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【"魅せる"ポートレート:4】金曜日のミニシアター/ナカムラユウスケ

自分なりのテーマや作風の中で、人の魅力を引き出したポートレートを撮る6名の写真家たち。その表現方法や、写真に対する想い、シャッターを切る原動力に迫ります。
4人目は、卓越したセンスと独自の感性で物語を写しだす、金曜日のミニシアター/ナカムラユウスケさんです。

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金曜日のミニシアター/ナカムラユウスケ

休日写真作家 香川県出身。2018年よりフルサイズミラーレス及びフィルムカメラを使い始める。
同年、参加していたフォトラボKの作品展に出展。2019年には個展「乗合馬車」を開催。以降グループ展などに参加。2021年にはドイツのコーヒーテーブルブックレーベルからフォトブック「A love letter directed to the light」をリリース。現在はSNSでの発信、アートワークの提供やフィルムメーカーのプロモーションなどの活動をしている。
愛用カメラ:Sony α 7R II、Canon EOS5 QD、Nikon F3

妄想に潜むノンフィクション

写真には写っていない前後の時間や感情を与えたい

「目線の先に煌めきを散らせたかったため縦の構図にしました。早朝の光に感動というよりも渇望を感じたことが伝われば嬉しいと思います」。

「この瞬間を閉じ込めたいと思い、衝動的にフィルムのシャッターを切りました。目は口ほどにものを言うと言いますが、手の交わりはそれ以上でした。彼らの姿を表す手の戯れに、心を奪われたのを今でも覚えています」。

「降りて来る光を感じられるように、坂の下から見上げる形で撮りました。ロケーションも光も偶然に必然性を感じることが多く、またそこに強く魅力を感じることが多いです」。

「高台の展望台で、美しい景色に感動した後の脱力を写しました。二人の少女の関係性や表情などを制限することで、感情を想像してもらったり、被写体に自分を投影して欲しいと思います」。

「シャッターとシャッターの間にあった少し儚い表情。そこにモデルというフィクションの中に一瞬"女性"というノンフィクションを見つけた気がしました。フィルムでの多重露光のため、赤色の花が人物の表情と溶け込むように配置できることを意識しました」。

表現したいものは、いつだって誰かが一緒でなければ完成しない

「いろいろな場所をドライブした帰り。あと少しだけ写真を撮りたいと思い散歩した時に見つけた光。光が差すシーンは孤独や絶望とも希望や救いとも取れます。構図はできるだけシンプルでいて光の無限感を感じられるように考えました」。

「よく人からは『映画のワンシーンのような写真だ』と言われますが、私自身そのつもりで撮っているわけではありません。ただ、写真には写っていない前後の時間や、感情のようなものを与えたいと思っています。その結果、見る人がストーリーを想像するのかもしれません。自分の写真には"本物だけどフィクションのような""演技だけどノンフィクションであるような"シンプルにはなれない人の存在や感情が写っていると信じています。また映画のようだと言われる所以として、私の"妄想癖"や、学生時代に演劇経験が多いことが影響している気がします。映画などの映像作品や漫画が好きで、そこから受けた刺激が自分の中で妄想として成長して膨らんだものがあり、それを特に意識せずにストーリーとして投影しているのかと思います。とにかく普段から自然といろいろな物語を妄想しては、その世界で生きることを大切にしています」。
ナカムラさんが人を撮る理由とは?
「シンプルに楽しいからです。そして生きていると感じさせてくれるからです。私の持論として、【私の人生は私以外の物語で補完される】と考えています。私という存在は、多くの人が作るこの世界の中での相対的な位置関係から認知できるものであり、形創られているという考え方です。これは表現でも同じで、いつだって自分の表現したいものは誰かが一緒でなければ完成しない、そのピースを集めているようなイメージがあります。その人と自分だからこの結果(写真や作品)にたどり着いた、といった感覚が好きなんです」。

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GENIC vol.65 "魅せる"ポートレート
Edit:Megumi Toyosawa

GENIC vol.65

GENIC1月号のテーマは「だから、もっと人を撮る」。
なぜ人を撮るのか?それは、人に心を動かされるから。そばにいる大切な人に、ときどき顔を合わせる馴染みの人に、離れたところに暮らす大好きな人に、出会ったばかりのはじめましての人に。感情が動くから、カメラを向け、シャッターを切る。vol.59以来のポートレート特集、最新版です。

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