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色に恋して。デジタル写真をフィルム風に「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」vol.1 別宮ゆうた(べく)

デジタルカメラで撮影した写真を、フィルム写真のようなカラーに。そんな夢のような機能が、富士フイルムのデジタルカメラに搭載されています。その名も「フィルムシミュレーション」。まるで、フィルムを交換するような感覚で色再現を楽しめる機能で、なんと20種類。フィルム時代から90年以上にわたり、色の表現を研究してきた富士フイルムだからこそ作れる機能です。
「Xシリーズ」「GFXシリーズ」すべての機種で使用できるとあって、この機能に恋して、富士フイルムのデジタルカメラを愛用し続ける写真愛好家やフォトグラファーも多数。
そこで、本連載では「フィルムシミュレーション」の魅力を、全12回にわたってお届け。毎回1名のクリエイターがお気に入りのフィルムシミュレーションで撮影した作品とともにその魅力を語ります。

第1回は、生粋の富士フイルムユーザーである、「べくさん」こと、別宮ゆうたさん。愛機の「FUJIFILM GFX50S II」と、最新機種「FUJIFILM GFX100 II」で撮影した作品とともに、富士フイルムのカメラ愛と、お気に入りのフィルムシミュレーションについて紹介します。

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目次

最初は“見た目”から。そして“色”に惚れ込んだ

camera:GFX50S II、lens:GF45-100mmF4 R LM OIS WR
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

「スーパーカブでふと入ってみた細道は、人気(ひとけ)を感じず、静かで落ち着く空間だった。夏を感じさせる大きい雲と田畑の緑が、フィルムシミュレーション『ノスタルジックネガ』によって、より暖かく、優しく、懐かしさを感じさせる写真になった」。

2019年に「X-T2」を手にしたのが、富士フイルムのカメラとの出会いでした。

写真の魅力は、自分がそこにいたことを振り返ることができること。写真を撮ることでそのときのシチュエーションが脳に焼きつくのか、写真を撮らなかったときよりも撮ったときの方が、いろいろな出来事を思い出せます。そして、思い出せるって本当に素敵なことだと思っていて、カメラは今の自分にとってなくてはならない存在です。

X-T2を手にする前は、父親のカメラを借りて撮影していました。でも使っているうちにだんだんと、借り物ではなく自分のカメラが欲しくなりました。当時はカメラの性能についてあまり詳しくなかったのもあり、持っていて楽しくなるような見た目のカメラがいいなと思い、探し始めました。インターネットでいろいろ調べているなかで、クラシックな見た目が好きで、惹かれて決めたのが富士フイルムのX-T2だったんです。

実際に使うようになると、コントラストが強めのはっきりとした色味が本当にきれいで、どんどん好きになっていきました。X-T2を手に、写真を撮ること自体にもどんどんのめり込んでいって、ステップアップを考えるようになりました。それでも、富士フイルムのカメラを使っていきたいという思いはずっと変わらなくて、その後はセンサー、プロセッサーが進化した「X-T4」や、フルサイズよりさらに大きなセンサーを搭載した「GFX50S II」を購入しました。

camera:GFX50S II、lens:GF45-100mmF4 R LM OIS WR
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

「福島で。“しぶき氷”という氷の結晶が神秘的で感動した。本当にきれいで、自分を被写体に入れることで、まるでゲームの世界を旅しているかのような気持ちに。氷が突き出す風景もノスタルジックネガで優しい印象になった」。

GFX50S IIのセンサーサイズは43.8×32.9mmのラージフォーマット。APS-CのX-T4から2段階も大きなセンサーサイズのカメラではどんな写真が撮れるのだろうと興味を持ったのが購入のきっかけでした。実際に使ってみると、非常に階調豊かで滑らかな描写を実感。今は、動画を撮るときはX-T4、写真を撮るときはGFX50S IIと使い分けています。

そして、今回の撮影で初めて使ったのが「GFX100 II」。画質が圧倒的によく繊細で、GFX50S IIより更に階調豊かで滑らかな描写に感動しました。グリップが深めでホールドしやすく、片手で操作できる操作性も素晴らしかった。また、動画性能が上がり、手ブレ補正がしっかり効いていて手持ちでも安定していました。

My favorite フィルムシミュレーション

1:ノスタルジックネガ

富士フイルムのカメラはフィルムシミュレーションが多数あり、さまざまな色の表現ができる点に魅力を感じています。淡い色になるものや赤味のある色、黄色味があって優しい色などいろいろで、色表現の幅が大きい。フィルムシミュレーションを変えるだけで印象がガラリと変わるのが面白く、表現の可能性が広がっていくのを感じます。

20種類ある、どのフィルムシミュレーションも本当に素敵。いろいろな色味の作品を出せた方が楽しいと思っているので、撮影の段階ではどのフィルムシミュレーションにするかは決めず、基本はRAWで撮影。編集時にプロファイルで変えて、作品ごとに使い分けている感じです。日々どのフィルムシミュレーションがどんな写真に合うかを試行錯誤していますが、そのなかでもとくに好きだと感じるのが「ノスタルジックネガ」です。

ノスタルジックネガは、彩度が少し高めながら、コントラストは低め。だから色は鮮やかだけれど、全体的にやわらかくなり、優しく暖かみのある写真にすることができます。懐かしさや優しさを写真に乗せたいときに使っていて、名前の通りノスタルジックさを感じるフィルムシミュレーションであると感じています。

camera:GFX100 II、lens:GF45-100mmF4 R LM OIS WR
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

「廃校で、掃除道具に懐かしさを感じ、自分が小学生や中学生だったころを思い出した。この日は曇っていたけれど、少し色鮮やかになるノスタルジックネガによってのっぺりしすぎない印象に。コントラストが高すぎることもなく、優しい表現に」。

camera:GFX100 II、lens:GF20-35mmF4 R WR
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
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「見上げると空の色と桜がすごくきれいだった。広角レンズを空に向け撮影し、躍動感を出した。ノスタルジックネガは少し色鮮やかに写るため、とくに空の青が爽やかな印象に。桜のピンク色との相性もよく気に入っている」。

camera:GFX50S II、lens:GF45-100mmF4 R LM OIS WR
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

「雪山に登っていたときにとった一枚。奥に見える雲が果てしない雪とつながっているかのように感じられた。斜陽によって白い雪に影ができはじめていて美しく、サラサラな雪の質感や盛り上がっているところの影によって立体感も生まれた。冷たい雪も、ノスタルジックネガを使うことで暖かみが加わり、冷たすぎない印象の写真になった」。

2:クラシックネガ

次いで、フィルムシミュレーションの中で好きなのが「クラシックネガ」。ノスタルジックネガに比べて、個人的にはよりフィルムライクな仕上がりだと感じるもの。場所や被写体を選ばずに、懐かしい雰囲気になるのがすごく好み。コントラストが強めなので、はっきりとした描写が欲しいときにも使っています。

camera:GFX50S II、lens:GF45-100mmF4 R LM OIS WR
フィルムシミュレーション:クラシックネガ

「キャンプの朝、起きたら道具が凍っていた。太陽が出てじんわりと溶けていく様子に惹かれて撮った。クラシックネガによってキャンプの終わりを感じる哀愁がより感じられて、気に入っている」。

自分は、スーパーカブで走っている最中に見つけた風景だったり、その街々で有名な場所だったり、風景を撮ることが多いです。何気なく進んでいた道で目に飛び込んでくるような風景が好きなんです。フィルムシミュレーションは、目の前に広がる風景から自分が受け取った「印象」を乗せて、演出できるものだと感じています。

camera:GFX50S II、lens:GF80mmF1.7 R WR
フィルムシミュレーション:クラシックネガ

「湖で野鳥たちを眺めて癒されていたときに撮った一枚。逆光だったため飛び立った野鳥がシルエットになり、雰囲気が出た。フィルムシミュレーションのクラシックネガによって、少し赤味のあるフィルムらしさとデジタルならではの空の青が合わさり、好きな表現となった」。

別宮ゆうたさんが愛するフィルムシミュレーションの特徴

1:ノスタルジックネガとは?

camera:GFX100 II、lens:GF45-100mmF4 R LM OIS WR
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

「菜の花畑のなかを通る電車、というシチュエーション。電車が赤と橙の暖色だったので、夕方に撮るときれいなのではないかと思いその時間を狙った。夕空の橙色と電車、菜の花と暖色系統が縦列でそろっているところがお気に入り。ノスタルジックネガによって優しい雰囲気にもなっている」。

1970年代、カラー写真を芸術として定着させた「アメリカンニューカラー」の代表作を想起させる色再現が特徴。ハイライト部を柔らかくアンバーに描写する一方で、シャドウ部も色乗りのよさでディテールを残します。

2:クラシックネガとは?

camera:GFX100 II、lens:GF45-100mmF4 R LM OIS WR
フィルムシミュレーション:クラシックネガ

「カーブミラーが桜の木の木陰で休んでいるように見えてカメラを向けた。桜の前ボケを入れることで優しい印象になり、気に入っている。クラシックネガで出る赤味が好きで、この写真にもよく合っていると感じる。また、強く出たハイライトによって桜が輝いているように見え、すごくきれいになった」。

スナップシューターに愛用されてきたネガフィルム「SUPERIA」がベース。メリハリのある諧調と、彩度を抑えつつも明部と暗部の色味を変えることで深みを増した色で、立体的な表現が得られます。

別宮ゆうた(べく)
写真家、愛媛県出身。何気ない日常から旅先まで、琴線に触れた出会いを写真に収める。とくに好きなのは風景写真。「べく」の名でYouTubeチャンネル「写真と日常と僕と。」を主宰。

別宮ゆうた Instagram
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別宮ゆうたさんが使用したカメラ

GFX100 II

圧倒的な画質とシステム機動性に加え、新たに高速性能と動画性能を手に入れたGFXシリーズのフラッグシップモデル。アルゴリズムの改良により進化した顔・瞳AFに加え、動物・鳥・車・バイク・自転車・飛行機・電車・昆虫・ドローンを検出する。高速連写性能も進化し、従来のGFXシリーズでは撮影が難しかったスポーツ分野においても決定的瞬間を逃すことなく力を発揮してくれる。忠実な色再現性とメリハリのある諧調表現を持ち合わせた「REALA ACE(リアラエース)」が加わり、フィルムシミュレーションも全20種にパワーアップ。

FUJIFILM WEB

フィルムシミュレーション「REALA ACE」

現在、GFX100 II・X100VIに搭載されているフィルムシミュレーションREALA ACE。
X-H2S、X-H2、X-T5、X-S20でも今夏のファームアップで対応予定です。

GFX50S II

約900gの小型軽量ボディに5140万画素センサーを搭載したミラーレスデジタルカメラ。フルサイズ機と比較して約1.7倍の受光面積を誇る大きなピクセルによって、ノイズを抑え、広大なダイナミックレンジを実現している。対角55mm(ラージフォーマットセンサー)のイメージセンサーはカスタマイズが施された専用設計で、より正確に光を描き分け、輪郭強調処理をせずともメリハリのあるシャープな描写をつくり出す。質の高いRAWデータの生成を可能にし、撮影後に思いのままに調整を加えても画像劣化を極限まで抑えられる一台。

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