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色に恋して。デジタル写真をフィルム風に「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」vol.13 若林 満

デジタルカメラで撮影した写真を、フィルム写真のようなカラーに。そんな夢のような機能が、富士フイルムのデジタルカメラに搭載されています。その名も「フィルムシミュレーション」。フィルムを交換するような感覚で色再現を楽しめる機能で、その数なんと20種類。フィルム時代から90年以上にわたり、色の表現を研究してきた富士フイルムだからこそ作れる機能です。
「Xシリーズ」「GFXシリーズ」すべての機種で使用できるとあって、この機能に恋して、富士フイルムのデジタルカメラを愛用し続ける写真愛好家やフォトグラファーも多数。

そこで本連載では、「フィルムシミュレーション」の魅力をお届け。毎回1名のクリエイターがお気に入りのフィルムシミュレーションで撮影した作品とともにその魅力を語ります。
第13回は、フォトグラファーの若林 満さん。富士フイルムの「X-E5」で撮影した作品とともに、お気に入りのフィルムシミュレーションについて紹介します。

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目次

プロフィール

若林 満

写真家 1986年生まれ、京都府出身。31歳までDENHAM JapanにてショップマネージャーおよびVMDを担当。その後、PRADA JAPANにてMiu Miuのセールスに従事する。退職後はワーキングホリデーでカナダ・トロントに渡航。帰国後より写真家として本格的に活動を開始。現在は京都の貴船神社をはじめとする国内外のクライアントワークを手がけるほか、写真展での作品発表も精力的に行っている。2025年11月28日から10日間、SO1(東京 渋谷)にて写真展を開催予定。

写真は生活の一部。さまざまな場所に繰り出して

私にとって、写真は食事をするのと変わらない、まさに「生活の一部」。いつもカメラと共に行動していて、仕事以外は主にスナップ撮影をしています。日本の街から海外まで、さまざまな場所に繰り出しては、カメラ片手に撮影を楽しんでいます。

camera:X-E5 lens:XF23mmF2 R WR
フィルムシミュレーション: PRO Neg. Hi
「構図や、街灯と空の色など全てのバランスが良いなと惹かれました。街灯と空の色味がどちらも強すぎず、景色にうまく溶け込んでいます。現代ではない、どこか昭和を感じるような雰囲気は、PRO Neg. Hiならではの表現だと思いました」。

富士フイルムのカメラは、とにかく撮って出しの色がきれいだと感じます。シーンによって多彩な色味を出せることもまた、魅力だと思います。実際、普段からGFX100S IIを使っていて、圧倒的な立体感のある写真が撮れること、そして他のメーカーにはない多彩な色味に感動しています。

camera:X-E5 lens:XF35mmF2 R WR
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi
「京都・祇園の街並みをスナップしているときに見つけた花。柵の間から一輪だけ出ている姿に愛おしさを感じました。夕方の西日が当たるきれいなハイライトを、PRO Neg. Hiでより美しくしっとりと表現できました」。

今回は、富士フイルムのX-E5を使って撮影しました。X-E5は、とにかく軽い。これまで使ってきたデジタルカメラの中で一番軽いです。気軽に持ち運ぶことができ、ストレスがまったくありません。また、小さいので手にフィットしやすく、クラシカルなデザインでファッションに溶け込みやすいというのも魅力です。そして、すごく軽いのに、まったく手ブレしないことにも驚かされました。スナップ撮影は片手でカメラを持って撮影することが多いのですが、撮影後、さすがにブレているかな…と思いながら確認すると、ブレている写真はほとんどありませんでした。

camera:X-E5 lens:XF23mmF2 R WR
フィルムシミュレーション: ACROS
「東京・銀座にて。夕暮れどきの写真なのですが、颯爽と飛んでいくハトを無意識にノールックで撮影していました。待っていて撮れる写真ではなく、また、無意識にシャッターを切ると意外な一枚が撮れると思わせてくれる、好きな一枚です。カラーで撮るとビルのネオンや空の色など、いろいろな情報が入ってきますが、モノクロにすることによって被写体のハトに目が行くようになりました」。

X-E5には、自分だけの画づくりがしやすいよう、フィルムシミュレーションと画質設定の項目を個別に登録して保存できる「FSレシピ」機能が搭載されています。いろいろ調整をしてみたところ、最終的な私のお気に入りは、フィルムシミュレーションを「PRO Neg. Hi」に設定し、グレイン・エフェクト「WEAK/SMALL」、カラークローム・エフェクト「強」、カラークロームブルー「弱」、ダイナミックレンジ「DR200%」、トーンカーブ「H+0.5 S-1.5」、カラー「+4」、シャープネス「-1」、高感度ノイズ低減「-4」に落着。フィルム写真感もありながら色鮮やかな仕上がりで、高級感のある感じになります。

シーンによって咄嗟に色味を変えたいようなときにフィルムシミュレーションダイヤルがとても重宝したのですが、それと並んで、私好みの表現を追求でき、その設定を保存できるFSレシピもとても魅力的な機能だと感じました。

camera:X-E5 lens:XF23mmF2 R WR
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi
「夏の夕刻、きれいに焼けていく空とシルエットになっている人々の情景に惹かれて撮影しました。この日は空がきれいに焼けるだろうなと予想していて、この場所を訪れました。空の立体的な写りと、色味が滑らかで優しい表現は、PRO Neg. Hiだからこそできたものです」。

My favorite フィルムシミュレーション

フィルムシミュレーションの魅力は、シーンによって表現したい雰囲気を的確に表現してくれるところです。例えば神社での撮影ではクラシッククロームでクラシカルさを表現したり、ホテルなどでの撮影では、PRO Neg. Hiを使って高級感を出したりすることができます。

今回の撮影でとくに活躍したフィルムシミュレーションは、「ACROS」と「PRO Neg. Hi」でした。

1:ACROS

ACROSの質感には本当に感動しました。階調に深みがあり、シャドウ部分の質感再現がよく、黒から白までのグラデーションが滑らかで立体的で、まさにフィルムのような写真が撮れます。デジタル特有のコントラストの高いモノクロではなく、程よく柔らかい質感で、これにグレイン・エフェクトを入れると、よりフィルム写真のような仕上がりになると思いました。

camera:X-E5 lens:XF35mmF2 R WR
フィルムシミュレーション: ACROS
「暑い夏の早朝に京都の清水方面で、スナップ撮影していたときの一コマ。屋根瓦と建物の奥へと続くレイヤーの美しさに惹かれました。ACROSの程よいコントラストと白と黒の滑らかさで、写真から優しさを感じるところが気に入っています」。

2:PRO Neg. Hi

PRO Neg. Hiは高級感のある色味をしています。コントラストが高めで、シャドウとハイライトにメリハリが出て、スナップに最適だと感じました。

camera:X-E5 lens:XF23mmF2 R WR
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi
「夕方、鴨川にて。京都在住のフォトグラファーが国内・海外を写真や動画で日常を届けるYouTubeチャンネル・キョウトボーイズのアヤタ君と撮影していたときの一枚です。とても暑かったのですが、川で水遊びをしている人々の姿を見て、少し涼しい気持ちになり暑さが和らいだのを覚えています。入道雲が浮かぶ夏らしい一枚で、PRO Neg. Hi の程よいコントラストが写真にメリハリを与え、立体感のある写真になっているところが気に入っています」。

camera:X-E5 lens:XF35mmF2 R WR
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi
「京都の街を散策中、御所付近で道の曲がり角にポツンと佇む花に目が留まり、撮影しました。ここだけに光が当たっていて、とてもきれいでした。この写真は、FSレシピによってグラインを足しています。ハイライトとシャドウのメリハリがあることによって、被写体がより立体的に見えています。花の色味も程よく表現されており、レトロ感のある、まさにフィルム写真のような仕上がりになりました」。

camera:X-E5 lens:XF23mmF2 R WR
フィルムシミュレーション: PRO Neg. Hi
「東京・有楽町での、帰宅ラッシュ時の夕景スナップ。帰宅していく人々の姿に忙しい一日の終わりを感じるシーンには、京都で出会うことはあまりなく、東京らしい情景に感じられました。写真は、電車が行き交い、人々が帰路を急ぐ中、ふと目にした夕日。忙しい一日の終わりを優しく照らす一瞬の景色でした。空のきれいな色味の階調とオレンジの照明の程よい彩度は、PRO Neg. Hiならではの表現だと感じます」。

若林 満さんが恋したフィルムシミュレーションの特徴

1:ACROSとは?

“世界最高の粒状性”と称賛されたモノクロフィルム「ACROS」がベース。豊かなシャドウディテール、高精細なシャープネスに加え、高感度では粒状性が増し、モノクロフィルムのような質感が得られます。

camera:X-E5 lens:XF35mmF2 R WR
フィルムシミュレーション: ACROS
「京都のお気に入りのご飯屋さんで撮った一枚です。鱧をさばく手際のよさが美しいと感じました。料理人が黒い服だったため、白と黒でよりメリハリのある、印象的なコントラストが生まれました。ACROSのすごいところは、メリハリのあるコントラストなのに柔らかさを残しているところです。白から黒への階調の滑らかさはさすがだと感じました」。

2:PRO Neg. Hiとは?

プロ用ネガフィルム「PRO160NH」がベース。「PRO Neg.Std」よりも階調がやや硬く、屋外など凝ったライティングができないシチュエーションでのポートレート撮影に適しているフィルムシミュレーションです。フラットなライティング下でも適度な陰影が得られます。

camera:X-E5 lens:XF35mmF2 R WR
フィルムシミュレーション: PRO Neg. Hi
「夜の街をスナップしているときに撮影した一枚。すりガラスの向こうで、人が調理をしています。偶然出会ったシーンなのですが、日常の違和感をすごく感じました。クラシカルな窓ガラスそのものと、人物はシルエットのみで想像の余地があるところがお気に入りです。コントラストのメリハリによって立体感のある仕上がりになった点は、PRO Neg. Hiならではです」。

若林 満さんが使用したカメラ

X-E5

Xシリーズとして初めて、トッププレートを金属の塊から削り出しのみで成形。金属の持つ質感を最大限引き出すだけでなく、ダイヤル類の操作性を向上させている。新たにデザインされた窓付きのフィルムシミュレーションダイヤルは、指標プレートに至るまで金属切削加工で製造し、ダイヤル周辺部と本体間の隙間を極限まで狭め、精緻な仕上がりを表現。ファインダー部においては、視度調整ダイヤルの凹凸を極限まで抑え、無駄を削ぎ落とした垂直‧水平基調のフォルムを実現。底面には、往年のフィルムカメラの巻き上げボタンを想起させるBluetoothボタンを採用するなど、細部に至るまで洗練された造形が追求されている。サイズもコンパクトながら、Eシリーズとして初めて5軸‧最大中央7.0段/周辺6.0段*の強力なボディ内手ブレ補正機能を搭載。フィルムシミュレーションは、最新のREALA ACEを含む全20種類が使用できる。フィルムシミュレーションと画質設定の項目を個別に登録することができ、自分だけの設定として保存できる「FSレシピ」機能も大きな魅力。

*CIPA2024規格準拠。Yaw/Pitch/Roll 補正性能、「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」装着時。

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