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こっそりと静かに覗く猫のいる風景
少し暗めに撮ることで猫のいる温度感を伝えたい
「冬の早朝、少し薄暗くまだ寒い室内は、ドタバタな慌ただしい1日の前触れであり、束の間の静かな時間。この冷たい空気と、ストーブの周りで暖を取る猫たちの姿を切り取った1枚です」。
日常生活では猫しか撮っていない、というほど猫たちの写真撮影はもはや日課だという繭さん。「彼らの朝は早く、毎日太陽が昇ると同時に起こされます。リビングのカーテンを開け、部屋にパーッと朝の光が降り注ぐと、3匹の猫たちが各々好きな場所でゴロゴロしたり外を眺めたり。そのタイミングで写真を撮ることが多いので、猫と朝日の写真は我が家の定番。私にとってスナップ写真とは、被写体が構えずナチュラルな、それでいてどこか惹かれてしまう、日常にある刹那的なシーンを写したもの。猫はもともと被写体として構えていませんが、さらに彼らの空気感を大切にすべく、こっそりと静かに撮っています。なんせ彼らはとにかく自由で、今このシーンが撮りたいと思っても、私の気配を感じれば振り向いてすぐに寄ってきてしまうから。嬉しいことですが、撮影のためにストップをかけることもできないので、とにかくそこにある光景を逃すまいと、忍者のように忍び素早く撮っています。また、フィルム撮影の場合には、部屋に差し込む光量を意識することも大事。どちらかといえば露出不足ギリギリくらいの少し暗めが好みです。その方が猫たちのいる室内の空気感や温度なども、きちんと伝えられるような気がしています」。
「もうすぐクリスマスというある冬の日、初めて見るスノードームに興味津々な様子です。壁には三角形の陽が差していますが、日常に突如現れる光と影はカメラマンにとっては大好物。急いでシャッターを切り、このシーンを残すことができました」。
3匹の猫から幸せをもらう日々
この時間が続いてほしいと祈る思いでシャッターを切る
「桜を生け、少し早い春の訪れを漂わせた部屋で。窓の外に鳥たちが遊びに来ていて、猫は鳥に夢中だったので、私は手前の壁に隠れ存在をなるべく消すように。そっと室内に広がる静けさと優しさを写しました」。
「冬は太陽の位置が低く、部屋の隅まで陽が届きます。その光とカーテンの影で、しましま猫の出来上がり。猫はただうつらうつらと眠いだけかもしれませんが、陽が当たって気持ちよさそうな顔にも見えます」。
「どうかこの日が、ずっとずっと続きますように、と祈る思いでシャッターを切った思い入れの深い1枚。残念ながらこの子にとっての最後の朝日であり、私にとっても最後となる愛おしい光景となってしまいました。写真のデータがラボから送られてきた時、このかけがえのない時間が一気に甦り、私が猫たちの写真を日々綴る意味がそこにあった気がしました」。
「姉弟猫のふたリは、寝ても覚めても常に一緒。お昼寝のシーンは気持ちよさそうな表情がとても愛くるしく、私まで幸せな気持ちに。元気に育ってほしいという願いを込めた写真です」。
繭
フォトグラファー 家に1匹目の保護猫をお迎えした日から、猫の写真を撮ることに夢中になり、そこからほぼ毎日、猫の写真を撮り続けてはや10年。猫写真をきっかけにグループ展への参加や、新潟のファッションブランド「UTOPIA」の撮影など、写真の世界がさらに広がる。現在も作品のほとんどは、愛おしい一瞬一瞬を綴るような気持ちで撮っている猫たちの写真。猫の写真は専用のインスタアカウントにて発信中。
愛用カメラ:NIKON F3
愛用レンズ:Nikkor 50mm F1.4
GENIC vol.69【“暮らし”の中にカメラを向けて】
Edit:Satomi Maeda
GENIC vol.69
1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。