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田舎暮らしがしたい人へ!「二段階移住」のすすめ/伊佐知美の「旅するように移住」Vol.5

様々な移住者にインタビューした『移住女子』の著者であり、自身も現在、沖縄・読谷村に移住中の伊佐知美が送る連載コラム。移住に向いてる人、向いてない人、お金や仕事のことなど、気になる話を15回にわたってお届けします。
「"いま"この街で暮らしている意味って、なんだろう?」そんな疑問を持っている方の背中をポンッと押す、“最新の移住”コラム。
第5回は、田舎暮らしがしたい人へおすすめの「二段階移住」を紹介します。

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連載コラム:伊佐知美の「旅するように移住」

目次ページはこちらです。

田舎暮らしがしたい人へ!「二段階移住」のすすめ/伊佐知美の「旅するように移住」Vol.5

突然ですが、「田舎暮らし」って、してみたいですか?

緑に囲まれた山間の美しい古民家、海沿いの丘の上の風が通り抜ける平屋、川沿いに佇むカフェのような一軒家、いつだってキャンプ気分が味わえる静かな湖畔のログハウス――。リモートワークが普及した今、以前より現実味を帯びた形で「田舎暮らしをしてみたいな」と感じている人って、増えているんじゃないだろうか。

もしあなたの答えが「YES」で、同時に「都会でしか暮らしたことがないから、実践は正直不安」と少しでも思うとしたら、ぜひこの記事を読み進めてほしい。

私は、移住実践者へのインタビューをよく行うのだけれど、思い切りよく決断し、移住ライフを謳歌しているように見える「先輩移住者」も、心の内を聞いてみると「最初はとても不安だった」と答える人が大多数だ。

そして、インタビューを重ねるうち、そんな先輩方も、ある日突然都会から田舎に移住したのではなくて、じつは「あるステップ」を踏んでから田舎に移住している人が少なくない、ということが分かったのだ。

あるステップとは、「二段階移住」。

ということで、今回は、都会から田舎に移住したい人向けに「二段階移住のすすめ」について詳しく書いてみたい。

二段階移住とは?

二段階移住とは、その名の通り、移住を二段階に分けてすること。

おもに、都会在住で、田舎への移住を希望する人が、いきなり田舎暮らしを選ばずに、まずは中間地点である地方都市などに移住して、そこに住みながらよりローカル度合いの高いエリアへの移住を目指す……というスライド式の移住方法を指す。

少し分かりづらいので、具体的な例で考えてみよう。

たとえば、「東京で暮らしているが、北海道で自然に囲まれた暮らしがしたい」と考えている人がいるとする。

でもその人は、「北海道の田舎がいいな」と漠然と思ってはいるけれど、山・海のそばなのか、川・湖沿いなのか、畑仕事はしたいのか・したくないのかなどの、「具体的な田舎暮らしのイメージ」は固まりきっていない。

なので、まずは東京のライフスタイルが「スライド」できそうな、中規模以上の都市、つまり札幌市・旭川市・函館市など、北海道の中では比較的アクセスがよい、ある程度の「街」が存在する場所に移住することを選択(ステップ1)。

そして、そこに住みながら、週末や休みの日などを利用して、北海道内の複数の田舎エリアに足を運び、焦らずゆっくりと自分に合う土地や部屋を探していく道を選んでいく(ステップ2)。この流れこそが、二段階移住ということになる。

実際に私も、現在は沖縄県・読谷村という人口4万人の村に住んでいるが、東京からの移住を決めた際は、まず中核市で県庁所在地の那覇市内に仮住居を構え、そこに住みながら、改めて県内で住みたいエリアや部屋を探した。まさに私自身も、二段階移住の実践者。そして、実践してよかった、と感じることが多数あるのだ。

自分にぴったりの「田舎レベル」を知る

二段階移住のメリットは、何といっても移住のミスマッチがなくせること。具体的には、以下が挙げられる。

・自分にぴったりの「田舎レベル」が判別できる

・一段階目の移住で、地元の知り合いが多少なりできるので、現地の暮らしの肌感や、オススメエリアや暮らし方のコツなど情報が得やすい

・二段階目の移住エリアや部屋探しを、焦らずじっくりと、足を運びながらできるので、移住後の「こんなはずじゃなかった!」を極力減らせる

とくに、「自分にぴったりの田舎レベルが判別できる」はとっても大事。そもそも「田舎暮らし」という概念がふんわりとしすぎている問題にも起因するのだが、田舎と一口に言っても、その実態は様々で、人によってイメージが全然違ったりする。

<一般的な地方公共団体・自治体区分の例>

・政令指定都市(人口50万人以上)
・中核市(人口20万人以上)
・市(人口5万人以上)
・町(人口規定なし)
・村、または集落(人口規定なし)
※参考:東京都23区の人口数:約1,000万人

自分の思い浮かべる「田舎暮らしのイメージ」が、地方の中核市の郊外なのか、それとも市・町、または村や集落で実現できるものなのかが、移住前にはっきりと自覚できていたらいいのだけれど、田舎暮らしをしたことがなければ、具体的な違いはそこまで鮮明に想像できないことが多いだろう。

実際には、人口数が違えば店の数や品揃え、街の賑わいや、他の街へのアクセスのしやすさのほか、地域ルールの有無や厳しさ、自然との付き合い方など、つまりライフスタイルが大きく変わってくるのだが。「どれくらいの田舎レベルの場所が、自分に合うのか」は、「案ずるより産むがやすし」で、移住して実際に体験・検討できるのがそりゃ一番いい。

ということで、そんな贅沢な「セルフ移住マッチング」ができる手段が、二段階移住というわけなのだ。

二段階移住をサポートしてくれる自治体も

二段階移住が移住方法として優れているという点に着目し、自治体として公式に二段階移住をサポートしている事例もある。

たとえば、高知県。「こうち二段階移住」と称して、高知市を第一段階目の移住先として規定し、引越し費用(最大20万円)や県内めぐりのレンタカー代金(最大2万円)などを、条件付きではあるが、補助してくれるという取り組みだ。

田舎暮らしはしたいけれど、イメージが固まりきっていないという人は、そういったサポートを利用する手もある。

また二段階移住といっても、必ずしも二段階目の移住を実行しなくてもよく、一段階目の移住場所に、そのまま居着いたってもちろん全然構わないのだ。

「最初は二段階移住をするつもりだったけれど、一段階目の移住の時点でしっくりきて、自分は東京にいたときよりもずっと簡単に自然にアクセスできる状況下で、よりローカルなエリアに気軽に通えるライフスタイルが理想だったんだなと気づいた」という人にも多く出会ってきた。

ちょっぴり遠回りなように見えて、じつはベストな移住の形を探れる、賢い二段階移住という手段。田舎への移住を本格検討したい人の参考になれば幸いです。ではまた次回! Have a nice moving〜!

伊佐知美

これからの暮らしを考える『灯台もと暮らし』創刊編集長。日本一周、世界二周、語学留学しながらの多拠点居住など「旅×仕事」の移動暮らしを経て沖縄・読谷村に移住。移住体験者の声をまとめた『移住女子』の著者でもある。

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