.8、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
ニコンCP+2023オンライン
『私にとって、撮ることは愛。Z 5で写す、私の物語。』

「CP+2023」オンライン登壇のお話をいただいた時はまず「うれしい!」という感情よりも、「えっ?」という驚きの方が大きかったです(笑)。次に、尊敬しているクリエイターさんたちがたくさん出ていらっしゃる場で、下手なものは絶対に出せないというプレッシャーが押し寄せてきましたが、すぐに意識は「どんな作品を作ろう」という制作の方へ。とはいえ、大きなイベントであることを実感するたびに、やりきれるかな?と緊張していました。
それまで動画のお仕事ではストーリー性のある作品を撮っていましたが、「今回もいつも通りショートフィルム作品をお願いしたい」というオファーをいただき、自分のイメージが確立したと思えたこともすごくうれしかったです。同時に今までの作品を超えるものを作らなければという意識も強くありました。
正直に言うと、素敵なイベントに出ることができたという感動やうれしさは、終わってからの方が強かったです。お声がけいただけて本当によかったとつくづく思いますし、制作にあたり、真剣に向き合った時間やそこにかけた思いも段違いだったので、私の今までの人生の中でも上位に入る印象的なお仕事になったと思っています。この仕事をしていてよかったと思えた出来事の一つです。

愛とこだわりを詰め込んだ渾身の作品を「CP+2023」で発表

【染谷ノエル】「R.I.P」Z 5、Z 17-28mm f/2.8、Z 28-75mm f/2.8 │ニコンCP+2023オンライン

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 17-28mm f/2.8、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
ニコンCP+2023オンライン
『R.I.P』

いろいろな人たちが協力してくれて、一緒に丁寧に作り上げて完成した、私にとっては初めてづくしの作品です。初めてジンバルを使いました。初めて男性を自分の作品にガッツリと出演させました。初めて動画撮影で遠出のロケをしました。編集で言うと、初めてPCで動画編集しました。本当に初めてだらけの挑戦でした。
「なぜここはこういう描写なのですか」と質問されたら、どのシーンでもその意味を答えられる作品です。なんとなくいい感じだから、で入れたカットはひとつもなかった。自分に納得感がなければ、撮れる作品ではなかったから。一番気にしたところは、私ともう1人の出演者の間に流れる小さな違和感、距離感。2人の関係性は何?というところを本当に大事にしました。ここはぜひ注目して、感じてほしいなと思います。
たとえば2人が歩いているシーンは足だけがアップになっているのですが、そこだけでも15回以上撮り直しています。福島で撮影中は撮れ高を確認しながら、深夜までPCとにらめっこしていました。編集作業に入ってからもトライ&エラーの繰り返しで、音楽だけでもかなり編集を入れていて、それだけで1週間はかけています。明け方近くまでオンラインで画面共有しながら、舞台の友人と演出の相談したことも。あまりにも真剣に向き合っていたので、これでいいのかと不安になって泣きながら脚本を考えたり、撮影に向かったりしました(笑)。私は動画のプロではないので、高度な技術を使った、一目でかっこいいものは作れません。でも私だけが創れるもの、今の私が創る意味があるものを、心を込めて撮っています。
「私にとって、撮ることは愛。Z 5で写す、私の物語。」と、そのままの自分の想いをタイトルにしました。これはこの作品に限らず、私が撮る上での永遠のテーマでもあります。好きだからこそ撮るし、その人やその瞬間を忘れたくない。残したい、覚えていたいから撮る。撮ること自体が、私にとって愛情表現です。そして私は写真で愛を伝えられるということを、Z 5を使うようになってから強く感じるようになりました。そんないろいろな想いや気持ちを詰め込んで、私の経験を描いたまさに「私の物語」。公開された時は安堵と達成感で心から泣きました。次の日、シャワーを浴びている時にもひとり寂しさで泣きました。作品を創り上げることで、私の中の何かが一つ、消化されたんだろうなと思います。

宝物になるような動画を未来の私に残したい

読み込み中

noel_n7_2

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3

動画を撮ることは自分の頭の中をさらけ出すような怖さもあり、私にとって勇気がいることです。私の場合、脚本も演出も自分だから、この人はこういうことを考えているというのが伝わりやすい気がしていて。でも今は、私が見ている世界を表現する新しい方法の一つとして、大事にしていきたいと思っています。自分の想いが少しでも、私が写した世界のひとかけらでも、見る人に伝わったり、感じてもらえたりしたらうれしいですね。でも何よりも大事にしているのは、創る私自身にとって宝物になるような作品にすること。数年後、数十年後に見返した時に、あぁ撮ってよかったなと思えるようなものにしたいなと。これは写真にも言えることですが、今の私が感じていることを未来の私に残したいと思っています。

俳優兼フォトグラファーとしての現在地

好きな「舞台」の世界と「写真」の世界が繋がった

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

2020年から、コロナの影響で俳優業は少し落ち着いているのですが、ありがたいことに舞台以外のお誘いもあり、俳優業もこなしつつ、メインは写真のお仕事となっています。あくまでも「俳優兼フォトグラファーです」と名乗るのは、やはり自分の中で俳優がホームである感覚が強いから。14歳から演劇に携わり始め、高校、大学、社会人になってからもずっと俳優として舞台に立ち続けているので、この軸は絶対にブレたくないし、消したくないと思っています。舞台と写真の二つが、私の中で大きな生きる軸だから、俳優とフォトグラファーの両立はなるべく続けていきたいと思っています。

カメラを扱えるようになってからは、同業の俳優の子たちからプロフィール写真やポートレートの依頼をもらうことも増えました。そして舞台の本番前の通しリハーサル(ゲネ)、フライヤーやパンフレットなどの撮影も手がけるように。舞台の人間であることと写真を撮れることが繋がるようになったことは、私にとって舞台との関わりがまた一つ増えたようで、すごくうれしいです。自分も役者をやっているからこそ、この瞬間、この表情を撮ってほしいだろうと、なんとなくわかるのも役に立っているかもしれません。そうやって自分の好きな世界と世界が繋がっていく幸せをかみしめています。

Zのファインダーを覗くと世界の解像度が上がる

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
クリエイティブピクチャーコントロール:デニム(適用度100%)

自信を持って「フォトグラファー」と今回も言えるようになったのはNikon Z 5を持ってからです。「CP+2023」の動画でもお話ししたのですが、Zで撮るようになってから、好きが増えて、世界の解像度が上がっていくのがとても楽しいです。写真をやっていてよかった、と思うのはそれが一番。そうやって私が見ている世界に、共感してもらえることも喜びです。旅する時は、Instagramのストーリーズにアップするようにしているのですが、見てくれている人に「まるで一緒に旅しているみたいで楽しい」と言ってもらえることがすごくうれしい。写真を撮ることによって、新しい視点や考え方に触れる機会が増えていくことが、日々を何倍も豊かにしてくれていると思います。

Zシリーズと描く未来予想図

今までもこれからも愛しいと思った瞬間を全部Zで

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
「自分の中でまた新たな一歩を踏み出せたのかなと思えた、タイでの写真」。

これからもZ 5となら、どんな挑戦もしてみたい!と心から思っています。今年2月に「染谷さんのこれからの夢はなんですか?」と取材先で質問されて、「今でも幸せだけど、お仕事で海外に行ってみたいです」と答えたところ、その2ヶ月後、タイで撮影するお仕事が決まりました。夢を一つ口にして、本当に叶ったこともすごくうれしかったし、それまで新しい場所で自分がどんな写真を撮るのか、ワクワクするような経験があまりなかったから、すごく楽しみで。これを機に、Zと一緒にもっともっと海外でお仕事をしたいと思うようになりました。今までも「こんなお仕事をしてみたいな」という、ざっくりとしたイメージはあったのですが、いつも想像を超えるような、素敵でびっくりなお仕事をさせていただいているので、将来的にも自分の予想よりも楽しくて、笑顔になれるようなお仕事ができたらいいなと思っています。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3

あとはイギリスにZを連れていきたい。思えば最初にイギリスに持っていったのも、母からもらったNikonのカメラなんですよね。留学中、自分が住んでいた場所やよく通っていたところなどを訪れて、写真におさめたいと思っています。その時はぜひZ 5を持って旅したいです。今の私の目にはあの街やビレッジはどんな風に写るんだろう?ワクワクしながら撮った写真とともに、過去の思い出を今の言葉で綴って、記事にしたいと思っています。

撮影機材:Z 5 + NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
「植物の成長の瞬間を目にすると、うれしくて思わず撮ってしまいます。後々見返した時に、今の私の生き方を思い出させてくれる写真なのかなと」。

ほかには、去年から植物を育て始めて、より愛おしく感じるようになったので、植物に関する写真もZで撮ってみたいです。それもどこかでお仕事に繋がったらいいですね。
そしていつか、と思っている大きな夢は、写真集のようなものを出すこと。どういう形でできるかはわかりませんが、言葉とともに作ってみたいと思っています。
今までもこれからも、愛しいと思った瞬間はなんでもZで撮りたい!特に大好きな人たちはたくさん撮っていきたいです。Zなら、きっと全部撮れるから。

Zで撮った作品でたくさんの愛を伝えていきたい

読み込み中

TW2

撮影機材:Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR

去年の夏にいただいた動画のお仕事は、Z 30を使っての撮影でした。Z 30の「伝えたいがあふれる」というテーマで、私がどうしても撮りたかったものは「愛」。「私にとって撮ることは愛」で、「映ってくれることも愛」なので、そこから発想して、友人11人に演者として出てもらうことに。ロケ場所は東京、神奈川、千葉、静岡で、「私と夏を楽しんでほしい!」とだけ伝えて、あとはいつも通りに過ごしてもらって撮影しました。そこで生み出される、それぞれの個性と愛。ほぼアドリブのライブ感。出演してくれた子からも「出演者体験型動画」と言ってもらえて、私自身、とても楽しい思い出になりました。その時に初めてZ 30を使ってみて、本当に軽いし、トライポッドグリップがミニ三脚になり簡単に自撮りができることに感動。とても撮りやすく、気軽に動画を始めるのにぴったりな機種だと思いました。プライベートの動画など、さっと撮りたい時によさそうだなと思い、以来、Z 30はとても気になっています。今はちょっとしたお出かけにもZ 5を持っているのですが、毎日持ち歩いているとちょっぴり首が疲れることもあるので(笑)、手軽に持ち歩ける機種はいずれお迎えしたいです。

撮影機材:Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
クリエイティブピクチャーコントロール:デニム(適用度100%)
「これまでSNSであげてきた作品の中で、もっとも反応がよかった1枚です」。

私がこれからもずっとZと一緒にいたい、と思うのは、繰り返しになりますが、やはり安心感があるから。Nikonの青の色が好き。手に持った時に私の手でもがっちり掴める感じが好き。私の表現を何倍にも膨らませてくれるのが好き。そういう全部ひっくるめての安心感です。
私にとって写真は、自分を救う表現の一つであり、日常であり、物語です。写真って、その時の自分の感情によって、ずいぶん見え方が変わってくる。個人的には、少し気持ちが落ちている時の方が、日常のなんでもない音や光が目や耳に飛び込んでくるし、傷ついている時の方が、まわりの世界に敏感で、優しいものにも気づく。そういう時にうまく撮ろうとか、きれいに撮らなきゃとか思うのは嫌で、とにかくシャッターを切ってみるのですが、Z 5はさらに優しさを上乗せしたような写真にしてくれる気がして。Zは私の世界を、より愛おしく見せてくれるんですよね。Zで撮った写真を後で見ながら、私はこの時、ここに愛しさを感じたんだなと思い返す時間がとても好きです。撮ったからこそ、より愛しく、大事なものになることもあると思います。そして、私にとって撮ることは、その人に愛を伝える手段でもあります。だからこれからもZと一緒に、たくさんの人や瞬間を写し続けて、たくさんの愛を伝えていきたいです。

おすすめ記事

連載<Nikon Creatorsの履歴書>

#ニコン に関する記事

次の記事