目次
最初は“見た目”から。そして“色”に惚れ込んだ
2019年に「X-T2」を手にしたのが、富士フイルムのカメラとの出会いでした。
写真の魅力は、自分がそこにいたことを振り返ることができること。写真を撮ることでそのときのシチュエーションが脳に焼きつくのか、写真を撮らなかったときよりも撮ったときの方が、いろいろな出来事を思い出せます。そして、思い出せるって本当に素敵なことだと思っていて、カメラは今の自分にとってなくてはならない存在です。
X-T2を手にする前は、父親のカメラを借りて撮影していました。でも使っているうちにだんだんと、借り物ではなく自分のカメラが欲しくなりました。当時はカメラの性能についてあまり詳しくなかったのもあり、持っていて楽しくなるような見た目のカメラがいいなと思い、探し始めました。インターネットでいろいろ調べているなかで、クラシックな見た目が好きで、惹かれて決めたのが富士フイルムのX-T2だったんです。
実際に使うようになると、コントラストが強めのはっきりとした色味が本当にきれいで、どんどん好きになっていきました。X-T2を手に、写真を撮ること自体にもどんどんのめり込んでいって、ステップアップを考えるようになりました。それでも、富士フイルムのカメラを使っていきたいという思いはずっと変わらなくて、その後はセンサー、プロセッサーが進化した「X-T4」や、フルサイズよりさらに大きなセンサーを搭載した「GFX50S II」を購入しました。
GFX50S IIのセンサーサイズは43.8×32.9mmのラージフォーマット。APS-CのX-T4から2段階も大きなセンサーサイズのカメラではどんな写真が撮れるのだろうと興味を持ったのが購入のきっかけでした。実際に使ってみると、非常に階調豊かで滑らかな描写を実感。今は、動画を撮るときはX-T4、写真を撮るときはGFX50S IIと使い分けています。
そして、今回の撮影で初めて使ったのが「GFX100 II」。画質が圧倒的によく繊細で、GFX50S IIより更に階調豊かで滑らかな描写に感動しました。グリップが深めでホールドしやすく、片手で操作できる操作性も素晴らしかった。また、動画性能が上がり、手ブレ補正がしっかり効いていて手持ちでも安定していました。
My favorite フィルムシミュレーション
1:ノスタルジックネガ
富士フイルムのカメラはフィルムシミュレーションが多数あり、さまざまな色の表現ができる点に魅力を感じています。淡い色になるものや赤味のある色、黄色味があって優しい色などいろいろで、色表現の幅が大きい。フィルムシミュレーションを変えるだけで印象がガラリと変わるのが面白く、表現の可能性が広がっていくのを感じます。
20種類ある、どのフィルムシミュレーションも本当に素敵。いろいろな色味の作品を出せた方が楽しいと思っているので、撮影の段階ではどのフィルムシミュレーションにするかは決めず、基本はRAWで撮影。編集時にプロファイルで変えて、作品ごとに使い分けている感じです。日々どのフィルムシミュレーションがどんな写真に合うかを試行錯誤していますが、そのなかでもとくに好きだと感じるのが「ノスタルジックネガ」です。
ノスタルジックネガは、彩度が少し高めながら、コントラストは低め。だから色は鮮やかだけれど、全体的にやわらかくなり、優しく暖かみのある写真にすることができます。懐かしさや優しさを写真に乗せたいときに使っていて、名前の通りノスタルジックさを感じるフィルムシミュレーションであると感じています。
2:クラシックネガ
次いで、フィルムシミュレーションの中で好きなのが「クラシックネガ」。ノスタルジックネガに比べて、個人的にはよりフィルムライクな仕上がりだと感じるもの。場所や被写体を選ばずに、懐かしい雰囲気になるのがすごく好み。コントラストが強めなので、はっきりとした描写が欲しいときにも使っています。
自分は、スーパーカブで走っている最中に見つけた風景だったり、その街々で有名な場所だったり、風景を撮ることが多いです。何気なく進んでいた道で目に飛び込んでくるような風景が好きなんです。フィルムシミュレーションは、目の前に広がる風景から自分が受け取った「印象」を乗せて、演出できるものだと感じています。
別宮ゆうたさんが愛するフィルムシミュレーションの特徴
1:ノスタルジックネガとは?
1970年代、カラー写真を芸術として定着させた「アメリカンニューカラー」の代表作を想起させる色再現が特徴。ハイライト部を柔らかくアンバーに描写する一方で、シャドウ部も色乗りのよさでディテールを残します。
2:クラシックネガとは?
スナップシューターに愛用されてきたネガフィルム「SUPERIA」がベース。メリハリのある諧調と、彩度を抑えつつも明部と暗部の色味を変えることで深みを増した色で、立体的な表現が得られます。
別宮ゆうた(べく)
写真家、愛媛県出身。何気ない日常から旅先まで、琴線に触れた出会いを写真に収める。とくに好きなのは風景写真。「べく」の名でYouTubeチャンネル「写真と日常と僕と。」を主宰。
別宮ゆうたさんが使用したカメラ
GFX100 II
圧倒的な画質とシステム機動性に加え、新たに高速性能と動画性能を手に入れたGFXシリーズのフラッグシップモデル。アルゴリズムの改良により進化した顔・瞳AFに加え、動物・鳥・車・バイク・自転車・飛行機・電車・昆虫・ドローンを検出する。高速連写性能も進化し、従来のGFXシリーズでは撮影が難しかったスポーツ分野においても決定的瞬間を逃すことなく力を発揮してくれる。忠実な色再現性とメリハリのある諧調表現を持ち合わせた「REALA ACE(リアラエース)」が加わり、フィルムシミュレーションも全20種にパワーアップ。
フィルムシミュレーション「REALA ACE」
現在、GFX100 II・X100VIに搭載されているフィルムシミュレーションREALA ACE。
X-H2S、X-H2、X-T5、X-S20でも今夏のファームアップで対応予定です。
GFX50S II
約900gの小型軽量ボディに5140万画素センサーを搭載したミラーレスデジタルカメラ。フルサイズ機と比較して約1.7倍の受光面積を誇る大きなピクセルによって、ノイズを抑え、広大なダイナミックレンジを実現している。対角55mm(ラージフォーマットセンサー)のイメージセンサーはカスタマイズが施された専用設計で、より正確に光を描き分け、輪郭強調処理をせずともメリハリのあるシャープな描写をつくり出す。質の高いRAWデータの生成を可能にし、撮影後に思いのままに調整を加えても画像劣化を極限まで抑えられる一台。