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【透明感を追い求めて:1】武井宏員

見る人の心にスッと寄り添う、透き通るような"素肌"の美しさ。
なぜ見る人の心を惹きつけるのか。そこに宿る"透明感"の正体とはいったい何なのか。
第一線で活躍する写真家たちが切り取った、一瞬のきらめきの先にあるそれぞれの透明感。そしてそこにある想いに迫りました。
1人目は、そこにある美しさを最大限に引き出す写真家、武井宏員さんです。

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武井宏員

写真家/実業家 大阪生まれアメリカ育ち、東京在住。
NYCでスタジオを立ち上げ、ファッションフォトグラファーとしても活躍。2018年の春に、広告代理と委託撮影を主な事業とする写真家プラットフォーム、株式会社CURBONを設立。現在も、経営者でありながら、人物や広告写真を撮影する写真家としても活動中。写真集『...and after』発売中。
愛用カメラ:Canon EOS R5、FUJIFILM X-E4、CONTAXG2
愛用レンズ:Canon RF24-70mm F2.8 L IS USM、他いくつかの35mmのレンズ

誰もが見てときめく瞬間

「ヌード撮影が初めてのモデルさんだったのですが、会話をする中でおへそがコンプレックスだとわかったんです。だけどそれとは裏腹に、そこにすごくきれいな光が差し込んで、そのおへそに優しく触れるような手の影が落ちて。その絵がすごくよかったのでシャッターを切りました。被写体とのコミュニケーションがあってこそ生まれた作品です」。

見る人の心が〝透明感〟という名の共鳴を生む

今年2月に『emergence』という写真展を実施した武井さん。今後へ向けての想いを込めて”脱皮、羽化”をテーマにしたそう。
「素肌やヌードを撮るということは、撮り手にも、被写体にも大きな決意が必要だと思っています。ヌードを撮る理由、そこで表現したい感情や生。そしてヌードを撮って載せることで遭遇する壁や不安。こういった物をひっくるめて、このページの写真も”脱皮、羽化”に紐づく作品になっているかと思います」。

「喜びとか苦しみとか、そういった感情を含めた非現実的な世界を描こうと思った時に、霧をイメージしたんです。だけどスモークをたくのも違うなと思って、小麦粉を使って表現しました。そういうあいまいな世界設定に惹かれるんです。透明感を意識して撮った作品ではないですけど、素肌の美しさも同時に表現できているかもしれません」。

ヌードや素肌がテーマになる作品では被写体との信頼関係を築くことがなによりも大切だと武井さん。
「素肌には、表面的な魅力だけではなく、写る人の内面が表れているから、惹かれるんだと思います。どういった人なんだろう?どういった考えの持ち主なんだろう?など、その人のことを知りたくなる力が潜んでいる。透明感を意図して撮影をすることはありませんが、結果的にそこに透明感があると感じてくれるのは、被写体や見る人の心に宿る何かが、透明感として表れているのかなと思います」。

作品を仕上げる際のこだわりは?
「”神は細部に宿る”と言いますが、まさにその通り。最終的にはすごく細かい箇所をみて、その写真やその人の魅力、その場の空気感や感情、言葉では伝えきれない温度感などを、レタッチや編集で引き出すように心がけています」。

優しくて、強くて、弱い。あいまいだから美しい

「水中ってすごく好きなシーンなんです。音が聞こえず、非現実的で幻想的。自分だけの世界を生み出せる場所だと思うんです。この3枚は同じプールで撮影したものなんですが、どれも光の入り方や、雰囲気が違うものになっています。受け手のその時の感情によってまさに透明感を感じる人もいれば、強さや弱さを感じる人もいる。いいことがあった日に見る写真と落ち込んでいる日に見る写真って、きっと捉え方が違うと思うんですよね。他の写真にも共通するかもしれませんが、そのあいまいさが僕は好きなんです」。

武井宏員 Instagram
武井宏員 Twitter

GENIC vol.62 【表現者たちのファインダーのその先に、透明感を追い求めて】
Edit:Megumi Toyosawa

GENIC vol.62

テーマは「素肌と素顔を写す」。
人の美しさを大切に写しとった「素肌」と「素顔」の世界をお届けします。「性」ではなく「生」を感じる、神秘的で美しい森に迷い込んでしまったような写真たちと、そこにある撮り手の想いに迫ります。

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