プロフィール

長沢慎一郎
写真家 1977年東京生まれ。
2001年 藤井保氏に師事
2006年 独立
2008年 小笠原父島での撮影をはじめる
2021年5月 写真集「The Bonin Islanders」赤々舎より刊行
2024年10月 写真集「Mary Had a Little Lamb」赤々舎より刊行
ステートメントと展示作品の一部をご紹介

Mary Had a Little Lamb(メリーさんの羊)
ロシアによる核の脅威を受け、ヨーロッパでは「核の傘」の拡大が議論され、核軍縮に逆行する動きが出始めている。核による悲劇が再び繰り返されるのではないかという不安がよぎる。
第二次世界大戦後、アメリカは「抑止力」という名のもとに世界各地へ核兵器を配備した。その一つが、日本の小笠原諸島・父島にあった。戦後23年間に及ぶアメリカ海軍による占領の下、この島には秘密裏に核弾頭が配備され、その核貯蔵施設には「Mary Had a Little Lamb」という名がつけられていた。広島・長崎に投下された原子爆弾が「Little Boy(リトルボーイ)」「Fat Man(ファットマン)」と呼ばれていたのと同様に、気まぐれで無邪気な名前の裏には恐ろしさが潜んでいる。
私は2008年から、無人島だった父島に最初に入植した欧米系島民の子孫たちを撮り続け、2021年に彼らのアイデンティティーをまとめた『The Bonin Islanders』を発表した。彼らは占領時代に父島へ戻ることを許された数少ない人々である。「空白の23年」ともいわれるこの時代の出来事を知るには、彼らの記憶を頼るしかない。父島の核兵器配備についても、当時島にいた欧米系島民の証言をもとにアメリカの研究者ロバート・ノリスらが明らかにした。私自身も彼らとの交流を通じて、核の配備や貯蔵施設の存在を知ることとなった。
戦時中、要塞島となった父島には、地下壕や大砲跡など多くの戦跡が残存している。しかし、それらは今、時間と共に朽ちつつある。約半世紀前にアメリカ軍が去り、かつて核弾頭が貯蔵されていた施設も今は空となり、そこには、ただ「虚」だけが残されていた。私はその場所に宿る記憶に光を当て、問いを投げかける。今なお続く核の脅威と向き合うための視座として。
── 長沢慎一郎


木村伊兵衛写真賞
木村伊兵衛写真賞は、故・木村伊兵衛氏の業績を記念して1975年に創設され、2008年4月に出版部門が朝日新聞出版として独立した後は、両社の共催となりました。各年に優れた作品を発表した新人写真家を対象に表彰し、写真関係者からアンケ―トによって推薦された候補者の中から、2回の選考会によって決定されます。
ギャラリートーク情報
ゲストに第44回木村伊兵衛写真賞 受賞者 岩根愛、モデレーターに写真編集者 池谷修一を迎え、閉館後にギャラリートークを開催。
開催日時
2025年4月28日(月)19:15〜20:15
参加費
無料
定員
23名
※要事前予約、先着順
会場
ソニーイメージングギャラリー 銀座
〒104-0061 東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階
長沢慎一郎 作品展「Mary Had a Little Lamb」情報
開催日時
2025年4月25日(金)~5月8日(木)11:00~19:00
入場料
無料
会場

ソニーイメージングギャラリー
- 〒104-0061 東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階
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行き方・アクセス
<電車>東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線「銀座駅」A4出口直結
東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」8・9番出口から徒歩で約6分
JR山手線・京浜東北線「有楽町駅」から徒歩で約8分