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色に恋して。デジタル写真をフィルム風に「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」vol.14 井上知(こむぎねこ)

デジタルカメラで撮影した写真を、フィルム写真のようなカラーに。そんな夢のような機能が、富士フイルムのデジタルカメラに搭載されています。その名も「フィルムシミュレーション」。フィルムを交換するような感覚で色再現を楽しめる機能で、その数なんと20種類。フィルム時代から90年以上にわたり、色の表現を研究してきた富士フイルムだからこそ作れる機能です。

「Xシリーズ」「GFXシリーズ」すべての機種で使用できるとあって、この機能に恋して、富士フイルムのデジタルカメラを愛用し続ける写真愛好家やフォトグラファーも多数。

そこで本連載では、「フィルムシミュレーション」の魅力をお届け。毎回1名のクリエイターがお気に入りのフィルムシミュレーションで撮影した作品とともにその魅力を語ります。
第14回は、出張いえねこ写真家の「こむぎねこさん」こと、井上知さん。富士フイルムの「X-T50」で撮影した作品とともに、お気に入りのフィルムシミュレーションについて紹介します。

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目次

プロフィール

井上知(こむぎねこ)

出張いえねこ写真家 2016年から出張いえねこ写真家として活動。猫の保護活動も行っている。著書に『こむぎねこ』(主婦の友社)、『こむぎといつまでも』(小学館)がある。

猫写真を通して、普段の何気ない幸せに気づく

被写体は基本的に「猫」なので、私にとって写真は、猫とのコミュニケーションツールの一つだと思っています。撮りたいと思う瞬間は、猫の何気ない自然なままの姿やパーツが可愛いと感じた時、光や影など瞬間的なものや造形が美しいと感じた時です。撮影を通じて猫たちと一緒に過ごすことで、何気ない毎日の中にある小さな幸せに気が付くことができます。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: ACROS+ G FILTER
「里親募集中の保護猫・まだらちゃんの背中。日中、床と壁が白い撮影部屋で撮りました。たまたまACROS+Gにしてカメラを向けたところ、奥行きのきれいなグラデーションがくっきりと現れました。普段、カラーで自分の目で見る時には気づけない色の階調をはっきりと写し出してくれるのは、ACROS+Gならではだと思いました」。

富士フイルムのカメラには、「フィルムといえば富士フイルム」と言えるほどの長い歴史に裏付けされた、色再現の技術や画像処理の技術に長けているイメージがあります。X-T50の見た目のレトロな感じもとても可愛くて好きです。

猫の撮影では、片手で撮ることがしばしばあります。左手で猫じゃらしなどを持ち猫の目線を誘導するため、右手だけでカメラを持つことが多いのです。その時の持ちやすさとカメラの重さはとても大事。X-T50はデザインに重厚感がありつつも軽量でコンパクトなのが、実際に使ってみて良いと感じました。シーンが変わりやすい猫の撮影では、直感的にダイヤルで調整する楽しさもありました。

camera:X-T50 lens:XF23mmF1.4 R LM WR
フィルムシミュレーション:ACROS+ G FILTER
「おもちゃで遊んでいる瞬間。シンプルな写真ですが、ACROS+ G FILTERで動きのある猫の写真もノルスタルジックな雰囲気に仕上がったと思います。遊び回る猫を撮影する時はピントがずれて失敗しがちですが、X-T50の被写体検出AF機能によって目にしっかりピントが合っていることにも感動した一枚です」。

そして一番のポイントは、やはりフィルムシミュレーションだと思います。自分がその時に好きと思える写真をすぐに写し出すことができるのは、撮影がますます楽しくなる要素だと感じます。同じシーンであってもフィルムシミュレーションによってがらりと写真の雰囲気が変わる。そこから自分の好みや撮りたい写真の方向性が明確になっていく感覚があり、「好き」が形になっていく面白さがありました。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション:CLASSIC CHROME
「愛猫のごま味が日中お気に入りのスポットでくつろいでいる時に、光が偶然きれいに現れたところを撮影したもの。控えめな彩度でクールな印象になるCLASSIC CHROMEで、儚い光と黒猫の表情により惹きつけられる写真になりました。色合いは自分が理想とするものにとても近く、レタッチではなく撮影の段階で確認できることで、写真を撮る楽しみと、もっとこう撮ってみたいという創作意欲を掻き立ててくれます」。

X-T50は、フィルムシミュレーションダイヤルがボディ左肩に設置されており、撮りたい雰囲気に合わせて素早く写真の印象を切り替えられるのが魅力的でした。操作性がよく、初めて使う自分にもわかりやすかったです。

また、被写体検出AF機能がとても優秀でした。人物以外に動物、鳥、車、バイク、自転車、飛行機、電車、昆虫、ドローンと様々な被写体をAIで検出し追尾してくれる機能が備わっていて、今回は「動物」に設定して猫が遊んでいる姿の撮影をしてみました。どの写真も猫の顔にピントが合って、可愛い表情が撮れていたことに驚きました。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション:ASTIA
「猫のパーツ撮影が好きで、この横顔も柔らかな毛をより際立たせて撮りたくてASTIAを使用しました。猫によって毛質は本当に様々。写っているまだらちゃんはふわふわもちもちとした質感の子なのですが、それがより伝わるのがASTIAでした。まだらちゃんの左目は保護前から病気かケンカによるものなのか、白濁しています。光が入るととてもきれいで、少しだけブルーに光る目と、猫のお日様のような匂いまで伝わりそうなところが気に入っています」。

猫は寝ている姿やじっとしている姿ももちろん可愛いのですが、動き回る時なんとも面白い表情をしてくれます。その瞬間を撮影するにはカメラの操作だけでなく、猫との円滑なコミュニケーションが必要になってきてしまうのですが、X-T50は被写体検出AF機能のおかげで猫の顔や目を瞬時に捉えてくれるため、撮影に不慣れであってもピントが合っていない、ブレてしまっているという失敗が少ないように思います。動物の目は小さくてコントラストが弱いにもかかわらず、素早い動きに合わせて瞬時にフォーカスを当ててくれることに本当に感動しました。

My favorite フィルムシミュレーション

1:ACROS+ G FILTER

今回、特に感激したフィルムシミュレーションは「ACROS+ G FILTER」です。黒猫と影の描写力が凄く、グラデーションが滑らかで黒猫の毛の艶々感が見事に現れていました。影との境界ももっと曖昧になると思ったのですが、空気感までも写し取るような豊かで自然な階調に見入ってしまいました。黒猫って撮影が難しいと言われがちなので、ぜひとも黒猫の飼い主さんにおすすめしたいです。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: ACROS+ G FILTER
「日中に日の当たる場所で毛づくろいをしている場面。ACROS+ G FILTERで撮影してみたところ、想像以上に濃淡の表現力があって驚きました。グレーのグラデーションが柔らかで、あとから写真を見返した時に本当にモノクロなのか?と疑うほどでした。ごまちゃんの自慢の艶々な毛質がはっきりと伝わる写真になり、気に入っています」。

2:CLASSIC CHROME

普段から彩度を抑えた写真が好きで、編集時に色合いを変えているのですが、「CLASSIC CHROME」は撮影時からまさに好みの色合いで撮れました。今回のテーマは、家の中に現れる「光と影と猫の写真」として、照明と一緒に猫を撮影したのですが、「CLASSIC CHROME」で夜の静けさが伝わってくるような写真に仕上がりました。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: CLASSIC CHROME
「猫のまだらちゃんとお気に入りの照明を、夜の時間帯に撮影しました。CLASSIC CHROMEは落ち着いた色合いで、なおかつ光の暖かみが伝わってくる写真が撮れます。シャドウが強めなので暗い中でもきれいでよりハリのある写真になったのではと思います」。

3:ASTIA

落ち着いたトーンで優しい雰囲気に撮影できる「ASTIA」も、動物撮影に向いていると感じました。猫のパーツ撮影において、魅力であるふわふわな毛並みや柔らかな質感をより表現できると思いました。クールな印象になりがちな黒猫の写真も「ASTIA」ではしっとりとした仕上がりになり、穏やかな時間の流れを感じさせる写真となりました。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: ASTIA
「アンティークのステップに乗っている、まだらちゃんの手。猫の手といえば誰もが挙げる可愛いパーツの一つです。特に白いお手々の子は美味しそうなもちもちパンに見えてきます。柔らかで優しい表現をするASTIAは、猫の手の魅力を存分に引き出してくれると感じました」。

井上知さんが恋したフィルムシミュレーションの特徴

1:ACROS+ G FILTERとは?

肌にある赤みを拾って落ち着かせることで階調を整え、明るく写りすぎてしまいがちな唇を暗くすることで顔全体の階調を自然に見せるなど、ポートレートに適しています。ヒトの眼が強く認識するにもかかわらずモノクロ写真では明るく軽くなりがちな赤をバランスよく見せることができるため、幅広い被写体で積極的に利用したい機能です。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: ACROS+ G FILTER
「まだらちゃんは普段から撮影にとても協力的で、私が撮影部屋で撮る準備をしていると自らやってきます。この時もすぐにやって来て伸びをして、その影がきれい現れた瞬間に『撮りたい!』と慌ててカメラを向けました。モノクロ写真は被写体の本質を際立たせ、その世界観をより直接的に伝えられると思います。白と黒の強いコントラストと滑らかな階調が得られるACROS+ G FILTERでは、影の質感や立体感がいっそう豊かに表現できると感じました」。

2:CLASSIC CHROMEとは?

20世紀のグラフジャーナル誌に使われた写真のような色再現を目指したフィルムシミュレーション。彩度は低め、暗部の階調は硬めに設計されており、ドキュメンタリータッチでリアリズムを求める写真を撮る際などに最適です。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: CLASSIC CHROME
「日が入るタイミングや猫の動きは偶発的にできるもの。この時も、時間帯によって現れる光で、三角の光の中にちょうど猫の影が映し出されていました。CLASSIC CHROMEを使うと、落ち着いた色彩が入ることでより洗練された雰囲気のある写真となりました。光の中に現れた可愛い横顔の影もお気に入りポイントです」。

3:ASTIAとは?

ファッション・ポートレート撮影での使用を想定して設計されたリバーサルフィルム「フジクローム・アスティア」がベース。
ソフトで忠実な肌再現と鮮やかな青空や緑の両立を目指しており、扱いやすいフィルムシミュレーションです。

camera:X-T50 lens:XF35mmF1.4 R
フィルムシミュレーション: ASTIA
「私を見つめる瞳と階段の構図に惹かれて撮影しました。ASTIAで黒猫を撮影したらどのように写るのだろうと試したところ、コントラストが低めなため、黒猫でもパキッとした写真というよりは柔らかく優しい雰囲気で、しっとりとした質感になりました」。

井上知(こむぎねこ)さんが使用したカメラ

X-T50

軍艦部に「フィルムシミュレーションダイヤル」を搭載し、フィルムシミュレーションの選択がかつてないほど直感的に。ダイヤルを回すだけで最新の「REALA ACE」を含む、20種類のフィルムシミュレーションモードから選ぶことができる。表示倍率0.62倍で269万ドットの電子ビューファインダーは高い視認性に加え、色彩や明るさが調整されているので、仕上がりを確認しながらの撮影が可能。また、クラシカルなフィルムカメラを彷彿とさせるX-Tシリーズのデザインを継承しながらも、わずか438gへと軽量化(バッテリー・メモリーカード含む)。洗練されたデザインとボディのコンパクトさも相まって、持つ喜びを感じられる、どこへでも持ち歩ける理想的なカメラ。

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